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選挙の主人公は「殿様」じゃない! 都民が発信する、都知事選のAGENDA

  • ハリス鈴木絵美 (Change.org日本代表)
  • 2014年2月2日

有権者から争点をつくろう

今回の都知事選では原発やエネルギーなど、かなり「ビッグ」な課題が争点となっている。テレビや新聞という時間や空間が限られたメディアでは、どうしても議論される争点が少なくなってしまいがちだが、ネットはそうではない。幅広いイシューに対して、都民もどんどん発信して、自分たちの考えを候補者や世間に訴えている。

「殿様」たちに決められたアジェンダに受け身で反応するだけではなくて、都民として「選挙で何が議論されるべきか」という課題設定にも積極的に参加する——そんな選挙になってほしいと願っている。

私が運営するChange.orgという署名プラットフォームでも、都知事選に関連する内容のキャンペーンが多く発信されている。それらをまとめたYahoo! みんなの政治のページが先週公開された( http://seiji.yahoo.co.jp/change/tokyo2014/ )。

一番注目を集めているのは、やはりオリンピック関連のもの。葛西臨海公園にカヌー・スラローム競技場を建設するプランの見直しを求めているものが一番賛同の数が多い。続いて、神宮外苑に建設予定の新国立競技場のプランを白紙に戻し、今の国立競技場を直して使う案を推進するキャンペーンが1万人以上の人から賛同を得ている。

これらのキャンペーンが浮き彫りにしているのは、今のオリンピックを進める東京都のプロセスが透明性と市民参加の観点に欠けていることだ。招致への道のなかで、東京都はいろいろなプランを立てて招致が成功するよう進めてきた。しかしそれらが本当に地元に住む人々の声を反映したものになっていたのか、疑問に感じる。招致が決まってから、都は「IOCに提出したプランにこうすると書いてあったから、変えることは難しい」という回答だけを繰り返している。柔軟性と創造性に乏しい対応と言わざるを得ない。

オリンピックを真に成功させるためには、このような都民の声に耳を傾ける姿勢が次の都知事に求められているのではないか。

有権者と向き合う姿勢を

話をキャンペーンに戻す。次に賛同が多いのは、マスメディアではほぼ完全に無視されている動物の殺処分問題である。近年、国内でも動物愛護の運動は盛り上がっていて、特に若い女性が活発にリーダーシップを発揮し、運動に参加するムーブメントが起きている。去年は日本最大手の化粧品会社・資生堂が動物実験をやめると宣言したことや、最近ではファミリーマートが「フォアグラ弁当」の販売を中止するなど、動物の命や苦しみに対する配慮に欠く商品に対する目線はどんどん厳しくなっている。 

都知事選候補者に「殺処分ゼロ」を求めるキャンペーンもその流れにある。AERAの記者で長年この問題を取材してきた太田国彦さんが書いた書籍『犬を殺すのはだれか』などでも分析されているように、日本は先進国の中でも有数の殺処分大国だ。近年、ペットブームで売れ残った犬や猫が、自治体が運営する動物愛護センターに持ち込まれ、大量に殺処分されている。つまりこれは、都民の税金でビジネスのために生み出された命が殺されているということに等しい。ペットショップのような生体販売に対する規制も日本はとてもゆるい。

このムーブメントに参加している多くの人は、人にも動物にもやさしい街づくりを推進する候補者に票を入れるだろうことは想像に難くない。

Change.orgでは他にも、労働問題、セクシャルマイノリティへの支援、東京の自転車インフラ、そして私も個人的におもしろいと感じている高校生の「都立高校のSNS禁止に反対!」キャペーンがアップされている。いずれも今後の東京について真剣に考えている都民が発信している内容だ。

これらのキャンペーンが物語るように、ネットを通じて都民の政治意識、政治参加のリテラシーは日増しに高まっている。

今回の選挙の候補者には、抽象的できれいごとばかりの街頭演説やウェブサイト上のキャッチフレーズのような政策提言だけではなく、このように積極的に動いている都民とまじめに向き合うことが求められているのではないか。

著者プロフィール

ハリス鈴木絵美
はりす・すずき・えみ

Change.org日本代表

米国人の父と日本人の母の間に生まれ、高校卒業まで日本で育つ。米イェール大学卒業後はマッキンゼー&カンパニー、オバマ氏の選挙キャンペーンスタッフ、ソーシャルインキュベーター企業Purposeの立ち上げなどを経て、2012年にChange.orgの日本代表に就任とともに帰国。

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