または、舛添陣営による横綱相撲の可能性を考えたいと思います。
当初タイトルを『細川陣営が勝つ方法、または舛添陣営による横綱相撲の可能性』にしていたのですが、長すぎたので直したのです。
取れる票を取り逃がしている細川陣営
なぜ、このタイトルを考えたか? それは、細川陣営のコミュニケーションデザインに緻密さがないためです。私、別に支持者ではありません。ただあまりにも得票できる可能性に対して、貪欲さがない。ネットを利用した選挙キャンペーンもすでに解禁されているのに、このままでは低い投票率で、前都知事の方が良かったかもねーという消化試合の体となってしまいます。
内閣府をはじめ各種の世論調査でも明らかなように政府への要望として常に上位にあるのは、「景気対策」です。
安倍政権の高支持率は、経済対策に力を入れているように見えていることが大きく影響しています。お金大好きとまで露骨に言わなくても、「福島原発はアンダーコントロールです」と言えてしまうトップを、私達は、まぁ結果的に許容してしまっているわけです。
そこで、原発即ゼロというと、わかっていないなぁとなります。悠々自適の老人が理想に立ち返って、好き勝手にやっていると思われます。現役世代に、これはマイナスです。「こっちは少なからず泥水すすっているのに綺麗事を言ってんじゃないよ&原発は稼働しなくてもコストはかかるってことも理解していないのかよー」と日々仕事をしている人は思うわけです。
選挙戦後半の2月に入ってからは若干軌道修正をしているようですが、選挙戦初期の頃に、原発の影響でシロクマが死んでいるなどの発言で大損しています。
また、応援しているという著名人、有志の方々の発言も味わい深いものがあります。
「安倍内閣を負かしたい」 「私は戦前の日本に戻るのは絶対に嫌なんです」
など、これらは記事や文字起こしサイトなどで確認した限りのものですが、細川陣営を応援する方々は、都知事というものを安倍政権に対するブレーキのようにしたいと考えているかのようです。
これも都政についてまじめに考えている方にはマイナスです。日本の儲けを生み出すベネフィットセンター(利益を生み出す場所)東京で、功なり名なり上げた年嵩の方々が、安倍政権に文句をつけているように見えてしまいます。
確かに、年末の靖国神社の首相参拝、日本版NSC設置法を成立させたことに続いて、2014年の自民党運動方針の策定を進める中で「不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し」との表現を削り、新たに「(戦没者に対する)尊崇の念を高め」と修正したといった報道から何らかの不安感を持つのかもしれません。
しかしながら、不安に対して「反対」を示すのは簡単ですが、対案を持って論戦ができないと勝負にならず負けてしまいます。安倍政権の支持率が高い理由は、他の選択肢に較べて一番景気がよくなりそうという雰囲気を打ち出せていることにあります。この部分をおさえずに「反対」といっても勢いがつかないでしょう。
不安に応える、可能性の提示が支持を形成する
21世紀初頭の現在、おそらく日本人の大多数は不安でしょうがないのです。お金がないと現在の生活ができない、老後の生活ができないのではと。
世論調査で政府への要望を質問すると、「景気対策」、「医療・年金等の社会保障の整備」が必ず上位に来ることをもっと重視しないと大きな票が動きません。
ゆえに、細川陣営が勝つ方法は、(乱暴にコピーにまとめてしまうと)「原発を戦略的に卒業することが最も有効な景気対策になる。みんなで豊かになろうぜ!」というメッセージをわかりやすいワンフレーズ、疑問を氷解させるプレゼンテーションなどの形で発信することです。
従来の選挙手法ではあり得なかったことですが、選挙戦後半でもネットと街頭の動きを組み合わせればメッセージの劇的な拡散も可能です。
“戦略的に卒業”という言葉には、サンクコストでありながら稼働停止している原子力発電所の有効活用や、将来の廃炉に向けて前向きに取り組み新たな産業とするといったことも含めることができます。
対して、舛添陣営は組織力も高さと、ブレーン集団の力を見せつけるように、競合からの発信に堂々と応え「舛添都政とアベノミクスが豊かさを生み出す!」と与党としての貫禄を見せつければ、これまでの世論調査の予測どおり圧勝できるでしょう。低投票率の中で逃げ切るように当選するよりもプラスになりますね。
リーダーで政治は変わらない(という認識が重要)
ここからは追記です(しかし、本題です)。
すでに都市経営の政治は、地方議会と首長に関わる制度設計、コミュニケーションデザインが古いために、ひとりのリーダーがどんなに優れていても戦略的な意思決定を行うことがほぼ不可能になっています。1995年に当選し公約であった都市博の中止以外に政策的な成果がなかった青島都知事のように、当選直後は議会に対してもパワーを発揮できましたが、支持者、都民とのコミュニケーションが途切れて失速していきました。
また、都知事選の最中である1月31日には、大阪市の橋下市長が議会(正確には特別区設置協議会における他の政党)からの反対を受けて、改めて民意を得るために市長選挙を行う選択をしました。
背景には、橋下市長の支持がそれほどではないと見て、維新の会との協調を反故にした公明党の動きがありますが、強いリーダーシップを発揮できる首長であっても、支持を維持するために不可欠である住民との継続的なコミュニケーションを持つ方法がほぼ皆無であり、戦略的な意思決定に多大な苦労を強いられることがわかります。
都知事選の結果はまだ判りませんが、誰か当選しようと、すでに確立している地方自治体の二元代表制とコミュニケーションデザインでは、戦略的な都市経営がうまくできない問題に突きあたります。
この問題を解決できそうなセンス(具体策はあるわけないので、センスが重要)がどの陣営(チーム)にありそうか?
投票時に少し考慮するといいかもしれないと私は考えています。