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なぜ、脱原発候補の統一が必要なのか

  • 鎌田慧 (ルポライター)
  • 2014年2月1日

今朝(一月二十九日)から、京都におすまいの作家の瀬戸内寂聴さんが、居ても立っても居られない、といって東京に出てきました。選挙の応援のためです。乗るのは細川もりひろさんの宣伝カーです。そして、寒風厳しい西東京の三鷹、吉祥寺で、二回の辻説法でした。

91歳、足の弱くなった女性(ときどき車椅子をつかわれている)が、どうして、「革新政党」が推している宇都宮さんの宣伝カーではなく、保守派の細川さんなのか。

瀬戸内さんは私たちの「さようなら原発1000万署名市民の会」の呼びかけ人として、京都の集会や東京・代々木公園の15万人集会、経産省前テントの応援に駆けつけてこられています。内橋克人さん、大江健三郎さんや坂本龍一さん、澤地久枝さん、落合恵子さんなどと一緒に、脱原発で行動してきた作家なのです。

そのことを伺うと、細川さんは脱原発を公約の第一条に掲げていることもありますが、とにかく、安倍の凶風を止め、戦争をさせたくない、という思いからです、とこたえられました。

もしこの選挙で、安倍が勝てば、彼が今まで推してきたすべての悪行(集団的自衛権承認、秘密保護法強行採決、辺野古米軍基地建設強行、武器輸出解禁、原発輸出策動、内閣法制局長官解任、NHK会長指名など)がみとめられ、憲法改悪まで一気にすすみます。

わたしもまた、この原発ゼロを明確に主張している細川さんを勝たせることが、その歯止めになる、と考えています。

ところが、わたし個人にたいする批判は、「私たちが求めているのは票が取れる知事ではなく、信頼できる知事です」(「東京新聞」1月28日【投稿欄】)というように、いいひとを落とすつもりなのか、というような「感情論」です。

わたしは、前回の都知事選では、宇都宮さんの立候補決定にも関わっていたし、選挙も応援し宣伝カーにも乗った人間です。それでもまけました。今度は勝たなければならない。なぜならば、そのあとの衆参気委員選挙で勝った安倍政権は、勝ち誇って凶暴、やりたい放題、憲法改悪まで公言しています。

今までよりも、いいひとを応援して負けてもいい、というようなことではすまないところにまで、追いこめられているのです。

「狼が来た」といいたいのではありません。たいがいのひとたちの共通認識は、原発再稼働は、人類破滅の原発をこれからもつづけようという無謀な方針であります。なんのためにか?

原発メーカーや電力会社が儲かるために、です。

細川さんも、小泉さんも真実に気がついたのです。菅さんも鳩山由紀夫さんも気がついたのです。「なんだ保守派じゃないか」というひとたちは、元首相たちの決意の重さを無視しています。

たしかに彼らは保守派だったけど、やっと目が覚めたのです。それを欺瞞だ、というほど人間を侮蔑することはありません。

元首相が四人も、原発は駄目だ、自然エネルギーに転換しようというのを、嘘っぱちというほど、わたしは人間不信ではありません。むしろ四人の元首相がそろって原発は駄目だ、ということに未来を感じます。世界に例のないことです。

いま、原発再稼働は日本の最大の問題です。安倍首相の人命無視のさいたるものです。この地震国でまた原発を今まで通り(やや修理して)稼働させようとしているのです。それに恐怖を感じることなく、原発だけが問題ではない。他にも問題がある、福祉ををどうするのか、というのは、難癖というものです。

これだけ人命と生活を破綻させた(ヒロシマ、ナガサキ、フクシマの人たちの声がきこえないのですか)原発を止める力があれば、さまざまな問題の解決に向かうことができます。もしもこの選挙に勝ったとき、安倍首相がどういう態度にでるのか想像して見て下さい。

さて、原発の恐怖はわかった。それでなぜ、細川を支持するのか、宇都宮に統一すればいいじゃないか、という意見もあります。それは贔屓の引き倒し、というものです。

それで選挙に勝てますか、との批判がある。というと、選挙の勝ち負けが問題ではない。人柄だ、信頼性だ、といわれてしまいます。

まるで、悪人対善人の対立みたいな論理です。が、この内輪もめを喜ぶのは安倍さんでしょう。細川立候補は、原発反対運動を分裂させるためだ、という意見もあり、小泉は自民党と謀って市民運動を分裂させて、憲法を改悪させるんだ、という「卓見」もでています。

現実を良くみてください。自民党が分裂しかかっています。統一して戦えば勝ち進めれる絶好のチャンスがきたのです。なのに、味方を批判してテキとまともに向かい合わない。なんと幸福なひとたちなのでしょうか。

沖縄の名護選挙の稲嶺勝利は、保守派や自民党員、自民党支持の財界人たちが、沖縄の総意を裏切った自民党を許さなかった結果です。その厳粛な事実から目を背け、沖縄の知事は公約を裏切ったじゃないか、だから細川も公約を裏切る、というのは、あまりにも侮蔑的ではないでしょうか。民意を裏切ったものは、歴史的に批判されます。

それは保守、革新を問わず、人間性の問題でしょう。わたしは、都知事選での、大胆にして柔軟な、脱原発派、憲法擁護派候補の統一を訴えます。この選挙の重大さ、日本の現実と未来の危機的状況を考えて下さい。

これ以上、味方の候補をあげつらって、安倍政権を喜ばせることは、自分で自分の首を絞める行為に似ています。子どもたちに未来を残すために、ここはいま勝てそうな味方の候補に譲りませんか。

著者プロフィール

鎌田慧
かまた・さとし

ルポライター

戦後日本の社会派ルポライターの代表的存在。労働問題、原発、開発、教育などをテーマに、現場に深く入り込んで取材を続けてきた。現在も日本各地、そして世界を巡りながら弱者の立場から告発するルポルタージュを多数発表。著書に毎日出版文化賞受賞『六ヶ所村の記録』『日本の原発危険地帯』『原発暴走列島』『反骨のジャーナリスト』『自動車絶望工場』『沖縄 抵抗と希望の島』『狭山事件の真実』など多数。2011年6月に発足した「さようなら原発1000万人アクション」では、呼びかけ人も務めている。

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