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【総選挙2014】小さな政府を求める党派の再結集を

  • 渡瀬裕哉 (東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長)
  • 2014年12月14日


Photo by Mjohn shortlandCC BY 2.0

(1)みんなの党の崩壊が意味したこと

今回の総選挙に先立って、小さな政府を標榜する数少ない勢力であった「みんなの党」が解党する事態になったことは非常に残念なことでした。同党が消滅したことによって、国政に議席を持っている相対的にバランス感覚がある小さな政府を主張する勢力の足場が無くなりました。そして、自公民による増税前提のバラマキ政治に対する国民のフラストレーションの受け皿が実質的に失われることになりました。

私は今回の解党劇はみんなの党が「しがらみがない」ことを強調し、国民との連帯を実質的に拒否してきた結果であると考えています

つまり、国民との連帯を予算要求の政治という古い理解での価値観で拒否し、従来型の業界団体等から超然とした政治を行うことを是とした同党の党運営の結果です。彼らが頼みとした無党派層は政治的な党派を持たない官党支持者とほぼ同義であり、それらを支持基盤とした政治家の行動は国民からの拘束を受けにくく、彼ら自身が実質的に議員という名の官僚に成り下がってしまっていたと思います。その結果が「議員たちの一存で政党自体を解党する」という有権者無視の行為につながりました

既に小さな政府の受け皿としては国政での議席保有政党では辛うじて維新の党のみということになってしまいましたが、一部の強力な指導者のカリスマに依存した党体質はみんなの党と本質的に同種の問題を抱えています。そのため、自民党民主党などの確かな支持基盤を持つ政党と比べて、政党としての永続性に疑問符がつく存在のままです。

今こそ、私たち国民は小さな政府を求める党派を形成し、永続的な党運営を国民との連帯の中で行うことの重要性を再確認し、もう一度政治運動として出直す決意を固めるべきです。

(2)米国型の民主主義の再輸入の必要性について

日本に小さな政府を求める党派を形成するための参考事例は米国にあります。

米国では中間選挙において共和党が大勝することになりました。共和党勝利の原動力として保守派と呼ばれる人々が構築した運動組織の影響が極めて大きかったものと思います。まさに米国における小さな政府を求める保守派勢力の面目躍如という結果となりました。

米国共和党保守派の運動組織として最近ではTea Partyの存在ばかりが注目されています。しかし、彼らの運動が豊富な運動力を持つグラスルーツ(草の根組織)、的確なタイミングで政策立案を実施するシンクタンク、人材を供給するためのトレーニング機関によって支えられていることはあまり知られていません。これら米国保守派の運動組織の仕組みを研究・輸入することで日本にも小さな政府を求める運動体を形成することが可能となります。

さらに、彼らが年1回一堂に会するCPACと呼ばれる政治イベントでは、共和党の大統領候補者として相応しい人物を選ぶ参加者による投票が実施されており、同イベントにおいて首位の得票を得ない限り、共和党の大統領候補者になることは極めて困難な状況になるほどの影響力を誇示しています。これも見習うべき手法と言えるでしょう。

米国においては小さな政府を求める運動組織が確固たる形で構築されており、共和党議員らの一存で政策の可否、まして政党自体の継続が振り回されるようなことはありません。日本のバラマキを求める「しがらみ」のイメージと異なり、米国では小さな政府を求める国民が政党をコントロールする状況が生まれています。

国民側から新たに政治システム自体を見直す仕組み作りを行うことが重要

これらは米国の特殊性によるものではなく、米国においても試行錯誤の中で直近の数十年の時間をかけて構築されてきたシステムです。ただし、既に目指すべきモデルが見えている分、日本において同様の仕組みを構築するのに必要な時間は大幅に短縮できるものと思います。国政に議席保有政党で投票先として価値ある政党が存在しない以上、国民側から新たに政治システム自体を見直す仕組み作りを行うことが重要です。

(3)今回の選挙の投票基準、並びに国民審査の重要性について

今回の選挙に関する投票基準ですが、「消費増税を実施すると明言している勢力への投票を行うべきではない」と考えます。今回の衆議院議員選挙は一票の格差の観点から違憲状態にあり、選挙の結果として選出される国会議員たちは私たちの国民の代表としての地位を毀損した状態にあります。安倍首相は解散総選挙に際して「代表なくして課税なし」という米国の独立戦争の標語を引き合いに出していましたが、まさに現在の総選挙はその代表性に問題がある状態であり、次期国会で召集される国会議員による課税は不当な課税と見做すべきです。

一方、私は総選挙と同時に行われる最高裁判所判事の国民審査のほうがより大切であると考えます。立法府の不作為の中、行政府の暴走による解散総選挙に対して最高裁判所判事は明確に違憲であり選挙無効であることを宣言すべきです。そのため、三権分立の観点から最高裁判所に良識ある判断を求めるため、過去に選挙無効の判決を出している山本判事以外の最高裁判所の判事を罷免するように国民審査で投票すべきです。立法府の不作為及び行政府の暴走を正す役割は司法府にあります。そのため、今回の総選挙に付随して行われる国民審査によって司法府の地位を復権することこそが重要なことです。

(4)今後の政局の見通しについて

当面、自公連立政権の圧勝が予想される中で、国政においては実質的に小泉政権下と同じような与党の圧倒的な優勢による政権運営が行われることになるでしょう。上記の一連の改革によって国政の立て直しを行うにしても実際には多くの時間が必要となってきます。

そのため、当面は地方自治体において改革派の首長や議会議員を生み出すことで、新たな政治勢力の基盤を固めていくことが必要です。国政ではなく地方、来年の統一地方選挙において新勢力を生み出せるよう力を注いでいくことが求められます。

みんなの党の失敗を反省し、何度も同じ失敗を繰り返すことなく、私たちが何故国会を持っているのか、という歴史の原点を学び直し、力強い政治改革を実現してくことが重要です。政党ではなく国民、小さな政府を求める国民の新しい政治運動をスタートさせていきましょう。

著者プロフィール

渡瀬裕哉
わたせ・ゆうや

東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長

1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了、早稲田大学招聘研究員。東国原英夫前宮崎県知事の政策立案に携わり、数多くの自治体マニフェスト作成に従事。自らベンチャー企業を立ち上げるとともに、複数の志ある若者によるベンチャー企業の立ち上げ支援に成功。全米最大のTea PartyであるTea Party PatriotsのNational CoordinatorであるKeli Carender女史の来日講演会を実現するとともに、米国保守派・最大規模のイベントであるFREE PAC等に来賓として出席し、米国メディアにて日本の自由主義者として紹介される。現在、日本版The Leadership Instituteである自由民権塾を立ち上げて活動中。

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