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選挙をやることの3つの意義と、家入氏の選挙手法

  • 原田謙介 (NPO法人YouthCreate代表)
  • 2014年2月3日

3年間で3回目となる東京都知事選挙が行われています。せっかくなので少しでも今回の都知事選をポジティブなものに捉え、将来に向かって役立てたいものです。

自分は都知事選挙に3つの意義を見出しています。

( 1 )次の都知事を選ぶこと

言うまでもないでしょう。今回の選挙で、20才以上の都民が一番多く名前を書いた人が新都知事となります。人口約1329万人、財政規模約12兆円の大都市のトップとして、次の4年を作っていきます。

( 2 )東京都の現状や政策の争点を洗い出す

政治に多少詳しい方でも、国政のことならいざ知らず、東京都の現状や課題、さらには都政の争点についてよく知っているという方は少ないのではないかと思います。選挙になれば、各候補者がそれぞれの考え・視点・言葉でそれらを語ります。目指している東京都はどのようなもので、問題はどこにあり、それをどのように解決していくか。さらにHPや選挙公報などで詳しく見ることもできます。また、こうしてたくさんの方がポリタスに寄稿しているように、有識者やメディアなどにより様々な解説や問題提起が行われます。

( 3 )今の有権者の政治に対する考えを表す

選挙では当選するかどうかが大事です。権限が強い首長選挙ではなおさらです。しかし、選挙結果や出口調査などのそれに伴う各調査をみれば他にも色々なことがわかります。各候補者の得票数。各候補はどの層(年代・地域・政党支持など)に支持されていたのか。そして投票率などです。惜敗した次点の候補者が、当選者と政策が大きく異なる方であれば有権者の考えが分かれていることがわかります。投票率が高ければ有権者の選挙・政治への関心の高さが測れます。無効票や死票であっても、投票結果に及ぼす影響を明らかにすることもあります。

以上の3つの意義をあげました。

この意義をもとに今回の都知事選をポジティブに捉えると次のようになります。

( 1 )過去2回と異なり、都知事選を意識しやすい

3年間で3回も都知事選を体験できることは、そうそうないと思います。3度目の正直ということで、気合を入れて選びたいものです。また、東日本大震災の直後の異例の状況で行われた前々回の選挙、衆議院選挙と重なった前回の選挙とは違い、今回は都知事選がしっかりとクローズアップされ、有権者としても意識しやすいと思います。

( 2 )2020年を1つの切り口として未来を感じる議論がなされている

2020年のオリンピック開催も正式に決まり、今後東京がどうなっていくのか、東京をどうするのかについて有権者の関心も高まっているタイミングです。2020年の東京を1つの切り口として、政策の議論が行われることで、未来を作っていく政治の醍醐味を感じられるのではないでしょうか。少し前までの都知事選の定番の争点であった「新銀行東京を今後どうするか?」などでは、どうも未来のことが感じられませんでした。

( 3 )4〜6人と主要候補の数が多く、政策の幅も広い

今回の選挙では各メディアは4〜6人を主要候補者としています。そして、それぞれの方が様々なバックグラウンドを背景に、知名度を持ち、政策を語っています。正直、選挙が始まるちょっと前までは、討論会も出なかったり、組織頼みだったりとネガティブな印象の候補が多かったです。しかし、選挙が始まれば否が応でも政策の話はでてきます。そして2週間以上の長丁場で、インターネット選挙運動も解禁され自由に発信ができる状況です。

有権者がこれらの情報をもとに、自らの思考・政策に近い人を選び(消去法で残し)投票に行くことを期待します。主要候補者で4〜6人という選択肢の多さがプラスに働くと思います。

番外編:家入氏の選挙手法「#ぼくらの政策」の落とし所

35歳の若さで立候補している家入氏の選挙手法がユニークです。政策を掲げ、有権者を導く通常の立候補者のやりかたではなく有権者に質問をするやりかたです。

「#ぼくらの政策」をテーマに、福祉・オリンピックなどの5つのテーマについて意見をツイッターで集めています。著名な起業家であるだけでなく、NHKの討論番組に出るなど考え方も以前より注目されていた方だけあり、相当数の意見が届いているようです。

「入れたい候補がいない」「若者のことを見ていると思えない」。自分が活動をしている中で、これまでに何度もこのような声を聞いてきました。メッセージのみで、自分の政策を表明しないことへの違和感はありますが、若者を中心に多くの人を巻き込んでいる家入氏の取り組みがこのような声を打破するものになるかもしれません。

最後選挙が終わった時に、家入氏の当落にかかわらずこれらの声をどのように可視化し、政治・社会に訴えていくのか。そしてどのように実際に都政に反映させていくのかを注目しています。

最後に

なにはともあれ、一番必要なことは一人でも多くの人が、特に若者が選挙に行くことです。未来を作っていく政治に対して、自分の声を届けることが担保されている仕組みが選挙です。

「若者と政治をつなぐ」をテーマに活動している自分としては若者の投票率が上がることを望んでいます。前回の都知事選では21〜24歳の投票率は43.59%、25〜29歳の投票率は44.41%でした。対して、60〜64歳の投票率は73.29%、65〜69歳の投票率は77.54%です。この投票率では若者が政治から後回しにされるのも当然です。若者の投票率があがればそのこと自体が政治に対して影響を持ちます。まずは投票へ行って下さい。

著者プロフィール

原田謙介
はらだ・けんすけ

NPO法人YouthCreate代表

NPO法人YouthCreate代表。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。地方議員と若者の交流会「VotersBar」の全国展開や、行政・企業とのコラボ企画、選挙時の投票率向上に向けた企画等を実施。大学3年時に20代の投票率向上を目指し「学生団体ivote」を設立。卒業後の2012年4月インターネット選挙運動解禁を目指し「OneVoiceCampaign」を立ち上げ、1年の活動を行い解禁実現。元内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議委員。EU評議会主催2014年World Forum for Democracy日本代表。

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