【撮影:初沢亜利】
◆翁長新知事誕生も国の方針は変わらず
選挙結果は、予想どおり翁長雄志が投票総数の過半数を取って大勝した。沖縄の民意を無視、あるいは敵視さえしているかに見える安倍政権や、その操り人形の役割を演じた仲井真知事に対する県民の反発がいかに大きかったかを示している。投票率も上がった。選挙に背を向けていた人たちの一部が、政治の場に戻り、自らの意思表示を行ったことの政治的効果も見落とさないようにしたい。
翁長雄志も、選挙結果を受けての記者会見で、慎重に言葉を選びながらではあるが、公約に従って、辺野古新基地建設を阻止する姿勢をより一層はっきりさせている。
これに対して、菅義偉官房長官をはじめ、防衛省、外務省関係者は、知事が一度承認した埋め立て工事の見直しなどあり得ず、粛々と工事を進めるという態度を明らかにしている。圧倒的な形で示された沖縄の民意など、一顧だにしないという強権的姿勢は変えていない。
全国のメディアも選挙結果をそれなりに大きく取り上げ、社説でも新基地建設を白紙に戻すことや沖縄の民意に配慮することを求めるものも少なくないが、読売や産経は、政府と歩調を合わせて、翁長新知事に「現実的対応」を求めている。
直ちに問題になるのは、現在、県で審査が進められている工事の変更申請である。仲井真知事が残された半月ほどの任期中に、食い逃げ的にこれを承認してしまうのか、新知事に引き継ぐのかで、目先の展開は大きく違ってくるが、いずれにせよ翁長新知事は、仲井真前知事の埋立承認に至る過程を検証し、承認取り消し、撤回のための対抗措置を進めていくことになるだろう。そして翁長新知事が、公約を実現していくためには、翁長を知事に押し上げた民意が、一貫して粘り強く新知事を支え続けることが必要不可欠である。
◆総選挙が覆い隠す沖縄の自己決定権
その際注目されるのが、にわかに浮上した総選挙の影響である。
沖縄についていえば、知事選挙の際の政治的枠組みを、総選挙に攪乱されずにどこまで維持できるかが最初の課題となる。別の意味で、公明党沖縄県本部の動向も注目される。県内移設は容認しないという方針に従って知事選挙では自由投票としながら、翁長那覇市長の後継選びの那覇市長選挙では、基地は争点にならないとして自公協力体制を維持して大敗した彼らの次の選択は、どうなるだろうか。さらに言えば、常日頃「沖縄の視点」に立った報道を心掛けているはずの地元メディアも、選挙期間中は、対立する政治勢力の一方に偏らないよう、必要以上にバランス感覚を働かせて、「中立的立場」にこだわるのも見逃せない。
全国的にみればどうだろうか。沖縄県知事選の結果を踏まえた沖縄の民意にどう対応するかが選挙の争点の一つになりうるだろうか。その可能性は極めて薄い。社民党や共産党は、沖縄県知事選挙に示された民意を取り上げそうだが、それはむしろ、時代遅れの反共キャンペーンに利用されるだけだろう。沖縄県知事選挙でも、すでにその兆候は見られた。結局総選挙は、一瞬全国的にも衝撃を与えた県知事選挙の意味するものを政治の場から覆い隠す役割を果たすことになりそうである。
【撮影:初沢亜利】
沖縄防衛施設局は、11月18日深夜、選挙期間中一時中断していたボーリング調査の資材をキャンプ・シュワブに持ち込み始めた。当然これまで以上に強力な住民の抵抗闘争も再開される。そして歴史は新しいステージへと向かわざるを得ない。そこでは、歴史的文化的独自性を持つ少数派の自己決定権を、国家的レベルの多数決民主主義がどこまで包摂しうるかという問いに対する答えが要求されてくる。