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参院選でどこに投票したらいいか迷う人へ

  • 小熊英二 (歴史社会学者)
  • 2016年7月4日

参院選で、どこに投票したらいいか迷う人へ。

いまの日本は政党が多すぎて、どこに投票したらいいか迷うと思う。政党が二つで、政策の違いがはっきりしていればわかりやすいのだが、そうなっていない。

それでも今回の選挙は、比較的わかりやすくなった。政党が乱立しても、有権者が迷って投票率が下がるばかりで、いいことがないと政治家の方もわかったからだ。

今回は、「与党連合」と「野党連合」の二大陣営に分かれた。「与党連合」は自民党と公明党で、いま政権を担当している。「野党連合」は民進党と共産党が中心で、いま政権を批判している。ほかにも小さな政党がいろいろあり、それぞれがんばっているのだが、政党に詳しくない人は、とりあえず「二大陣営がある」とだけ覚えておけば間に合うと思う

それでは、与党連合と野党連合は、どこが違うのか。

これは私の意見だが、経済や社会保障については、大きな違いは出しにくい。たしかに、各政党が掲げている政策は、それぞれ違う。しかし日本政府は、お金がない。だから、実際にできる政策の選択肢があまりない。なので結果的には、どこの政党が政権についても、大きな違いを出すのはむずかしいと思う。

与党連合と野党連合の違いが出る分野は何か。これも私の意見だが、それは、進めてもお金のかからない政策分野だ

それでは、与党連合と野党連合の違いが出る分野は何か。

これも私の意見だが、それは、進めてもお金のかからない政策分野だ。具体的にいうと、憲法を変えるとか、学校で愛国心や道徳心を教えるとか、労働の規制をゆるめるとか、原発の安全審査を急がせるとか、人種差別をあまり罰しないとか、そういったことだ。

だから、そういった政策を進めた方がいいと思う人は、与党連合に投票したらいいだろう。そういったことを望まない人は、野党連合に投票したらいいと思う

以上は、今回の選挙に限っての、簡単な目安だ。今回の選挙で、与党連合が政権を失う可能性は、ゼロに近い。野党連合の側も、与党連合が進めようとしている政策を、押しとどめるのが当面の目的だ。だから、今回は上に述べたような目安で投票しても、大きな問題はないと思う。

抽象的な公約を読みこむよりも、人間で追いかけた方がわかりやすい

あとは、地元の選挙区の候補について、経歴や役職を調べることをお勧めする。「こんな仕事を経た人が、こういう党の、こういう役職に就くのか」とか、「こんな役職は、どんなことをするところなんだろう」とか、そういうことを調べるといい。抽象的な公約を読みこむよりも、人間で追いかけた方がわかりやすいし、政治のことが具体的に理解できる。今どきはネットが発達しているから、昔より調べるのが簡単だ。自分が投票した候補が当選したり、落選したりしたら、その後に何をしているのか、追いかけてみることもお勧めしたい。

以上述べたことに対して、単純すぎるとか、反論があるとかいう人もいるだろう。そういう人は、日本の政治について、すでに一定以上の関心と知識があるはずだ。そういう人が、どんどん増えてくれればいいと思う。

著者プロフィール

小熊英二
おぐま・えいじ

歴史社会学者

プロフィール:『単一民族神話の起源』でサントリー学芸賞、『<民主>と<愛国>』で毎日出版文化賞・大仏次郎論壇賞、『1968』で角川財団学芸賞、『社会を変えるには』で新書大賞、『生きて帰ってきた男』で小林秀雄賞、『首相官邸の前で』で日本映画復興奨励賞。 写真撮影:生津隆彦

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