ポリタス

  • 視点

地方出身者から見る東京都知事選挙

  • 岸田繁 (音楽家/バンドマン)
  • 2014年1月31日

自治体の首長を決める選挙、ということで、マスコミが取り沙汰している「そこに住んでいる人以外の誰でも食いつきやすいネタ」に翻弄されがちなのが、東京都知事選ではないか、と個人的には思っています。

タレント候補の出馬が当たり前になった昨今(個人的には彼らを否定しているわけではありませんが)、プロの政治家が地方自治において、何が求められ何をやるべきなのか、ということが問われているように見えます。

東京の場合、23区あるそれぞれの行政区の中には80万超えの人口を抱えるところもあり、それは堺市や新潟市、浜松市などに匹敵するものです。そんな多くの行政区を抱える東京都の都知事が、どのようにオリンピックや再開発、エネルギー問題といった大きなテーマに対し手腕を振るうものか、東京都民ならずとも気になるところではあります。

今回の選挙候補者たちの演説や政権公約などに触れていると、ほぼ全員に共通する、あるムードのことが非常に気になります。

6年後のオリンピック開催が決定し、アベノミクス効果に最も沸いている自治体である東京都は、この少子高齢化、人口減少社会であるにもかかわらず、人口増加や流入からマンション建設の相次いでいる事実があります。そんな中、その次期知事候補たちが、低成長時代、人口減少社会、災害多発時代を予感させるかのような、比較的おとなしい物言いに終始していることが気にかかります。

時代の空気を読んで、仕方なくそう言っているのか、本気なのかはまだ判り兼ねますが、まるで地方の自治体の社民党や共産党系候補者が言いそうなことを、党派を超えたところで複数の候補者が言っているように思います。そういう時代が来たととるべきなのか、特殊な時代を迎えているということなのか、興味は尽きないですが、そこは我々有権者が現実的に、政治を「身近なもの」として捉えていく必要があります。

「脱原発」に焦点を絞ろうとした細川さん(というより小泉さん?)の観点(というよりは政党分類的なポジション)には、多くの都民や政治家、マスコミが何らかのショックを受け、ピントの絞り直しを迫られるきっかけになったのではないかと思います。

話が逸れましたが、どんな自治体にも、あって当たり前のサービスや条例と、その自治体ならではのそれがあり、ゴミの捨て方や子育て支援、高齢者対策から建築規制の条例まで、数えたらキリがありません。

それらをどう観て吟味するか、ということが一般的には地方自治体の首長を選ぶ判断基準であり、実際この都知事選挙ではそれらの生活や地域に密着した物事が争点になっているのか、と言われると閉口せざるを得ないところがあります。マスコミやネットでの色々な物言いが、それにさらに輪をかけているのでしょう(筆者の物言いもそうなのかも知れません)。

個人的な見解ではありますが、先述したように東京は様々なサービスやインフラ、雇用対策などに及ぶまで、他の地方自治体と比べると随分充実していることを、いち地方出身者として実感します。極論ですが、東京にないのは、自然くらいじゃないか、とさえ思います。

地方がどんどん暗闇の時代になっていくを目の当たりにしている現状を見れば、こんなに裕福な(まず税収が半端ないわけです)自治体はありません。

実際、都民の多くが地方出身者なのです。オリンピック効果もあり、これからも増えていくのではないでしょうか。

「脱原発」が争点になる、という単純明快なニュースを見て、先ずは違和感をおぼえた都民の方も多いと思いますが、個人的には、これからの日本のための、裕福な東京から地方への「思い遣り」をどういうベクトルで始めるか、という時代なのかな、と思っちゃいました(あくまでも超個人的に、ですが)。

もちろん「原発依存」が、地方への「思い遣り」だった時代が長かったわけですが、都民の半数以上が、どういった理由なのかはともかく、何らかのカタチで脱原発依存を進めて行ってほしい、という考えを持ち始めているわけです。やはり、何らかのカタチで、3年前の震災を肌身で感じた記憶というものがそうさせているのでしょうか。

筆者は、個人的な信条として、脱原発依存を貫いています。しかし、東京都知事選においてそれが争点となることに、有権者たちがどれほど自覚的に考えるのだろうか、ということについて、あまり考えていませんでした。公約上で「脱原発」を叫ぶ有力候補が3人もいる状況で、一体誰を選ぶことになるのかは、自分自身、まだこれから熟考のうえ決めないといけないことです。

原発推進を信条にする田母神さんの発言も、原発に関しては自分の見解とは異なりますが、いち地方自治体の首長候補として筋の通ったことを言ってらっしゃるなぁと思ったりもしています。だから、原発云々のことだけで考えたくない、というのも都民としての本音です。それは、舛添さんや宇都宮さんの脱原発発言以外の都政に対する公約しかりです。彼らは彼らそれぞれの考え方で、具体的な政策を指し示しています。いち地方出身者としては、さすが東京都知事選、魅力的な候補が並んでいるなぁと思うわけです。

著者プロフィール

岸田繁
きしだ・しげる

音楽家/バンドマン

京都府出身。1976年4月生まれ。音楽家/バンドマン。現在は東京都在住。

広告