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【総選挙2014】日本記者クラブ主催「党首討論会」書き起こし その3(経済・財政・選挙戦略)

  • ポリタス編集部
  • 2014年12月3日

第二部では日本記者クラブの企画委員による質問に各党首が答えるかたちで党の意見を述べました。

ポリタスでは各党の主張が詰まったこの討論会を文字起こししました。

その2の書き起こしはこちらから。

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=h3in9AKCxxU
ニコニコ生放送:http://live.nicovideo.jp/watch/lv201490176
Ustream:http://www.ustream.tv/recorded/56011172

◆企画委員から質問 (経済・財政・選挙戦略)

川戸:それではこれから第二部に入ります。第二部では当クラブの企画委員が会場から寄せられました質問をもとに代表して各党首に質問をさせていただきます。質問に対する党首の皆さんのお答えは1分以内でまたお願いいたします。先ほどの第一部と同様に10秒前にランプが点滅いたしますので、そこで発言を締めくくるようにしてください。ただし質問によってはイエス・ノーでお答えいただくような場合もあるかと思います。限られた時間を有効に使うためですので、どうぞご理解いただきたいと思います。では代表質問者をご紹介いたします。党首の皆さんからご覧になって、左から実哲也さん、倉重篤郎さん、橋本五郎さん、そして星浩さんです。なお一部の党首の主張と討論では各党首、公平に時間配分をいたしましたけれども、こちらの方はニュース性を重視して質問をさせていただくことになりますので、同じ回数の質問が皆さん方にいくとは思いません。あらかじめその点ご了承願いたいと思います。それでは代表質問を橋本さんお願いいたします。

質問者:それからもうひとつお断りしなければならないのが、相当厳しく失礼な質問があるかもしれませんけれども、あらかじめご了解いただきたいと思います。まず最初は安倍さんについて。今回の解散はずっと増税先送りで、その解散というのがわかりにくい、と。大義なき解散だと、こういう批判がずっとつきまとっています。私は必ずしもそうは思わないんですけれども、しかしこれに対してちゃんと説明しなければいけないと。この2年間どうだったのか、今度は先送りするということを虚心に国民に聞いてみたいと、こういうことをおっしゃっているようですけれども、そんなうぶな殊勝な心がけとは到底思えないと。そうではなくて、ここで体制を立て直して、これからいろんなことをやらないといけないから、体制を立て直す。そのためには今が一番勝てる時だと、そう思ったに違いないのであって、思わなければ、思わないほうがおかしいと思うのですけれども、そのところの正直な気持ちをこの場ではっきりと言ってほしいと。そのほうが非常にわかりやすいってことなんですよ。変に曖昧に言っているとね、かえって何のための解散か、と言われるんですよね。いかがですか。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

安倍:正直に申し上げます。18カ月間、消費税の引き上げを延期する。これはもう、来年の10月で消費税を引き上げるということで走っていましたから、かなりのエネルギーを必要とするものであります。党内においても、ちゃんと上げるべきだというのは、税の専門家はご承知のようにみんなそうです。そして、例えば新聞社で経済部の皆さんもだいたいそうだと思いますね。役所でも、そういう役所もございます。そのなかでこれを変えるというのはそう簡単なことではありません。やはり国民の皆さんの声がなければ、その変更はできないわけであります。と当時に、やっぱり税における重大な変更というのはこれは民主主義の基本なんだろう。谷垣総裁もですね、野党時代、そこで野田、当時の総理を、マニフェストに書いていない消費税の引き上げを行うんだったら解散すべきだ、とこう言ってきたわけでありました。アメリカ独立戦争の大義も、代表なくして課税なしでありますから、われわれはその考え方にのっとって解散を行ったわけであります。

質問者:という具合に考えているわりには、今度の選挙で一体何議席を獲得目標なのかと。それがまた公明党と合わせて過半数なんて、なんという志のないことを言っているのかな、と意外に思う。そんなことじゃ、これからいろんなことができないんじゃないですか。その点どうですか。

安倍:はい。選挙というのは常に命がけの戦いでありまして思い通りにはなりません。慢心したほうが必ず負けるわけでありますから。まずは、衆議院の選挙は、基本的には橋本さんもご承知のように、政権選択の選挙であります。どちらが政権をとるか、それは過半数を制したほうであります。われわれは自民党、公明党、協力して戦っているわけでありますから、当然目標は過半数とするべきだろうと。こう考えたわけであります。もちろん、ただますます、ベン図ですから多ければ多いほど、みんないいと思っておりますが、目標はまずそこに設定しなければですね、私はおごりが出るんだろうと思ってます。もちろん自由民主党の党首でありますから、全員の当選を目指していくのは、またその責任があることも当然なんだろうと。それを目指して頑張っていきたいと思っています。

