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大宮エリー内閣総理大臣談話(いわゆる大宮談話)

  • 大宮エリー (作家、演出家、脚本家)
  • 2015年9月30日

「私が日本の首相で国民の前でスピーチするなら」というお題をいただきました。

私が首相だったら、という仮定のスピーチということで、以下を考えました。門外漢ですけれども、もしそういうことがあったらこんな風に話すと思います。


私は日本の代表として、日本をどうしていきたいかを述べたいと思います。どんな国であるべきかを。

まず日本人は、昔からどんな民族であったかというと、非常に知恵に優れた民族であったといいます。現代でも年配の方、いろいろな知恵袋、お持ちですよね。細やかな手仕事、技術は海外にも認められています。

知恵、に優れた民族。

そして、もうひとつ、昔から聖徳太子も言っておりました。それは「和を以て貴しとなす」ということです。

和、を重んじる民族。

これは、優柔不断とか、NOと言えないとか、非難されることもありますが、私はそうは思いません。

和、こそ、調和、そして平和、なのです。

平和であること。平和を愛し、それを守ること。それこそが、実は、戦いをするよりも強いことだと思うのです。

日本の歴史、世界の歴史。私たちは何のために学んできたのでしょうか。

それは、人類がいかに愚かな理由で愚かな戦争をしてきたか、それを客観的に観て、そして自分たちが将来そのようなことをしないための学問。それが歴史であると考えます。

戦争は何も生みません。

そればかりか、たくさんの哀しみを遺します。若者の未来、幸せを奪います。誰かの利権、欲望、傲慢のために、戦ってはいけない。

私は、日本の首相として思います。誰ひとり国のために命を落として欲しくないのです。国というものは、みなさんを守るためにあるのです。だから、国のために命を落とすなんてもってのほかです。私は全ての人に、自分の人生を、有意義に、楽しく幸せに全うして欲しい。

我々はひとりでは生きてはいけません。協力するために国があります。みんなが仲良くやっていくために、ルールがあります。国というものは本来そういうものなのです。

みんなが手をとりあって、いさかいごとにならないようにチームになる。

人々は、古の時代、稲作をするようになってムラを作り、そうしたムラが集まって、やがて今のようなクニになった。

日本の歴史を紐解いても、国という形になるまでに戦国時代がありました。そのあとも、海外の国と組んでほかの海外の国と戦い、原爆が落とされ、その結果我々は戦争に負けたのです。

原爆の恐ろしさを知る唯一の国、日本。

私たちが世界に訴えられること、訴えねばならないこと——。それは、二度と戦争してはいけないこと。しているところに「やめてもらいたい」と言うこと。日本という国は、そういう存在なのではないでしょうか。

我が国の基軸でもある、日本国憲法にはこう書いてあります。

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

素晴らしい宣言だと思います。敗戦国から生み出された、目の覚めるような宣言です。これを守り続ける強さを、我々は持ちたい。そのためには、知恵が必要になります。

あちらがこうしてきたら、こちらもこうする。子供のような喧嘩ではいけないのです。

あちらが強い武器を持ったから、こちらも強い武器を持つ。そうすることで身を守るというのは、キリがありません。

あちらが強い武器を持ったからって、私たちは持たない。毅然としている。そういう喧嘩に入らない。売られた喧嘩を買わない。

そうした気高く理性的なふるまいが、国際社会でも通用すると私は信じています。日本人には、そのための知恵が必要です。

一国の首相である私は船頭でしかありません。行く先を見失わないように、みんなの気持ちがぶれないように、ただ、平和という道を踏み外さないように見据えて舵をとることしかできません。それを私の有能なスタッフたちが、知恵で支えてくれます。

彼らは、この道しかない、という考えをしません。こうなりたい、ならば、どうしたらいいか。そう考えます。

無理だから、こうするしかない、ということも言いません。私のことを馬鹿にしません。そして平和を願う誰のことも、「理想論者」として、卑下などしません。

理想こそが、心。理想こそが、光。

私は強くそれを主張したい。こうありたい、そんな信念や希望がなくなってしまったら、未来はありません。

哲学者や、物理学者、心理学者、俳優、経済学者、企業のトップとしてビジネスに長けた方々、つまり、本来政治とは関わらなかった、学問に身を捧げたきた人たち、ものづくりに携わる人たち、自分のビジネスで経済を動かして来た人たちが今、国のために、アイデアを提案していることは、みなさんご存知でしょう。

みなさんには、今一度古代から日本人が尊んできたものが、知恵、そして、和であることを、確認していただきたい。そのふたつを日本人の誇りとして大切にしていただきたい。

二度と戦争を起こしてはいけません。何があっても。それは戦争で犠牲になった方々への誓いでもあります。

最後に、もう一度言います。

国は、みなさんを幸せにするためにあるのです。国のために自らの幸せを犠牲にしては、国がある意味がありません。

著者プロフィール

大宮エリー
おおみや・えりー

作家、演出家、脚本家

作家、演出家、脚本家。代表作に、読むと笑えてすっきりするエッセイ「生きるコント」、ドラマ「木下部長とボク」「ROOM OF KING」 毎週水曜日23時半~25時パーソナリティーとしてJ-WAVE「THE HANGOUT」で生放送。現在、みんなの悩みが解決する小説集「猫のマルモ」(小学館)と、世界のパワースポットを巡って描いたパワー画集「emotional journey」(FOIL) が絶賛発売中。

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