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【総選挙2014】選挙権を行使して安倍政権の暴走に審判を下そう!!

  • 宇都宮健児 (弁護士・日本弁護士連合会前会長)
  • 2014年12月14日


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投票日を迎える。

安倍政権は、今回の解散総選挙を「この道しかない」と、アベノミクスへの是非を問う選挙と位置づけている。一方で、「大義なき選挙」であるという声も多い

私は、この総選挙を、政治に関与する貴重な機会の一つだと前向きにとらえるべきだと考えている。私たちが「大義なき選挙」といって選挙権の行使をしなければ、政権側の思うつぼであろう。選挙に行かずに棄権することは、安倍政権の政策を追認することにほかならない。

選挙の争点は、国民自身が決めるべきだ。国民の立場からすれば、この2年間の安倍政権の政策全体を争点にすべきであると考える。

この2年間、安倍政権は何をやってきたか。

第1に、社会保障の改悪、雇用破壊を進め、貧困と格差を拡大させた。

いまや、国民・子どもの6人に1人、一人親家庭の2世帯に1世帯が貧困状態に陥っている3人に1人以上が非正規労働者となっており、女性や若者の非正規率は更に高くなっている年収200万円未満のワーキングプア(低賃金労働者)は7年連続で1000万人を超えている

昨年の15歳から39歳の死因のトップは自殺であり、20代では2人に1人の死因は自殺であった。若者が夢や希望を抱けないような社会に明るい未来はない。

安倍政権は、生活保護基準を大幅に切り下げるとともに、生活保護法の改悪を行なった。そして生活保護の改悪を突破口として、医療、年金、介護など社会保障全体の改悪を行ない、給付は削減する一方で負担を増加させてきた

安倍政権は、「企業が世界一活躍しやすい国づくり」をうたい文句に、労働者派遣法の改悪限定正社員制度の導入残業代ゼロ制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入など雇用破壊を進めようとしている。

このため、正規雇用が減少する一方で非正規雇用が拡大し、労働者の実質賃金は16カ月連続で減少している。多くの国民の所得が増えなければGDP(国内総生産)の6割を占めるといわれる個人消費も増えず、内需が増えないのは当たり前のことである。7~9月期のGDPは年率換算でマイナス1.9%になるなどアベノミクスの破綻は明らかである

第2に、消費税の8%への引き上げを行なった

消費税は貧困と格差を更に拡大する税制である。低所得者は、収入の大半を生活費に使うため、全収入に消費税がかかることになる。しかしながら、高額所得者は収入の一部しか消費しないため、消費税がかかるのは、収入の一部である。

わが国では、1989年に消費税3%が導入され、1997年に消費税が5%に引き上げられた。しかしながら、消費税の導入・引き上げ直後に所得税法人税が引き下げられてきている。今回の消費税増税に際しても、現在の法人税35.64%を20%台に下げることが検討されている。しかしながら、所得税・法人税を1988年当時に戻せば税収が増え、消費税を引き上げる必要はまったくないのである。

広がる貧困と格差をなくすには、大企業や富裕層に対する課税を強化して、社会保障制度を通じて、所得の再分配をする必要がある

広がる貧困と格差をなくすには、大企業や富裕層に対する課税を強化して、社会保障制度を通じて、所得の再分配をする必要がある。安倍政権はこのような税制の検討はまったくしておらず、ごく一部の大企業や富裕層に有利な経済政策や税制を進めようとしている

第3に、TPP国家戦略特区構想を進めた。

このような「規制緩和」政策は、一見するとこれまでの「既得権益」を打破する政策のように見えるかもしれないが、実際には富める者をさらに富ませ、農業・食の安全・医療・地域経済を破壊し、貧困や格差を更に拡大させる政策である。

第4に、安倍政権は原発の再稼働を進めようとしている

福島原発事故から3年9カ月がたつのに、いまだに原発事故による避難者は12万人を超えている。そのうち4万6000人は福島県外に避難しており、避難者の故郷への帰還、生活再建の目途はまったく立っていない。

また、原発事故の収束の見通しも立っていない。このような中で、原発の再稼働を進めることは許されないことである。

第5に、安倍政権とこれに追随する経済界は、原発の輸出武器の輸出カジノ解禁などまで経済成長戦略に取り込もうとしている。儲ければ何をやっても良いという経済政策は、人間としての倫理、道徳の堕落を示すものである。

第6として、安倍政権は、特定秘密保護法の強行採択や憲法9条を破壊する集団的自衛権行使容認の閣議決定を行ない、アメリカとともに戦争する国づくりを進めている。

戦争になれば真っ先に犠牲になるのは日本の若者である。安倍首相や麻生副首相が戦争の最前線に行くことはないのである。

したがって、この問題は、日本の若者・青年こそ当事者となる問題だ。若者・青年が投票に行かなければ、安倍政権のこのような政策を追認することになる。

第7として、沖縄の基地問題である

11月16日の沖縄県知事選では、米軍基地の辺野古移設に反対する翁長雄志候補が圧勝した。こうして沖縄県民の民意が明らかになったにもかかわらず、安倍政権は米軍基地の辺野古移設を強行しようとしている

このような、安倍政権の2年間の政策全体に対し、国民が選挙権を行使してきっぱりと審判を下す機会が、今回の総選挙である。

人間が作った法律や制度は、人間の手で変えることができる

わが国の法律や制度は、自然現象でなく、人間が作ったものだ。人間が作った法律や制度は、人間の手で変えることができる。

政治をあきらめてはだめだ。

あきらめたら、そのつけは私たち国民に回ってくる。あきらめずに、選挙権を行使して政治を変えよう!


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著者プロフィール

宇都宮健児
うつのみや・けんじ

弁護士・日本弁護士連合会前会長

1946年 愛媛県生まれ。 1966年 東京大学に現役合格。社会問題と出会い、弁護士を目指す。 1968年 在学中に司法試験合格。 1969年 司法修習生となる。 1971年 弁護士登録。長い“イソ弁”(居候弁護士)生活に入る。 1983年 独立。 「宇都宮健児法律事務所」(後に「東京市民法律事務所」と名称変更)を経営。以降、サラ金、ヤミ金による多重債務問題、消費者金融問題の草分け的弁護士として、一環して、被害者の救済に取り組む。日弁連消費者問題対策委員会委員長、日弁連多重債務対策本部本部長代行、東京弁護士会副会長、年越し派遣村名誉村長などを歴任。 2010年〜2011年 日弁連会長を務める。

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