質問者:海江田さんにお伺いします。今の安倍総理の話にもつながるのですが、今度の総選挙、この間政権選択選挙が続いてまいりました、2009年、2012年と。しかし今回の民主党の候補者擁立の数を見ますと、180人そこそこ。とても政権交代を挑むという体制にはありません。これはやはりこの2年間ですね、何をやってきたんだということになりまして、つまり民主党は政権交代が可能な政党を目指すんだということをずっと掲げてきたわけで、その目標を達成するどころか、到底及ばないという体制づくりの手抜かり、このへんの責任の重さについてはどうお考えですか?


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

海江田:実は今日、こちらに来るまでも一人でも多く候補者をたてようということで準備をしてきまして今、178という数字があります。そこよりさらに積み上がりはいたします。ただ残念ながら、民主党単独だけで過半数にはなりません。それは実は、私たちはたった57議席に減ってしまったわけです。300人以上いたのが……。それはどうして、そういうことになったのか。もちろん民主党の3年3カ月の政権運営の反省も必要であります。それもしました。しかしそれだけではありませんで、やっぱり2年前の総選挙というのは野党が乱立をしました。今日はこれで8党政党がありますけれども、当時は野党だけで8党から9党ありました。ですからこういうことではいけないということで、私が代表に就任しましてから、かなり早い段階からやはり候補者の調整といいますかね、これはやらなければいけないということで、それは準備はしてきたんです。もちろんまだ、選挙は具体的な日付が入ってきませんから、それは表には出せませんでした。準備をしてきましてそして今、民主党と一番その次に大きい維新の党、それから社民党さんなんかとも住み分けはしています。生活の党ともしています。そういう勢力を全部集めて、実は過半数を超えるような、自民党の過半数割れをなんとしても実現するという思いは今もございます。

質問者:その維新の党なんですけれども、江田さんね。前に維新がこれも共同代表だったんですね、橋下さんと、石原さん。この場で私も質問したんですけれども、こういう遠距離恋愛というのは実らないのではないかと。夫婦の間でさえ難しいのに。案の定というか、そういう具合になった。今度の場合も唯一このお二人がね、この表紙に出ている。これは相当無理があるんではないかっていうね。また同じことの繰り返しにならないか。実際、民主党、協力するのか、それは嫌だという、共同代表同士で対立していると。これを克服しないことには、これは将来がひらけないのではないかという老婆心ながら心配もするのですが、いかがですか。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

江田:ありがとうございます。全く心配ありません、国民にとって大事なことは維新がどういう(不明瞭)な政策を持ち、そして一体的に行動をしていくかってことだと思いますね。そういう意味では橋下さんと私っていうのは、これは私はみんなの党の幹事長時代からずっと合流話があって、2年以上付き合ってきましたしね、今も毎日携帯電話で頻繁に連絡をとって、かつ9月、結党した時に、あれだけ「違う、違う」と言われた集団的自衛権の見解もね、自衛権の再定義ということでちゃんと統一計画を出しました。原発もですね、現状では再稼働反対。さらには将来ね、市場メカニズムで自然に原発をゼロにしていく。さらには消費増税についてはこれは凍結だ、と言っていち早くこの国会に凍結案も出したんですね。政策はしっかりとですね、珍しいんですよ、選挙もないのに9月にちゃんと当面の課題全部統一見解を出しましたし、65項目にわたって基本政策を一致させましたね。だから国民にとって、大事なことはそういうことなんです。民間会社だって、橋本さん(質問者)、銀行の名前を見てください。損保ジャパンも維新の党のように統一したじゃないですか。これが象徴的ですね。

質問者:いやいや、民主党の選挙協力する場合でもそこの違いはないんですか?

