衆院選が2日、公示される。本格的な選挙戦前の11月27日夜に朝日新聞デジタルに設けた投稿マップには1日夜までに、約620件の意見が寄せられた。投稿が最も多かったのは「争点はアベノミクスじゃない/投票する」の約380件。一方、安倍晋三首相の設定通り、「争点はアベノミクス/投票する」としたのは106件だった。ただ、争点化に同意した投稿を読み解くと、経済政策への評価は分かれた。
「政策に本気を感じます」。東京都渋谷区の会社員石山安珠(あんじゅ)さん(25)は他党の施策も読み比べて、アベノミクスを支持する。評価するのは、女性活躍や若者の育成など「人材」に着目し、投資しようとしている点だ。
人材採用支援に携わり、一企業で定年まで正社員で働き続ける雇用形態の難しさを感じている。国内は人口も経済も爆発的に伸びる見通しが薄い。だから施策も取捨選択が必要だと思う。「子どもや高齢者を目玉にするのではなく、もっと働く年齢層に重きを置いてほしい」と注文もつけた。
石山さんはまた、「幸せ」の価値観も変化が必要と言う。「他人との比較ではなく、個人の納得で実感するようになればいい。アベノミクスが進めば、そんな社会が実現しやすいと思います」
シンガポールで会社を経営する木島洋嗣さん(39)も支持派だ。「デフレから脱却するため、他に手段はない。名目賃金の上昇や旅行収支の黒字化など効果も出ている」と評価する。ただ「第3の矢」の規制緩和などによる成長戦略は「自民党でも大阪府連などの反対もあり、進んでいない点もある」と指摘。この部分では野党の維新を評価する。消費増税の延期は「現在の景気状況では仕方がない」と納得している。
一方、アベノミクスの内容や政権が強調する実績に批判的な声は、支持派をやや上回った。「大企業のみが優遇される」「やっている施策は格差を拡大するものばかり」「地方経済は疲弊したまま」――。多いのは恩恵は一部だけという指摘だ。国民の側から実態と生の声を発信する必要性を訴える投稿もあった。(吉浜織恵、古田大輔)
■小黒一正・法政大准教授(公共経済学)
争点はアベノミクス。より正確に言えば、財政破綻(はたん)を避けるためにどうするかです。
消費増税の延期は、リーマン・ショックのような事態が起こらない限り賢明な選択ではなかった。
国の借金が1千兆円を超える財政の深刻さを考えれば、2015年に10%でも遅いし少ない。高齢化で社会保障給付費は毎年約3兆円増えます。消費税率1%分の税収アップは2・5兆円を上回る程度です。
アベノミクスや増税延期の支持者には、財政再建のためにも景気回復を優先すべきだという人もいます。では2年後に本当に景気が回復し、増税できるのか。
財政再建には三つの手法しかありません。増税、歳出削減、経済成長。経済成長に頼る財政再建はギャンブルですし、それだけではとてもまかなえない。
結局、増税と歳出削減しかありません。問われているのは「いまの痛みか、それとも、近い将来のより大きな痛みか」の選択です。
「財政破綻なんて起きない」という人もいますが、財政破綻した国の例はいくつもあります。
「国家は破綻する」の著者ラインハート氏のデータベースによると、19世紀から最近までに政府債務が対GDP比60%以上となった64例のうち38例が破綻、うち13例は先進国でした。
日本はすでに200%を超えており、敗戦直前以上です。敗戦直後、政府は債権に100%の税を課し、借金を帳消しにしました。
今日が大丈夫だから、明日も大丈夫なわけではない。残された時間は長くありません。(聞き手・古田大輔)
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