ポリタス

  • 視点

都知事選について

  • 為末大 (アスリートソサエティ代表理事)
  • 2014年2月2日

都知事選を前にして、ふと一体どんな人なら世の中が納得するんだろうということを考えてみました。

決定力がある人がいいという声があります。確かになかなか決定できない政治家が多いように見える中、ずばっと決めてくれる知事がいたらきっと痛快に違いありません。一方であまり軽率な行動を取られても困ります。しっかりと深く考えてくれる知事がいいという人もいるでしょう。

オリンピックもあることですし、理想を掲げてくれる人もいいかもしれません。ビジョンを見せてくれるのがリーダーの役割ですし。一方で、原発などの現実問題があります。しっかりと現実を見据えて行動できる人でないと対応は難しいかもしれません。

私は選挙というものは、ベストを選ぶものではなくて、よりましな人を選ぶものだと思っています。入れる人や党がいないという言葉は、生まれてからずっと大人の人が言っているのを聞いてきました。確かにそうなのかもしれません。でも残念ながら今のシステムではリーダーを選ばないと機能しません。つまりどんなに気に食わなくても選ぶしかないし、選ばなくても、必ず誰かは選ばれるわけです。

政治家が日本を悪くしたんだと言う人がいます。確かにそうなのかもしれません。でも、ずっと日本には選挙がありました。選んだのは私達です。そしてその結果を引き受けるのも私達です。仕方なく選んだんだとしても、選ぶことを放棄しても、選択の結果は私達の生活に反映されます。辞任したりと、表面上の責任は政治家が取ったように見えますが、取りきれる訳がありません。責任を取るのは私達の生活です。

阿久悠さんがインタビューでおっしゃっていたことがあります。

「あんな政治家を選んでしまって申し訳ありません——有権者がそう思うときこそ民主主義が成熟する」

さて一体誰がリーダーをやれば私達は満足するのでしょうか。非の打ち所のない理想のリーダーはいつ誕生するのでしょうか。そして、果たしてそんな人が今までにいたのでしょうか。

都知事選はもうすぐそこに迫っています。選ぶことを放棄したとしても、リーダーはそこで決定され、私達が乗った東京という船はそのリーダーが指し示す方向に進んでいきます。そして、その結果を私達や私達の子供が引き受けていく訳です。

著者プロフィール

為末大
ためすえ・だい

アスリートソサエティ代表理事

『侍ハードラー』の異名で知られ、未だに破られていない男子400mハードルの日本記録保持者(2001年エドモントン世界選手権 47秒89)である。2001年エドモントン世界選手権で、男子400mハードル日本人初となる銅メダルを獲得。さらに、2005年ヘルシンキ世界選手権で初めて日本人が世界大会トラック種目で2度メダルを獲得するという快挙を達成。オリンピックはシドニー、アテネ、北京の3大会に出場。2003年に大阪ガスを退社し、賞金で生活するプロに転向。2008年北京五輪後は、その進退に注目が集まったが、「ボロボロになっても行けるところまで行ってみようと決断した」と、現役続行を発表。膝の怪我に苦しみながらも、2009年に米国サンディエゴに拠点を移した。2012年6月、大阪で行われた日本陸上競技選手権大会を最後に25年間の現役生活に終止符を打った。 2007年東京の丸の内で「東京ストリート陸上」をプロデュース、陸上教室・イベントに多数参加するなど、現役時代から陸上競技の普及に積極的に取り組んできた。2011年8月には韓国テグで開催された「世界陸上」でTBSテレビ初の現役アスリートゲストとして現場から大会の魅力や注目選手をレポートした。 2010年、アスリートの社会的自立を支援する「一般社団法人アスリート・ソサエティ」を設立。現在、代表理事を務めている。さらに、2011年、地元広島で自身のランニングクラブ「CHASKI(チャスキ)」を立ち上げ、子どもたちに運動と学習能力をアップする陸上教室も開催している。また、東日本大震災発生直後、自身の公式サイトを通じて「TEAM JAPAN」を立ち上げ、競技の枠を超えた多くのアスリートに参加を呼びかけるなど、幅広く活動している。今後は「スポーツを通じて社会に貢献したい」と次なる目標に向かってスタートを切る。

広告