江田:それは誤解なんですよ、メディアの。

質問者:誤解ですか。

江田:要は私も橋下さんもですね、維新は維新で戦うと、独自に。それで選挙協力とか、推薦しあったりしないということで一致しているんですよ。ただこれは政治の世界ですからね、無理やりバッティングをさせて、与党を利することはしないということを決めたわけ、そういう意味では民主党さんとも自然とですね、話を公認作業のなかで、住み分けって言葉は私は嫌いなんですけれども、自然にやって、結果的に住み分けられるところは住み分けたし、だからバッティングも辞さずですよ。だから20を超えるバッティングはあるんです。ですから誤解なきよう言いますけど、今回民主党さんと連携して戦うということはないんですよ。これは完全に橋下江田で一致しているんです。それもご心配なくと申し上げたいと思います。

質問者:公明党の山口さんにお聞きします。山口さんがおっしゃるね、公明党とは下駄の鼻緒であると、連立与党の。あれは非常に私よくわかりやすいと思うんですね。踏んでもついてくる下駄の雪ではなくて、下駄の鼻緒だと。要するに、むしろ下駄を動かしている頭脳であるという話でございますけれども、実は今ね、公明党の存在は下駄の鼻緒を超えた存在になっているんじゃないかと私は思っているんですね。と申しますのは今回の選挙の時に公明党の票がなければ自民党議員であがってこれるのは一体何人いるのか、といいますか、相当な方々が公明票を頼っておられる。しかもですね、今回の選挙の結果はですね、公明党はたぶん堅調でありましょうけども、自民党は減らす可能性があるという全体の見方であります。ますます公明党は連立与党のなかで大きな責任を持つ非常に力強い勢力になっていくと思います。そのなかで、どんな鼻緒に、これからなろうとされているのか、かたい鼻緒なのか、ゆるい鼻緒なのかですね、それとも別のものなのか、これから安倍さんと4年間たぶんまた連立与党として付き合っていかれると思います。憲法の問題もある、その他問題もある。そのなかでどういう志としてやっていかれるのかお聞かせください。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

山口:公明党と自民党の連立政権の歴史はかなり長くなりました。1993年以来の連立時代を迎えて、一番長い経験であります。野党時代も共有しました。このなかでこの公明党の持つ特徴といいますか持ち味、これが自民党のものとよく調和をして、いろいろな政治的な良い効果を生んでいると思いますし、またそうしていかなければならないと思います。その第一は公明党が国民のニーズを的確に敏感につかんで反映していく、そういう特徴をひとつ持っているということであります。今回の小笠原のサンゴ密猟漁船の素早い対応策などはそれが発揮した例だと思います。それから、意見の異なるテーマについても粘り強い対話を重ねて合意を作りだす、そういう経験と知恵があるということであります。それと国民の皆さんの望む、いわば民意の重心をにらみながらバランスのとれた合意をつくる、こういったバランサーとしての役割もあると思います。もちろんそれは選挙を通じて協力、ここもそうした眼鏡にかなうかどうかということで、見極めていくという対応をとるわけでありますが、今後国民の期待に応えられる連立の運営につとめていきたいと思っているわけです。

質問者:志位さんにお伺いしたいと思います。今度の選挙を共産党は、自共対決の選挙だと、こういう具合ですね、掲げていますね。ただしかし、300近い自民党と、10人満たない共産党で自共対決かなという疑問もあります。そして一貫して共産党はぶれていないと、同じことを主張し続けていると。自分たちは正しいことを主張していると、こういう具合に思われているでしょう。だけどどうして、そんな数が増えないのでしょうか。そこが非常に私は不思議なんですけど、そんなに正しかったら、それはこれだけ成熟した日本国民なのだから、もっと共産党に投票してもいいんではないかなぁと、そう思うのですけれども、余計な心配なのでしょうか。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

志位:私たちはもちろん、自民党と力の差は大きくあると思います。しかし日本の政治の基本問題では、正面から対決していると、この対決軸ははっきりしていると思います。今日、私は日本の政治の5つの転換と申しました。私たちは消費税10%は先送り実施ではなく、中止にと言っております。安倍さんのほうは2017年には景気がどうあろうと10%にすると。この対決が問われます。アベノミクスについては、私たちは格差拡大と景気悪化を招いたと、チェンジが必要だと言っておりますが、安倍さんは道半ばだからこの道しかないと。それから集団的自衛権の問題でも、私たちは海外で戦争をする国づくりは反対ですと、この問題でも真正面から対決しています。原発の問題でも沖縄の問題でもそうです。ですからこの対決軸が鮮明で、自共対決で戦っていきたい。そして最後のご質問ですけどもね、私たち昨年の都議選、参院選挙において躍進をさせていただきました。そしてこの流れがですね、その後もずっと広がってきているという手応えを感じております。ようやくですね、私どもの主張が多くの国民の皆さんの気持ちと響きあって躍進の時代が始まったのかなと思いますので、ぜひ今度の選挙ではですね、この一過性の流れにしないで本格的な躍進の流れにしていきたいと決意しているところでございます。

