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  • Illustrated by しりあがり寿

平和(ひらかず)さん、70歳の談話

  • しりあがり寿 (漫画家)
  • 2015年8月14日

こんにちは、平和(ひらかず)いいます。おかげさまでこの8月15日に70歳になります。人間だったら古希ですよ。いやー、世界中ほかにも友達たくさんおんねんけど皆戦争になっちゃいましてな、ここまで長生きしてるの珍しいですわ。

わしがここまで元気できたんは、応援してくださる皆さんや世界の国々のおかげや、ほんま感謝してます。運もあると思いますけどな(笑)。

せやけどな、さすがによる年波で最近いろいろガタがきましてん、医者に診てもろうたんですけどな。なにやら「アンポカンレンホーアン」ちゅう薬だされましてな。「こんなん出ました」って皆に相談しましたら「そら脱法のヤバイ薬や、飲んだら死ぬで」みたいに言われましてな。「じゃあどないしたらええねん?」て訊いたら何やらいまいちはっきりせん。まぁとにかくこの機会にどうしたらワシが長生きするかキッチリ話し合ってほしいですわ。

自分でいうのもなんですがワシは大切ですぜー。21世紀は戦いの世紀になるかもしれん。三つの袋やないけど21世紀は「三つの戦い」や。

一つ目は「環境と人類」の戦いですな。今は学者によっては第六の大量絶滅期やそうやないですか。気候変動で変わる未来をどう生き抜くか。視界不良の曲がりくねった道をどう運転してゆくか。まさに人類ちゅーのはちゃんと自らをコントロールできる種なのか、試されるんちゃいますか?

その時絶対避けなければならんのが二つ目の戦い「武力による戦い」です。資源や領土のとりあいを話し合いでなく腕っぷしで解決するなんてこの21世紀にほんま恥ずかしいわ。今まで何度痛い目にあったんですか。先に武力使った国があったら世界中で「アホかー!」の大合唱、人類72億の屁でも嗅がせてやらなあかん。

三つめが一番難しいかもしれん「人の欲との戦い」やな。もっと欲しい、あの人より欲しい、みたいな欲が争いの元になってるんちゃいますか? 幸運にも豊かで大きな国に生まれる命もあれば小さな貧しい国に生まれる命もあります。環境や才能や資産に恵まれた人がこれ以上欲かいたらあかんでしょ。強いもんが弱いもんからとったらあかん。これから先、小さなパイを大勢で分け合うような時代になった時、いかにぶんどりあいにならんようなルールを作れるかが人類の進歩っちゅうやつや。

考えるに日本ちゅーのは環境問題に役立つ技術や、武力行使を抑える法や、欲ばらないことを良しとする文化をもってて、これからのキビシイ世界に貢献できるんちゃうかな。

何より世界に貢献できるのは日本の「島国根性」かもしれん。ええ意味で言ったら島国根性は狭い土地で生きて行くための知恵や。世界が狭くなった今、地球は宇宙にポツンと浮かんだチッポケな島ととらえなあかん。そんな時代をリードするんは日本が提唱する「ニュー島国根性」やで!!! 中身はようわからん、皆で考えてな(笑)

……よっこらせ、あーちょっとしゃべっただけでしんどいわ。年やなー、もう長くないわ。

いやいや生き延びる手はあんねん。他の国の平和と合体すりゃええんちゃうかな。とりあえずお隣の平和(ピンフ)くんやお向かいの平和(ピース)くんと一緒にならんと。争いも平和も相手がおるさかいな。そのためにワシ英会話でも習うことにするわ。

では今日はこのへんで。皆応援ありがとさん。

著者プロフィール

しりあがり寿
しりあがり・ことぶき

漫画家

1958年静岡市生まれ。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後キリンビール株式会社に入社し、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年単行本『エレキな春』で漫画家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表、新聞の風刺4コママンガから長編ストーリーマンガ、アンダーグラウンドマンガなど様々なジャンルで独自な活動を続ける一方、近年では映像、アートなどマンガ以外の多方面に創作の幅を広げている。

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