いや、もう、正直に言いますけどね、橋下・維新フィーバーで大阪が大揺れしていた時期「アヒャヒャ、大阪は政治ショーがカオスで面白いなぁ」と高みの見物を気取ってたわけですよ。それがアンタ、まさか東京がこんなことになるとは。二代続けて金銭スキャンダル辞任、挙句に石田純一さんまで出てきてカオスどころか毒の沼地ですよ。
だいたい石田純一さんはなんだったんでしょうね。なんかCMスポンサー契約の関係などもあるらしくて辞退なさいましたけども、スポンサー契約に逆らうと靴下すら買えなくなってしまうのですから芸能界とは政界と並んで恐ろしいものです。もし立候補&当選していれば、都の文化予算を円楽師匠が錦糸町のホテル代に使い、東京都の文化事業もゲスの極みになっていたのではないかと考えると、立候補辞退が残念でなりません。小池百合子候補は環境相時代にクールビズを推進すべく「ネクタイはずせ」と言い、石田純一さんはウルトラクールビズを推進すべく「靴下脱げ」と言い、ゲスの極み乙女は「ドレスを脱げ」と歌い上げる。みんなどんだけクールにビズしたいのか。
ゲスの極みなその歌に呼応したのか、都知事選に出馬して後藤以外後藤じゃない独自の戦いをなさっている後藤輝樹候補も、前回の千代田区議選で「ドレスを脱げ」を地で行く全裸ポスターを貼ってらっしゃいました。後藤候補、今回は軍服でポスター撮影し政見放送で下半身関連の発言を繰り返し音声消去されるといった程度の穏当な選挙戦を繰り広げているようですが、この流れから行くと「タマタマ」というニックネームで呼ぶほかありませんよね。
しかしまあ、政見放送においては「NHKをぶっ壊す!」とNHKで9回も叫んだ立花孝志候補のほうが刺激的だったように思います。そのうちニコ生に「立候補してみた」みたいなタグが登場して、どんどんカジュアルに暴れる時代がやってくるのではないでしょうかね。与沢翼さんが「秒速で1票獲得する」とブチ上げたり……石田純一さん、こんな泥沼から早々に撤退して正解だったんじゃないでしょうか。もっとも、「もはや身体検査(スキャンダルの有無などに関する素行調査)不要」というほどに過去が知られまくっているわけで、今さら何が出ても痛くも痒くもないという強みはあったと思いますけどね。ホントもう、候補者の身体検査って大事ですよ……他意はありませんけど。
話は変わって鳥越俊太郎候補の選挙戦なんですが、なにやら、応援演説の森進一さんだけが話して、鳥越候補ご自身は演説しない、みたいな一幕もあったとか。まあ時間の関係とか選挙戦略とかそれが俺の流儀(ダンディズム)とか色々あるとは思うんですけども、やはり自身の政策や信念を都民に直接伝えたほうが有権者に響くんじゃないでしょうかね。年齢面や体調面でも、炎天下の演説は体力的にキツイかもしれませんが、やらないと病み上がりじゃなくて本当に病気かよって言われちゃうよ(意味深)。
一方、都知事選に出馬なさったもう一人のジャーナリスト、上杉隆候補も魅力あふれる御仁です。「誰が報じてモォォ! オンナジヤ、オンナジヤ思テェェエ! 報道を…ウッ……ガエダイッ!」と溢れる情熱で、傭兵時代のテレンス・リーさんのように最前線を飛びまわり、交響曲FUKUSHIMAとでも呼ぶべき記事をリリースし続けた凄腕。「ホントに取材したのかそんな漁港ないぞ、あいつホラッチョなんじゃねーの」と心無い批判を浴びても「"いわき漁港"は、ありまぁす!」と、なんか色々と不安になる実験ノートだか取材メモだかを胸に戦い続けた雄姿は、我々のリテラシーを高めるのに一役買ってくれました。上杉さん、ありがとう。それこそ俺たちが一番知りたかったことだよ。都知事当選が叶ったら、オプ・エドの精神で頑張ってほしい。
とにかく東京都は、知事選という50億円の課金ガチャを何回も繰り返して、どんどんロクでもないキャラクターが増えていく煉獄に陥っているのですが、演説の場で鉢合わせした小池候補を「こんどデートしましょう」「携帯番号教えて」とガチ口説きし、「小池さんが知事になったあかつきには、私を副知事に!」と売り込んだマック赤坂候補だけは、どんどん都知事選演芸会における腕が円熟の境地に達しているな、と感じた次第であります。都内で出くわすと、みんな「出たァ!」とスマホ向けて撮影してて、レアポケモンが出現した時のような高揚感がある。って、本人も満更でもないし、この「ゲットだぜ!」はガチなのかもしれん。
で、こんだけ色々とありながら全く話題に出てこない増田寛也候補、岩手県知事も総務大臣も務め自公の推薦を得ている実力派でありながらも、「都知事選は"芸"が問われる恐ろしい世界だ」とご自身の消滅の危機を感じてらっしゃるのではないでしょうか。魔法使いユリーだって「マダム・スシ」とかいう小ネタを9年ぐらい前から仕込んでたし、鳥越候補にいたっては文春・新潮・週刊朝日を一気に動かすという、全盛期の落合選手を彷彿とさせる三冠王の風格ですよ。父と子と聖霊、仏・法・僧レベルの三位一体。真偽は分かりませんけど、少なくとも話題の中心である事は間違いない。増田候補も、もっと、清原和博や高知東生から元気の秘訣を分けてもらうなどして、我々を楽しませてくれないと。
いや、実際ですね、芸歴13年を誇る都知事芸人・石原慎太郎兄さんが、小池候補に関して「大年増の厚化粧がいるんだな、これが。これはね。困ったもんでね……」「やっぱり厚化粧の女に任せるわけにはいかないね、これは」と2回もネタふりしたんだから、ここでツッコミ入れてほしかった。……いやいやセンパイなに言うてはるんですか、そんなん言うたらあきませんわ、と。そしたら一気にスターダムにのし上がれたのに、絶好のツッコミの機会を逃しちゃったからその先の事務所からの独立問題および芸能界復帰のシナリオも露と消えましたわ。むしろ女性有権者を中心に魔法使いマダム・スシーへの同情票という形で流れてしまいそうです。それを指摘したのが名うての府知事芸人・橋下徹兄さん。やはり先輩芸人の技は流石です。出馬が噂されていた芸人さんは、宮崎県にもいらっしゃいましたけども、まあ何だか百鬼夜行そのまんまですね。
――と、ここまで都知事選を見て参りましたが、結論を言うと「都知事選? あんな"Endless Game"に付き合ってられるか。To be free!」と早々に不出馬を決断した桜井パパが一番正しかった。良い子は都知事とかいう「世界に一つだけの花」なんか目指しちゃいけません。都知事選は、無料で観られる上に握手も無料、CDを買わなくても投票できるという、どこぞの48よりよほどコスパに優れた演芸会(私は、まゆゆに2票・さや姉に1票入れました)なので、次の芸人さんたちがネタ仕込んで登場するのを、客席でおとなしく待っていましょう――大丈夫、どの芸人が知事になっても、4年後のオリンピックなんざ待たずに次の舞台が近々ありそうだから。
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※編集部注 この原稿は、岡田ぱみゅぱみゅのダークサイド(暗黒面)の原稿です。ライトサイド(光明面)の原稿はこちらからご覧いただけます。