質問者:平沼さんにお伺いします。公明党の候補に対抗して、次世代の候補を擁立する小選挙区がいくつか出ております。先ほど安倍総理と山口代表との関係、自公連立の議論がありましたが次世代の党はこの自民党と公明党と連立しているのはよくないな、と思っていらっしゃるのか、それをさらに言えば場合によっては次の選挙の後ですね、公明党に代わって自民党と連立したいなという気持ちもあるのか、そのへんいかがでしょうか。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

平沼:今、2名の公認候補が自公のなかで自民党が候補者を出していない選挙区にチャレンジをしているわけでございまして、そういう見方があるかと思います。しかしわれわれとしては、政党ですからなるべく議席を獲得しなければいけない。そうなるとですね、自公でやっていて、自民党の公認候補が出ていない公明党のところはやはり投票する自民党サイドにもですね、支援者でですね、いろいろ問題があると思うんです。ですから、そういった票を吸収しながらそしてわれわれ、次世代の党のですね、やっぱり理念のなかで日本の政治を正していかなければならないと。こういうことでですね、そういう現象が起こっていることは事実です。もうひとつ、自次連立というようなお話がありました。私は冒頭ボードを掲げさせていただきましたけれども、やはり是は是、非は非ということでありまして連立を考えるということじゃなくて、やはり同じ保守同士として協調できるところは協調していきたい、という基本的な考えであります。

質問者:生活の小沢さんにお聞きいたします。小沢さんが、今の安倍一強体制についてですね、新55年体制というおっしゃり方をされていますよね。非常に私、言い得て妙で、さすがネーミングもうまい小沢さんだな、と感心しているんですが、ただ振り返ってみますと、旧55年体制を倒すべく20数年前に政治運動を起こして、20年間たった今ですよ、その小沢さんがもっとも小さな政党の党首として、一番左に座っておられる。その間に小沢さんのこの政治活動は、この20数年間は一体何だったのか、ということを非常に感じます、率直に言ってね。そこでお聞きするのですが、その間小沢さんとして何が間違って反省があるのか、ないのか。あればひとつ言っていただきたい。それから新55年体制に今後どうやって対決していくのか、その2点をお聞かせ下さい。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

小沢:新55年体制ということから申し上げますと、このままで推移するとそういうことになりかねないということを申し上げていることでございます。それから、私の今までの歩みについて、二度、自民党政権でない、非自民党の政権の樹立に成功いたしました。私の政治家としての目標、願いは日本に議会制民主主義を確立するということが私の政治家の生涯の願いであり、夢であります。したがいまして現時点において私は小さな政党になっておりますので、影響力は少ないと思うわけですけれども、しかし私の夢、目標、理想は変わりません。やはり日本でしっかりした、二大政党という2つの政党の必要はないですけれども、二大政党を中心とした議会制民主主義、そしてお互いに与党野党、切磋琢磨して政治を行う、それが私は民主主義の本来のあるべき姿だと思いまして、私が国会議員であるかぎりはその夢を追いたいと思います。

質問者:反省はないんですか? 反省はありませんか?

小沢:人生ですから、反省はいろいろあります。ありますけれども、政治家としての筋道、道のりに反省はありません。

質問者:社民党の吉田さんにお伺いします。どうも民主党と共産党のはざまにですね、埋没しかねない状況であります。非常に小政党ですのであまり網羅的な主張をされても、アピールする力は弱いと思いますので、ぜひこれだけは訴えたいということがあれば、おっしゃっていただきたいのと、とりわけ脱原発ですね。吉田さんの地元の九州でも社民党の主張とは反対に地元自治体から原発の再稼働の容認という動きが出ておりますが、こうした動きについてはどのようにご覧なっているんですか。


