1月23日に東京都庁前で行われた街頭演説第一声の書き起こしです。
ニコ生:http://live.nicovideo.jp/watch/lv166169743
皆さんおはようございます。いよいよ今日から、これからの国の行方、あるいは東京の行方、あるいは私たちの生き方にもかかわる大事な選択の機会がやってまいりました。
私はたくさんのことを訴えたいのですが、絞って言いますと、1つは、抽象的にはなりますが、「価値観」の問題と言っていいのかと思います。2つ目は「平和」に関わる問題。これもちょっと抽象的な言い方かもしれません。(平和に関わる問題としては)オリンピックとか、いろいろなことがあると思いますが。それから3つ目は「原発」の問題。主にこの3点のことについて、私は今回の都知事選で都民の皆さま方にお訴えをしていきたいと思っています。
最初の「価値観」の問題というのは、私は、政治の世界を退いてから15年あまり、田舎に引っ込んで焼き物したり絵を描いたり、庭いじりをしたりして過ごしてきました。しかしなにか、国の進めている様々な施策というものを時々、新聞を見て、テレビを見たりして感じておりましたのは、どうも少し私の考え方とズレているのではないか。例えば日本の人口は今1億3千万人ですが、あと50年すると9千万人になる。100年経ったら4千万人になる。4千万人といえば江戸時代です。江戸時代の人口とほぼ近い。そういうことになると、これは今までのような大量生産・大量消費、そういう経済成長至上主義というもので、果たして日本という国は果たしてやっていけるのかどうか。私は難しいと思います。これからは原発をあちこちの国に売り込んだりするような、そういう欲張りな資本主義ではなくて、もう少し自然エネルギーとか、脱成長とか、そうした心豊かな生き方というもので満足できるような、そうした国づくりというものを進めていかなければならないのではないか。それが「価値観の転換」と申し上げた、1つの大きなテーマです。心豊かな幸せの成熟社会へのパラダイムの転換をしていかなければならないんじゃないか、私はそう思っております。特に私が心配しているのは、今度の都知事選挙への立候補のキッカケにもなったのですが、「成長のためには原発が不可欠だ」と言って原発を再稼働させようとしている国の姿勢。このことに私は強い危機感を持って、今日ここに来ていただいている小泉さんにも強く背中を押されて、立候補をするキッカケとなりました。それが1つの、私が申し上げる「価値観」の問題です。
もう1つは、これも多少抽象的な話ですが、大くくりに申し上げて「平和」と言っても良いかと思うのですが、今度の選挙のテーマはもちろん原発だけではありません。都政に関わる様々な問題。いつ来るかわからない直下型地震に備えての基盤の整備とか、あるいは高齢者や待機児童の問題。様々な問題にできる限り急いで、メリハリをつけて対応していかなければならない、それも当然のことであります。
外国との様々な問題。オリンピックはまさに「平和の祭典」でありますから、都としても善隣的な近隣諸国との付き合いというものについては、いつも知事は念頭に置いておかなければならないことだと思います。オリンピックは、しかしかつての東京オリンピックのように、大きな投資をして、大きな建物をつくって、というわけにはいきませんから、できるだけコンパクトな、しかしソフトの面で「おもてなしの心」というものを充分に感じていただけるような、そういうオリンピックにしていかなければならないし、また、東京だけが良い思いをするのではなくて、東北の人たちにもぜひ一緒になって、オリンピックの果実というものを分かち合えるような、そういうオリンピックにしていかなければならないと思います。
もう一つ、最後の問題は、「原発」の問題です。私は国の存亡に関わる大きな事故がいつ起きるか、本当にこれは不安で仕方がない。福島の事故がありましたけれども、東京の周辺100キロ、200キロくらいのところには浜岡とか、あるいは東海第二とか、いくつかの大きな原発が立地しています。もしそういう原発が大きな事故を起こしたら、これは日本は壊滅的な打撃を受ける。日本だけではない、世界中にその影響がおよぶことは必至であります。ですから、一刻も早く原発再稼働というものをやめて、世界の先進国がやっているように、自然エネルギーあるいは再生エネルギーなどを活用した、分散型のエネルギー社会というものをつくっていかなければ、日本は成り立っていけない。そういう方向に早く踏み出していくべきだと思います。
オリンピックや消費税や、いろいろな問題があるんですけれども、もちろんそういう問題も原発の事故が起きたとしたら、そんな問題はいっぺんに吹き飛んでしまう。知事の最大の任務は、第1の任務は都民の生命を財産を守ることです。原発は都政のテーマではないと言う人たちもいますけれども、都民の生命と財産を守るということは、これは最も重要なテーマでありますから、それが今度の選挙のテーマではないということは、私はまったくおかしな話だと思います。この間の福島の事故の後も、水道が止まったり停電になったり、都内の一部では大きな問題が起こりました。迷惑をされた方々がたくさんありました。その原発依存型のエネルギー多消費型社会というものを、先ほども申し上げたように180度方向転換して、新しい時代に対応するものにしていかなければならないと思います。3.11が起こるまでは、私も原発は安全でクリーンだということを信じてまいりましたが、しかしこの事故によって、それがいかに欺瞞であるかということが明らかになりました。
原発がなければ日本の経済は成り立たないという人がおりますが、2年間原発が止まっていても日本の経済は順調に回っております。もちろん石炭・火力などの燃料代というものも相当かかることはわかりますが、しかし、原発には実は天文学的なコストがかかっている。事故のあった時のコスト、あるいは廃炉にするコスト。いろいろな点で天文学的なコストが掛かっている。それが見えない形で国民の負担にされて、原発のコストは安いというごまかしがまかり通ってきました。原発の安全性の問題や核のゴミの問題を考えたら、原発とは早くここで区切りをつけて、欧米の先進国がやっているように、自然エネルギーなどに換えていく方がよほど生産的だし、新しい雇用や技術を生み出していくきっかけになると思います。
今ここで原発ゼロの方向というものを明確に打ち出して、再稼働に向けてスタートを切っていく。自然エネルギー大国・日本というものを打ち出していくことがなによりも大事なテーマだと思っているわけです。もちろん東京都は東電の大株主でもありますから、東電に対していろいろと注文もつけていかなければならない。その東京で原発ゼロを目指すことは、先ほども申し上げたように、今度の選挙で都民の皆さん方に問うべき、それこそ重要なテーマだということを重ねて申し上げたいと思います。
この間小泉さんからも話がありましたが、原発をなくして再生エネルギーで活力のある日本をつくっていくか、それとも今までのコストの高いリスクのある原発というものにしがみついて、日本という国の衰退に賭けるか。そのどちらを選ぶかという、今回は大事な選挙であります。私は、原発をやめて自然エネルギー・再生エネルギーなどで日本の未来に賭けていく、そういう方々の先頭に立って、日本の新しい国づくりに邁進していきたい。そのように思っておりますので、どうぞ都民の皆さま方も、少しでも多くのお力添えをいただけたらありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。