【撮影:初沢亜利】
◆10万票差の選挙結果と不思議な「因縁」
選挙結果で一喜一憂しない。いつの間にか身についた感覚である。期待と失望、両方とも未来を夢見るときにじゃまなもの——とまでは言わないが、あくまで選挙結果は始まりにしかすぎない。
今回「オール沖縄」をかかげた翁長雄志氏が、仲井真弘多氏を10万票の大差をつけて破った。この結果に安堵したのは事実だが、もう昔のように喜ぶわけにはいかない。ちなみに沖縄県知事選挙で10万票の差がついたのは、1994年当時現職だった大田昌秀氏が自民党が推薦する翁長助裕氏を破って以来のことで、助裕氏は翁長新知事の兄である。現役の政治家が沖縄県知事になったのは、西銘順治氏(知事在籍1978~1990年)以来だ。
今回このような差がついたのは、去年の11月、自民党沖縄県連が事実上の辺野古移設容認に傾いた石破茂自民党幹事長会見での、沖縄選出自民党5名の国会議員の情けない姿-21世紀の琉球処分とでも言いたくなるような屈辱的な光景と、
去年年末の辺野古新基地建設を承認した仲井真知事の異様なはしゃぎっぷりの醜悪さに、
これが今の沖縄の姿か? と多くの沖縄県民が愕然としたからではないかと個人的には思っている。沖縄と日本のねじれまくっている関係が図らずも可視化されたというか。
「オール沖縄」の名の下のこの結果に、かつての「島ぐるみ闘争」の再現を見ることもできるが、この状況に至ったのは「保革を越えて」ではなくて、「保革が崩れた」からであろう。辺野古移設反対という一点突破で得たこの状況を、沖縄全体が置かれた立場を強く主張する全面展開に持っていくために必要なことはなんだろうか。1990年以降の沖縄の政治状況を振り返ってみると、大田昌秀知事が「平和」というイデオロギー、稲嶺恵一・仲井真弘多知事が「経済」というイデオロギーで県政を支えてきた。翻って翁長雄志新知事が掲げる「アイデンティティ」は、この2つのイデオロギーと対立するものではないことを示せるか——。または、2つのイデオロギーを止揚し、実現させられるのかが問われている。
◆「オール沖縄」を沖縄をつなげるネットワークに
今回の選挙では、翁長氏は離島、宮古・八重山地区で敗北している。辺野古移設反対では突破できなかったことがあるのだ。それは沖縄県全体の得票数から見れば微々たるものだが、沖縄はこうした島々のつながりの上に成り立っている文化であることを考えると、その意味合いは変わってくる。日本政府、アメリカ政府に対してこれから独自のアプローチをしていくことは重要であるが、同じように足元の島々の声をつなげることも大切ではないだろうか。「オール沖縄」は、沖縄をひとつにするのではなく、多様な沖縄をつなぎあうネットワークだといいなと、そこには希望を持ちたい。