photo:【衆議院選挙2014】党首討論会(日本記者クラブ)より

吉田:今回の衆議院選挙では、大きく4点の政策課題を掲げました。アベノミクスの問題点の指摘をして、やはり根本的な転換を求める、格差の是正をする、それから集団的自衛権の行使容認に反対をして、平和憲法をしっかり守っていくこと、それから脱原発、TPP反対ということで、今回そういう意味ではかなりポイントを絞り込んで訴えるようにいたしました。特に先般、土井たか子党首が亡くなりましたけれども、土井さんが残された言葉のなかにこういう一節がございました。「日本国憲法が貫く平和主義は日本国民の総意であり、希望である」、土井たか子名誉党首の志をしっかり引き継いで、今般の衆議院選挙、そういう意味でしっかり社民党の存在意義を、平和、自由、平等、共生、社会民主主義を訴える日本では唯一の政党でありますから、そういうところ、本当に国民の皆さんに誠心誠意訴えていきたいと考えております。それから脱原発に向けて、自治体からのそういう声も出ているわけでありますけれども、実際のそれぞれ議員の構成などもありまして、どうしても原発をすすめたい方々の議員の比率が高いところはそういうことで多数決で、意見書などは多数決でするところと、全会一致でするところと、いろいろな取り扱いが違うところがありまして、そういうところの取り扱いの結果が出たのではないかと思っています。ありがとうございました。

質問者:次は、経済政策についてお伺いしたいと思います。まず安倍さんにお伺いします。アベノミクスについてはですね、先ほど総理が言われてましたように、雇用が増えたり、賃金が少しずつ上がり始めたという面はあると思うのですが、一方で恩恵を全然感じないというという方々もかなり多いということなんですけども、それはどこかにやはり安倍さんのなかで誤算があったかどうか、特にやっぱり、消費税をやっぱり上げなけなきゃよかったのかな、というような気持ちが正直おありかどうかっていうことをちょっとお伺いしたいなと。それともうひとつ、それは過去の話ですが、これからどうするのかということですけれども、これも第三の矢がなかなかうまく放たれてないという話もかなりあります。安倍総理はまさに、その既得権益の岩盤を崩していくんだ、ということを国際会議でも言われてますけれども、今じゃあ、この既得権益と戦っているんだと、ここを崩せば前に進むんだ、っていうのがあれば、話をしていただければと思います。

安倍:まずですね、いわゆるアベノミクスというのは企業の生産性そして競争力を高め、収益を改善していく。企業が利益をあげていくなかにおいて、雇用は改善をし、そして賃金があがっていき、そして消費が拡大し、景気が回復していく。この好循環を回してくなかにおいて、しっかりとデフレから脱却をし、経済を成長させ、国民生活を豊かにするという、これがアベノミクスであります。いってみれば、簡単に言えば雇用を増やし、給料を増やしていくということであります。これについては、先ほど申し上げたように成功しているわけでありまして、2%というデフレから脱却するための物価安定目標を作り、3本の矢を放ち、この2%を超えることができました。確かに先ほど申し上げましたように消費税の引き上げ分を超えることはできなかったんですが、この政策を進めていく一番最初の段階でわれわれは物価があがっていくよりも少し賃金が上がっていくのは遅れますよ、と。これは賃上げのチャンスは1回しか無いからであります。という意味においては、われわれは計画通り進んでおりますが、ただこれをまだまだ実感していないという方がたくさんいらっしゃることは十分によく承知をしております。ですから、中小小規模事業者の皆さん、地域の皆さんにこれがしっかりと拡大していくように、届けることができるようにこの政策を進め、さらに様々な支援を行っていきたい。そして、三本目の矢ですが、すいません、話長くなってしまって。そこでですが、三本目の矢でありますが、電力については、2年後に完全に生産も小売も自由化されます。60年できなかったことをやった、と思ってます。また医療についてはですね、患者さんが申し出をすれば最先端の医療を保険を使って受けることができるようになります。ここにも大きな穴が開いた。ただこのドリルとして、岩盤に穴を開けていきたいんですが、団体とガチンコでやるという、そして正面から突破して、相手を倒すという小泉さん方式ではなくて、説得をして了解をいただきながらしっかりと前に進めていきたい、こう思っています。

質問者:それから、3本の矢のうちのひとつの金融政策ですね、これはもちろん日銀の管轄の話ですけれども、金融緩和を進めた結果かなり円安が進んできていると。円安によって物価がちょっと上がっているという部分もあると思うんですけども、その安倍さんの考えのなかでですね、ここはだけど、そうはいってもまだ2%物価目標は達成していないので、これは必要ならもっと緩和をして欲しいということなのか、やはりここまで円安が進むとそこは慎重に考えて欲しいということなのか、そのへんはいかがでしょうか。

