地方から見ています
こんにちは、もんじゅ君です。
僕は福井在住なので、ニュースが都知事選一色になって「あー、また東京ばっかり……」というちょっとひがんだ気持ちになってしまいます。福井県知事選がこんなに注目されるようなことはないわけだし。
だけど都知事選って、1000万人以上も有権者がいる巨大な地方選挙なわけです。しかも、これでしばらくのあいだ国政選挙もないとなると、2月9日の投開票でどの候補や政策がどれくらい支持されるのかが、安倍政権の進路にもすくなからぬ影響を与えるかもしれない。そう思って興味ぶかく見ています。
原発について騒がれているけど……
僕は原発やエネルギー問題について2011年からツイッターなどでいろいろと書いてきた身です。なので、今回の選挙で原発問題が争点であるかのように報道されていることについては、もちろん気になっています。
ですが最初は「原発問題がもうやく争点あつかいされてよかった」くらいに思っていたのですが、だんだんと「そこまで原発のことばっかりなのも、ちょっと……」とすこし心配になりました。
エネルギー問題に関する住民投票ではなくて、東京という街の首長を決めるための選挙ですから、いろいろな分野の政策について問題点と提案が整理されて伝えられた上で、みんなが考えられるのが理想ですよね。これは、候補者の公約や演説についても、メディアの報道姿勢についてもそう思います。
いちばんの関心事は「福祉」や「教育」などの「暮らしやすさ」
ただ、告示まえは原発問題についての報道がかなり多い印象だったのですが、告示のあとはずいぶんバランスがとれてきているようにも思います。さまざまな世論調査の結果が出たためもあるのでしょうか。
都民のみなさんが「新都知事に期待していること」「力を入れてほしいと思っている政策」について、いくつかの調査での上位3つを見てみましょう。世論調査というのは、たとえおなじ質問であってもどういう選択肢を用意するのかによって、また母集団の抽出のしかたや、たずねる手段(電話なのか、インターネットなのか、など)によっても結果が変わってくるのと思うので、各社をくらべて考えるのが安全だと思います。
【東京新聞】 1位「医療・福祉」26% 2位「教育・子育て」18% 3位「原発・エネルギー政策」「防災」ともに14% http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/2014tochiji/list/CK2014012502100004.html
【毎日新聞】 1位「少子高齢化や福祉」27% 2位「景気と雇用」23% 3位「原発・エネルギー問題」19% http://senkyo.mainichi.jp/news/20140125ddm005010067000c.html
【朝日新聞】 1位「景気や雇用」29% 2位「医療や福祉」25% 3位「原発やエネルギー」14% http://digital.asahi.com/articles/DA3S10947126.html
原発に「反対」は、日経でも東京新聞でも「6割」
また、原発についての考えをたずねる質問では
【東京新聞】 「ある程度時間をかけて原発ゼロにする」54% 「すぐゼロにする」9% →ふたつをあわせた「脱原発派」は63% 「政府方針で良い」9% 「極力減らしていくが、ゼロにはしない」26%で →ふたつをあわせた「維持・推進派」は35% http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/2014tochiji/list/CK2014012502100004.html
【日経新聞】 「反対」60% 「賛成」28% (全国集計では反対58%、賛成27%) http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS26025_W4A120C1PE8000/
このように見てみると、
・福島第一原発の事故発生から3年が経過するが、依然として全体の6割以上が「原発ゼロ」を望んでいて、その割合は東京都と全国平均とで大きな差がない
・原発ゼロを望んではいるものの、関心の度合いとしては「エネルギー」は「福祉」「医療」「教育」「景気」などの「生活しやすさ」に密着したものよりは順位が低い。6〜7つの選択肢のうちの3番目程度に位置しており、関心は高いといえるが、1番に優先されるわけではない
といえるのではないでしょうか。
みんなの関心が高い「生活」について十分に語られていない
すると気になってくるのが、多くの人の挙げている「福祉」「医療」「教育」「景気」について、現在、東京都にどのような問題があるのかや、それを解決するための具体的な政策があまり語られていないのでは? ということです。
もちろん皆無ではありませんが、「生活しやすさ」について語っている言葉が、そのほかの「オリンピック」や「原発・エネルギー」にくらべるとちょっと少ないかもしれません。
なぜ、こういうことが起こってしまうのでしょう。
候補者・メディア・有権者……「政策」が優先されていない?
有権者のいちばんの関心事について語られ足りないような印象があるのはなぜなのか? その理由を3つ、考えてみました。
(1)候補者の「知名度(=票を集められる)」のほうが「政策」よりも優先されている。
(2)原発やオリンピックのように、大きな決断のともなう単発的なテーマのほうが、福祉や教育など毎日つづくものについての改善提案よりも、演説などで訴えやすいし、実際に当選したあともアクションを起こしやすい(たとえそれが失敗に終わったとしても)。 (3)新聞やテレビなどの報道も、原発やオリンピックなどインパクトのあるニュースのほうが伝えやすいため、そこに割く時間やスペースが大きくなりやすい。
……こう書くとちょっと暗い気持ちになってしまいました。
これっていまからどうにもしようがないじゃん! という気持ちにもなってしまいそうなのですが、やはり選挙においてもっとも大切なことは「投票にいくこと」だと思います。
1ポイントでも2ポイントでも投票率が上がり、投票する人たちの厚みと多様性が増すことで、選挙結果も変わるかもしれませんし、選挙結果の持つ意味も変わってきます。自分が投票にいくだけではなく、配偶者や親や友達やきょうだいに「いってる?」「いく?」「自分はいくよ」という話をすることにも、とても意味があると思います。
おまけ:すでに都知事選は国の政治にも影響を与えている?
安倍政権が本来なら2013年の暮れに、そしてやや遅れても今年の頭には出すはずだった、新「エネルギー基本計画」というものがあります。
この内容というのが、「以前とくらべても、とくに安全性が大きくUPしたとはいえない……」という全国の原発の現状をふまえずに「再稼働するよ〜」と書いてあったり、2012年、2013年と日本では電力を原発にたよる割合がほぼ0に近かったという実績をふまえずに「原発はわが国の重要なベース電源である!」とか書いているのです。そんなわけでちょっとツッコミどころの多い計画なのですが、これの閣議決定が遅れています。
これはおそらく、「都知事選で原発・エネルギー問題が話題となっているところにこんな『バリバリ再稼働するぜ!』って書いたものを出したら火に油をそそいでしまう」という懸念があるからではないでしょうか。
こんなふうに、都知事選は投開票をまたずして国政にも影響を与えているようです。そんなだいじな選挙、投票権を持っている幸運な都民の方は、ぜひその権利を行使してみてはいかがですか。