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【総選挙2014】ポリタス特集企画『「総選挙」から考える日本の未来』を開始します

  • 津田大介 (ポリタス編集長)
  • 2014年12月3日


撮影:津田大介

みなさんこんにちは。津田大介です。

沖縄県知事選特集に引き続き、第47回衆議院議員総選挙も特集をお届けすることになりました。

思い返してみると、沖縄県知事選投開票日の1週間前——もっとも沖縄がヒートアップしていた11月9日がすべての始まりでした。この日の読売新聞に「増税先送りなら解散、年内にも総選挙…首相検討」という記事が掲載されたのです。この日以降、国会ではとってつけたように「解散風」が吹き荒れ、マスメディアの興味も急速に沖縄県知事選から国会の政局に移っていきました。

なぜこのタイミングで解散するのか、そもそも争点は何なのかがわかりづらい今回の総選挙は師走の超繁忙期であることも重なり、投票率が大きく下がることが見込まれています。NHKが行った世論調査によれば今回の総選挙について「非常に関心がある」と答えた人は23%で、2年前の衆議院選挙の同時期調査(42%)と比べて19ポイント低くなっています。同様の調査は朝日新聞も行っており、こちらは「大いに関心がある」と答えた人は21%。2年前の同時期調査(39%)と比較して18ポイント低下しています。投票日までこのまま有権者の無関心が続く限り、戦後最低を記録した前回2012年の投票率59.32%を下回ることは確実な情勢です。このままではまさに「無党派層は寝ててくれ」を地で行く選挙になりそうで、気が滅入りますね。


撮影:初沢亜利

解散選挙モードになったテレビや新聞では、毎日アベノミクスへの評価や消費増税について大きく取り上げられています。しかし、今回の選挙で問われるべき論点は決して経済だけでないはずです。経済関連でもTPPや雇用、地方活性化をどうするのかという話もありますし、外交・防衛では集団的自衛権や運用が始まる特定秘密保護法、憲法改正といった大きなトピックが翌年控えています。また、いままさに紛糾中の問題である原発の再稼働や今後のエネルギー政策、女性のための施策、行政改革、議員定数削減などなど、論点を挙げていけばきりがありません。

僕がずっと不満に思っているのは、選挙期間にマスメディアの報道が過剰に「抑制的」になってしまうことです。本来選挙期間は、有権者が政治のことや、この国の未来についてもっとも真剣に考えなければいけない時期であるのに、マスメディアはそれをサポートする情報提供ができていない。公職選挙法や放送法がマスメディアを大きく縛っているからです。

毎回、選挙前になると各政党はテレビ局に対して公平中立な扱いを求める要望書を出しています。特に国会の証人喚問まで発展した1993年の椿事件以降は、政党からテレビ局に対する要望は年々強くなっているとも言われます。そのため、選挙期間中マスメディアは各候補者や政党に言及する場合、できるだけ同じ時間、同じ分量にしないといけないという不文律ができているのです。マスメディアに影響力があるからこそ、政党もナーバスになるのでしょう。


© iStock.com

しかし、それは本当に有権者のためになっているのでしょうか。

有権者が選挙期間中に一番欲している情報とはなにか。それは、「誰が、どんな理由で、どの候補に投票するのか」ということです。もしくは、自分にとって切実な問題を解決するための方策をどこの党が持っているのか——それを専門的な知識を基にわかりやすく解説してくれる記事です。

そうした情報は選挙期間中に新聞を読んでも、テレビを見ても得ることはできません。マスメディアは候補者を特定して応援する内容の情報発信はできないですし、選挙区ごとのストレートニュースを出すことに追われるこの時期は、そもそも専門的で重厚な政策解説を掲載したり、放送する余裕が紙幅的にも、尺的にもないのです。

そんな状況を変えたのが昨年の「ネット選挙」(正確にはネットを利用した選挙運動)解禁です。これが解禁されたことで、有権者は選挙期間中に政見放送や街頭演説の動画をオンデマンドで見られるようになり、ブログやツイッター、Facebookなどで自由に「自分はこういう理由でこの候補に投票する」といったことを表明できるようになりました。

ネット選挙解禁がただちに選挙結果を動かしたわけではありませんが、投票前日や当日に駆け込みで候補者名で検索する浮動票層が増えているというデータもあります。ネット選挙を解禁したことの最大のメリットは、投票先を決めかねている浮動票層の一部が、ネットを使って情報を仕入れることで「納得ずく」で投票することができるようになった——浮動票層の投票の「質」が上がったということなのだと僕は思います。

僕がポリタスを立ち上げた理由もそこにあります。選挙期間中に新聞やテレビを見ても、あなたが求めている「どの候補者に投票すべきか」という情報を十分に手に入れることはできません。ではどうすればいいか? 答えは簡単です。ネットで積極的に候補者や個別政策に関する論点情報を仕入れ、マスメディアで得た情報の補完材料にすればいいのです。

ぶっちゃけ、選挙期間中って有権者にとっては意味の薄い——政治を競馬のようにしてしまう——議席予測報道が多いですよね。そういう情報は適当に流し読み、流し見るようにして、本当に欲しい情報はネットを使って自分で探しましょう。自分の選挙区の候補者の街頭演説動画を見るだけでも投票に対する意識は全然変わりますよ。


© iStock.com/georgeclerk

今回のポリタスの特集『「総選挙」から考える日本の未来』では、

  • この2年間の安倍政権への評価・総括
  • 今回の解散の是非
  • 我々は今回の選挙でなにを基準に投票行動をすべきか

という大枠のテーマを設け、寄稿者の方々に自由に原稿を執筆していただきます。投票日の14日までこれから毎日たくさん記事をアップしていきます。どのような特集になるか、編集長の僕もまだ全貌が見えていませんが、きっと面白い内容になると確信しています。今回の総選挙にモヤッとした思いを抱えている人も、政治に対してあきらめの感情を持っている人も、現実的にに日本の未来を考えたい人も、ポリタスの記事でなにか響くものがあったらぜひツイッターやFacebook、LINEなどでシェアしてください。自分が良いと思った政治に関する記事をシェアすることは立派な「政治参加」ですし、それが少しずつ積み上がっていくことで明るい日本の未来が拓ける——そう信じて最後までサイトを編集していきたいと思います。

とにもかくにも、また選挙という「祭」が始まってしまいました。600億円もかけた盛大な祭なんですから、楽しまなきゃ損です。今回の特集が祭を楽しむための良きガイドブックになることを期待しています。

著者プロフィール

津田大介
つだ・だいすけ

ポリタス編集長

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

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