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【沖縄県知事選】政治・選挙に対して壁をつくらない沖縄独特の雰囲気

  • 原田謙介 (NPO法人YouthCreate代表)
  • 2014年11月16日

政治・選挙に関わる用件で沖縄に行くと、沖縄の人は政治や選挙に対しての変な距離感がないことに驚く。他の地域に比べ、「政治=タブー」「選挙運動なんてうるさいだけ!」「政治家なんて……」。そんな感覚を持っている有権者が少ない。まるで、政治家や選挙といったものを、普通に、ただそこにあるものとして受け入れている

私が2007年4月、参議院選挙の補欠選挙の手伝いに行った時のことである。当時国会議員事務所でインターンをさせていただいていた関係で、陣営に数日間入っていた。率直に、他の場所での選挙に比べて、一般の有権者の反応が良いと感じた。ここでの一般というのは、自陣営の積極的な支持者・あるいは相手陣営の積極的な支持者以外の人という意味だ。

街頭で候補者などが演説している横で、ビラ配りをする場面を想像してほしい。道行く大体の有権者にはスルーされ、まれに無表情でビラを受け取ってくれる人がいる。なかにはただスルーするのでなく、選挙運動を迷惑そうに一瞥して通り過ぎる人もいる。しかし、積極的な支持者であれば、「応援しています!」などの激励の言葉と共にビラを受け取ってくれる。

沖縄では、まずスルーする人がそもそも少ない。あたかも「とりあえず選挙運動で配っているもので、政策の中身も知ることができるからもらってみよう。別にもらわない理由もない」といった雰囲気でみんなビラを受け取って行く。そしてなんと、その際に「ご苦労様」「お疲れ」といった声をかけてくれる人がいる。普通の有権者が、支持の意思表示である「応援しています」ではなく、普通にねぎらってくれるである。この衝撃を、選挙運動に携わったことのない人に伝えられるだろうか。なんというか、ビラ配りが日常にあることを受け入れている感じがするのである。

まず「選挙運動」で配られるビラをもらえば、政策や争点を知ることができるという発想に。そして、頑張って選挙運動をしている人たちへのねぎらいの言葉をかけるその行動に。主義主張関係なく、沖縄のそして自分の将来に関わる「政治」というものへの抵抗感が少ないことが、いちいち表れているように思う。

沖縄に一度でも行ったことがある人はわかると思うが、戦闘機やヘリコプターが頭上を大きな音を立てて通ることが日常茶飯事なのである。話題のオスプレイも肉眼ではっきり見える位置を飛ぶこともある。それだけ基地問題という政治上の大きな争点が、常に身近にあるということが、政治と人との関係に強く影響を及ぼすということでもある。沖縄は、日本の他のどの地域と比べても、やはり特殊だ。いくら沖縄の人に、選挙運動に対してあらかじめ距離を取り過ぎたりしない人が多いとはいえ、実際のところ、国政選挙の投票率は全国平均程度でしかない。身近に政治的なモチーフが溢れていることと、それらをテーマにした選挙運動が繰り広げられ、それを自然と受け入れることが、イコール投票に行くことはまた違うのだろう。

以上が、自分が沖縄の地において肌で感じた、沖縄県民の意識である。

選挙の街頭演説はうるさいし、ビラも好き勝手書きっぱなしなものも多く、もっとやり方があるだろうと、私ですら感じる今の日本の選挙運動。私も選挙の度に、もっと、有権者と候補者のコミュニケーションを増やし、候補者同士の政策論議を進めることはできないのかと頭を悩ませている。確かにスマートではない、このままでは上手くいきっこないとすら思える。しかし、だからといって、政治そのものを全部拒否するのは愚かなことではないだろうか。むしろ、沖縄人よろしく、タダで受け取れる情報はとりあえず受け取っておけばいいじゃん。これぐらいの意識の低さでもって、いまそこにある選挙・政治に触れてみる若者が日本中に増えればいいなと、沖縄での古い経験を思い返しながら思っています。

著者プロフィール

原田謙介
はらだ・けんすけ

NPO法人YouthCreate代表

NPO法人YouthCreate代表。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。地方議員と若者の交流会「VotersBar」の全国展開や、行政・企業とのコラボ企画、選挙時の投票率向上に向けた企画等を実施。大学3年時に20代の投票率向上を目指し「学生団体ivote」を設立。卒業後の2012年4月インターネット選挙運動解禁を目指し「OneVoiceCampaign」を立ち上げ、1年の活動を行い解禁実現。元内閣府子ども・若者育成支援推進点検・評価会議委員。EU評議会主催2014年World Forum for Democracy日本代表。

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