ドル円相場は急激に円安へ / 朝日新聞社提供
中盤戦に入った衆院選は、約7年4カ月ぶりに1ドル=121円台半ばとなった円安の功罪が大きな論点に浮上してきた。野党側は7日、急ピッチで進む円安が、消費者や中小企業に「副作用」を及ぼすとしてアベノミクス批判を展開。これに対して与党側は、具体例を挙げて円安の利点を強調すると同時に、対策も打ち出した。
街頭演説に足を止める人たち=7日午後3時30分、福岡市博多区、長沢幹城撮影 / 朝日新聞社提供
「中小企業にはマイナスの影響が出ている。『円安倒産』が今年1月から11月にかけて去年の2.7倍に増えた。(円安で)物価は上がったが、賃金が追いついていない。過度の円安は国民生活を破壊する」
民主党の海江田万里代表は7日の長崎市や福岡市での演説で、時間の約2割を円安に割き、より批判を強め始めた。
街頭演説に足を止める人たち=7日午後3時すぎ、福岡市博多区、長沢幹城撮影 /朝日新聞社提供
民主党はマニフェストで「国民生活に十分留意した柔軟な金融政策」を掲げ、日本銀行の「異次元緩和」を批判する。海江田氏は「適度な円安は必要だが、1週間で4、5円も動く円安はやり過ぎだ」とも指摘。アベノミクスの実績を強調する安倍晋三首相(自民党総裁)に批判の矛先を向けた。
雪が降る街頭で、有権者に支持を訴える運動員ら=7日、札幌市内、恵原弘太郎撮影 / 朝日新聞社提供
生活の党の小沢一郎代表も岩手県奥州市の演説で、円安について「食料品などの生活物価が上がる。国民にとっては何もいいことはない」と強調。社民党の吉田忠智党首も仙台市で「輸出企業と内需型企業の格差が広がった」と批判。円安の恩恵を得る業種とそうでない企業に差があると訴えた。
雪が積もった駅前で、有権者に支持を訴える運動員ら=7日午後6時2分、札幌市内、恵原弘太郎撮影 / 朝日新聞社提供
選挙サンデーとなった7日、街頭演説を聴く有権者たち=東京都内、小玉重隆撮影 / 朝日新聞社提供
野党の円安批判に対し、自民党は利点を訴える。
安倍首相は、東京都江東区での演説で2割強の時間を円安に割き、「海外からの観光客は民主党政権時代から500万人も増えた」と述べ、メリットを強調した。民主党政権下での円高で、多くの企業が生産拠点を海外に移し、国内の工場が閉鎖されたとも指摘。「アベノミクスで状況を一変させた。昨年より、(企業が)日本国内に投資する計画は12%も増えた」と語った。
街頭演説を聴く有権者たち=7日、東京都内、小玉重隆撮影 /朝日新聞社提供
ただ、「急激な為替の変動は歓迎すべきことではない」(麻生太郎財務相)など、政権内にも急激な円安には懸念の声がある。首相はこの日の演説で、「中小・小規模事業者の皆さんは(円安で)原材料が上がって大変だ。政府系金融機関の低利融資を行っていく」などと述べ、円安対策が必要だとの考えを表明した。
朝日新聞デジタル 特集「2014衆院選」
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