ポリタス

  • 視点

今こそ、「戦後の政治システム」との決別こそが重要

  • 渡瀬裕哉 (東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長)
  • 2014年2月7日

私は今回の東京都知事選挙によって短期的な政策変更はほとんど起きないと感じている。最終的に勝利できる可能性がある候補者は舛添氏と細川氏のみであろう。そして、伝え聞く状況では舛添氏有利の情勢ということのようだ。しかし、舛添氏が勝利した場合はもちろん、細川氏が勝利した場合でも、詳細な政策は都職員頼みとなることは明らかなので、両者によって東京都の政策が大きく変わるとは限らない(ちなみに、今回の東京都知事選挙では政策的な新保守主義者がほぼ一人もいないため、私見ではどの候補者も積極的に応援したいと思えない)。

東京都政に関する政策的な違いが実はほとんどない以上、今回の東京都知事選挙は「政局」の観点のみから意味がある、と考えることが妥当だ。まさに、細川氏の「脱原発」は政策的な意味合いというよりも政局的な意味合いが強いことは明白であろう。

仮に今回の東京都知事選挙で舛添氏が圧倒的な勝利を実現する場合、自民党一極体制が確立し、主要野党は完全崩壊することになるだろう。そして、向う3年間は自民党の天下が継続し続けて、国会は政府与党に対するチェック&バランスの機能を失うことになる。そして、オリンピックを巡る利権争いから生じた都知事選挙の一連の流れを見ても分かるように、若い世代が政治の世界で頭角を現すまでの時間が20年は遅れると見ていい。ひょっとしたら、この東京都知事選挙の結果を受けて日本社会への絶望が益々深まることになり、もはや取り返しがつかないレベルに踏み込むかもしれない。

一方、細川氏が勝つ場合は日本の政治に混乱が起きることになる。舛添氏を支持している「戦時体制下のシステム」(経済団体・労働団体による連合体)の敗北が明らかになり、新しい時代の幕が本格的に開くことになる。戦後社会において圧倒的な力を誇ってきた、これらのシステムが敗北し、「権力の空白」が出現することになるのだ。そして、新しい時代の権力のあり方に対応できない既存政治は狼狽して機能停止に陥る状況が出現する。

もちろん、細川を支持している人々が古い時代の残滓であることは間違いない。そして、20年前に日本人が夢見た自民党(全体主義的な政党)と日本新党(自由主義的な政党)という二大政党の図式が綺麗な形で生まれるには、あまりに現在の日本人の心性は失われた20年の政治改革の中で疲れと汚れで一杯になってしまっている。

でも、ここで改革に疲れたと言って、軽はずみに現状維持=安定の道を選んで良いのだろうか。

私たちはそれでもこの国を支配し続ける全体主義のシステムと戦いを続けることができる道を選ぶべきだ。安易に綺麗な道を選ぶのではなく、泥沼の政治であったとしても、戦後の政治を支配してきた経済団体・労働団体による支配に対し、反旗を翻して勝利しなくては、日本の若い世代にとっての未来はない。

細川氏の勝利は「空白」を生み出すことになるだろうが、それ自体に意味があると捉えるべきだ。はっきり言って自分は下山思想(成長を否定し、若者の可能性を信じない思想)の細川氏の政治信条を支持しないが、それにも増して舛添氏を支える全体主義のシステムを支持するという選択肢を選ぶべきではないと確信している。舛添氏の敗北は古い全体主義者たちが居座っていた席が空白になるだけであり、その空白をどのように埋めるかは、20代〜30代の人々がどうするかという選択の問題だ。

我々の世代を直近20年間で失敗を繰り返してきた50〜70代の人々と同列に考えるべきではない。自分たちが20年かけて必死に戦ってきたシステムの前に完全に屈服し、もはや戦うことを諦めて、彼らに再び圧倒的な地位を与えてしまった過去の世代の過ちを繰りかえしてはならない。

そのためには、現在提示されている全体主義システムへの協賛という選択肢を拒否し、政治アクターの流動性を高めて、多くの人々が様々な方法で参入できる「大きな穴」を開けることが大事だ。本来であればネット選挙を通じて若者の支持を集めている家入氏が勝てるなら面白いと思うが、彼が勝利する可能性はほとんどない以上、若者は自らの政治的な可能性が少しでも開ける選択肢を掴むべく行動すべきだ。

過去20年間で十分に政治的な無力を味わった日本人であるが、物事は何時だってもうだめだ、という時から始まるものだ。今、疲れている場合ではない。

著者プロフィール

渡瀬裕哉
わたせ・ゆうや

東京茶会(Tokyo Tea Party)事務局長

1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了、早稲田大学招聘研究員。東国原英夫前宮崎県知事の政策立案に携わり、数多くの自治体マニフェスト作成に従事。自らベンチャー企業を立ち上げるとともに、複数の志ある若者によるベンチャー企業の立ち上げ支援に成功。全米最大のTea PartyであるTea Party PatriotsのNational CoordinatorであるKeli Carender女史の来日講演会を実現するとともに、米国保守派・最大規模のイベントであるFREE PAC等に来賓として出席し、米国メディアにて日本の自由主義者として紹介される。現在、日本版The Leadership Instituteである自由民権塾を立ち上げて活動中。

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