ポリタス

  • 論点

現実的な投票か、示威的な投票か

  • finalvent (ブロガー)
  • 2014年1月29日

一票にどのような意味を持たせるか?

都知事選に限らないが、私(東京都民・ブロガー)が選挙というときにまず考えるのは、現実的な投票か、あるいは示威的な投票か、という二者択一である。

現実的な投票というのは、自分が投じた票が結果に強い影響を与える可能性のある投票ということだ。

もちろん、たいていの選挙において、自分の一票なんてあってもなくても大して意味がないとも言える。それでも、たとえば事実上二人の候補から一人を選ぶというとき、数十票の差が雌雄を決することもある。そうした接戦の可能性がある選挙なら、自分の一票の現実的な意味は重たいということになる。

そういう可能性のある選挙には、私は必ず行くことにしている。反対に、常識的に考えたら選挙をする前に結果がわかりきっていて圧倒的な票差が予想されるときには、わざわざ大河の一滴を注ぐために投票をしに行くのは気が重い。自分の票なんて意味ないんじゃないかと思うからだ。

今回の東京都知事選挙では、その点どうか?

この文書を書いている時点の下馬評では舛添要一氏が一歩リードしていると言われている。そしてこれを追うのは細川護煕氏だと言われている。現実的に見るなら、この二氏の争いになるだろう。現状では決定的な票差が出るとまではいえない。そこで私の理屈では、この選挙は現実的な投票の意味がある選挙だということになる。私は現実的な投票を好むので投票に行く。

示威的な投票を否定しない

示威的な投票とは、私の考えにすぎないが、選挙の実際の勝敗とは関係なく、候補者に代表させた意見の表明としての投票である。

選挙に勝つ見込みはないけれど、「この候補とその主張を支持している人がこれだけの数の人数いるのだ」という示威(デモンストレーション)としての投票である。選挙としては負けを承知でする投票である。

私は示威的な投票を否定しない。だが、自分ではしたことがない。示威的な投票をするくらいなら、次善でもそれ以下でもいいから、妥協して自分の票が生きる現実的な投票を好むからである。

与えられた現実に対して、現実的な責任を負って生きていたいといつも思っている。次善それ以下の候補に投票して、結果、残念な事態になったら、その一票分の責任を負いたいと思っている。その意味では、私は前回の都知事選挙で猪瀬氏に投票したので、彼の問題に自分は加害の側の責務があると感じている。

示威的な投票という視点から今回の都知事選を見るとどうか。

失礼な言い方になるが、いわゆる泡沫候補や、毎回お馴染みの万年落選候補を除けば、宇都宮健児氏、田母神俊雄氏、家入一真氏の三氏が、示威的な投票の対象となるのだろう。三氏とも幅広い層からの支持が得られているようには見受けられない。それは同時に示威的な投票の対象だからだとも言える。

三氏への加勢の示威が意味するところは何か。ざっとした印象にすぎないが、宇都宮健児氏は反核および急進的な左派の代表、田母神俊雄氏は国家主義的な右派の代表、家入一真氏はネット世論や一部の若者世代の代表、ということではないだろうか。彼らについては、当確よりも、選挙後にその票数から都民の意識を読み取る材料になるだろう。

お年寄りの政治家は引退してほしい

選挙についてまず念頭にあるのは以上のとおり、現実的な投票か、示威的な投票かということだが、もう一つ個人的に候補選びで大きな条件としていることがある。お年寄りの政治家は引退してほしいということだ。

政治家といえども社会の普通の労働者と同じ条件で仕事をしてほしいと思う。だったら、せいぜい65歳で定年して、後進に道を譲るべきだと私は思っている。

もちろん、これからの日本は老人が活躍する高齢化社会だからその先端を政治家が切り開くという考えもあるかもしれないし、普通の労働者だって、自営業に多いが、70歳過ぎても生涯現役の人もいるだろう。そういう考えを否定しない。ただ私は、それを肯定しないだけだ。

「お年寄りの政治家」は何歳からを指すか。

社会の一般的な定年退職年齢としたい。65歳からでいいと思う。

だが、その線で今回の都知事選挙を見ると、「ああ、こりゃ異常事態だな」と思わずにはいられない。16名の立候補中、65歳以上が10人もいるのだ。いわゆる泡沫候補を除くと、家入一真氏くらいしか残らない。

これはもう現実的に、年齢の線を少し緩和して、「70歳まではよしとするか」という残念な気持ちはなる。

それで、細川護熙氏の76歳は選択から外した。

すると結局、舛添要一氏(65)しか残らない。私にとっての現実的な投票先は、この時点で舛添氏しかいない。そして、お年寄りの細川氏を落としたいということにもなる。

それでいいのかと、ためらうものがないと言えば嘘になるが、これが自分にとっての次善かそれ以下の現実なのだなと受け入れる。

ネット選挙だというけどネットから公約がわかりづらい

以上で現実問題としての私の投票については片が付いたわけだが、もやっとするものが残る。そもそも選挙で大切なのは、公約ではないのか? そりゃそうだ。しかも今回もネットが活用されるというではないか。

そこでブロガーでもあるし、主要候補の公約をネットで読んでみたいと思った。そしてブロガーとして心がけているのは、メディアを媒介するのではなく、ネットで当たることができる一次資料である。こんなものさっとわかると思っていた。ググレカス。

だが、わかりづらいのである。感動的にわかりづらい。

批判の意図はないけど、この“「東京都知事選挙2014」を考える”というポリタスのサイトに、候補者公約リンク集が見当たらないのだ。いや、あるんすか? 私のボケならごめんなのだけど。

自前で探した主要5候補についてのリンク先はこう。

・舛添要一 舛添要一(ますぞえよういち)の公式サイト。 | 政策2 ⇒http://www.masuzoe.gr.jp/policy–2

・細川護熙 元総理大臣「細川護熙」公式ホームページ ⇒http://tokyo-tonosama.com/

・宇都宮健児 宇都宮けんじの希望の政策!|希望のまち東京をつくる会 ⇒http://utsunomiyakenji.com/policy/

・田母神俊雄 政策 | 田母神としお(たもがみとしお) オフィシャルウェブサイト ⇒http://www.tamogami-toshio.jp/page/policy

・家入一真 家入一真(いえいりかずま)東京都知事選立候補者 ⇒http://ieiri.net/

読んだ。私の印象をいうと、公約提示という点で、どの候補のUI(ユーザー・インターフェース)も感動的にわかりづらかった。公式サイトなのか支援サイトなのか通常のブログの延長なのか、そういう時点からわかりづらい。また、公約のように書かれている主張が、はたして公式な公約なのかもわかりづらい。

それでも読んでみたので簡単に心に残った印象を一言づつ書いておく。

舛添さんは具体性が感じられなかった。細川さんは「原発ゼロの成長戦略」が理解できなかった。宇都宮さんは瓦礫焼却処理凍結に異論を覚えた。田母神さんは舛添さん同様、具体性が感じられなかった。家入さんは現実化の手段はわからないものの、いいこと言っているなと思った。

以上。

著者プロフィール

finalvent
ふぁいなるべんと

ブロガー

ブロガー。2003年から『極東ブログ』を運営。著書『考える生き方』(ダイヤモンド社)。1994年から2002年まで、4人の子どもの親として沖縄で暮らした。

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