安倍:私が総裁選挙に出て、ここでお話をしたとき、大胆な金融緩和によってデフレから脱却をするというようなお話をしました。その際ですね、反対論ばかりでしたね。金融緩和したって、デフレから脱却できないという声がずいぶんありました。そして円安にもならない、という声がありました。国債も暴落する、はたしてそうなったか。それは全くこれはなっていないわけでありまして、実際にはデフレから今、デフレではないという状況をつくることができました。ただ為替によって、円安によって大変な方々に対してましては、中小小規模事業者の方々の皆さんには、金融等の支援はちゃんと行っていきますが、行き過ぎた円高で根っこから仕事がなくなっていたんです。例えば東芝は4つの工場を閉鎖した。どんどん海外に企業は生産現場を移した。下請けはついていけないから、工場は閉鎖され、連鎖倒産という言葉があった、それを私たちは変えた。その東芝が今度3000億円以上の投資を今度して、三重に大きな工場をつくる。昨年よりも今年、国内への投資が、計画が12%以上増えています。この政策をしっかりと前に進めていくことは間違っていないと、こう確信をしております。倒産件数、これ民主党政権時代よりも2割減っています。24年ぶりの低水準であるということもお話をさせていただきたいというふうに思います。

質問者:安倍さん、ひとつ確認ですが17年の4月からの消費増税、これは景気条項がないということですが、仮にですね、いくつかの番組でも説明されていましたけど、リーマンショッククラスの不況が訪れた場合はもしかすると、再検討するかもしれないという発言をされていますけれども、それに関連して、もしそうなった場合の政治責任というのはどういうふうに考えている、その2点について確認させて下さい。

安倍:リーマンショッククラスというのは、これは日本で起こることではなくて、世界的な出来事のなかで起こるわけでありますから、国家的に対応するのは当たり前のことでありまして、政治責任うんぬんという話とは全く、私はよく理解できないのですが、それはどういうことなんですか。

質問者:上げられなくなった場合ですね、結果として。

安倍:これはですね、そもそもリーマンショッククラスの経済の収縮が起これば対応するのはそれは常識です。これは経済の常識であって、今、私が申し上げているのは、今回のような景気判断条項を使うようなかたちでの景気判断は行わないということであります。いわば、リーマンショックというのは経済における天変地異ですね。これは全く別の話でありますから、そこのところは常識にのっとって考えていただきたいというふうに思います。

質問者:さらに仮の話で、今回のように二期連続のマイナス成長、そのような場合はこの再検討に値するのでしょうか。

安倍:こういうかたちでのですね、いわばマイナス成長ということにはしませんし、そういう状況を作っていく。そしていわば、今回のような二期連続だからする、というそういうかたちでの景気判断はしない、それは先ほど申し上げたとおりであります。しかし、これは考えていただきたいと思うのですが、しっかりと経済を成長させていく、賃金を上げていく、平成29年4月にはそういう状況をつくるということができませんよ、ということで日本は信用を得ることができるんですか。誰が日本に投資しますか。誰が日本の国債を買うんですか。ここは国家がちゃんと意志を示すのが当たり前じゃありませんか。そしてそれに向かって経済を進めていく、経済政策を進めていくというには当然私の責任ですし、当たり前のことはですね、ちゃんとやっていかなければいけませんし、そこから逃げては私はダメだと思います。

質問者:ちょっと安倍さんの独壇場になっちゃうので、ちょっと海江田さんにもひとつ質問をしたいんですよね。今回、非常に残念なことがひとつあるんですね。皆さん、揃って再増税といいますか、法律通り増税することについて、反対だっていうわけですよね。再増税しないと。しかし世の中見ますとですね、やはり官邸のヒアリングを見ても、経済界の人に聞いても少なくとも5割以上の方でやはり法律通り、子々孫々のために再増税すべきだったんじゃないかという声があった。その受け皿がひとつもない、今回の選挙には。それができる党の可能性があったのは、まさに政党を分断してまでも、再増税、消費税増税の道筋をつけた海江田民主党しかなかったんじゃないか、と率直に言って思いますよ。その声に全く応えていない残念さ、これについて先ほどご説明がありましたけれども、何とかなりませんか、これ。その人たちの受け皿をつくる。海江田B党かなんかつくって何かありませんでしょうか。

海江田:倉重さんの質問でありますけれども、あの法律はこれまでの消費税の増税法とは違うんですよ。これは一挙に5%から8%に、そして8%から10%という2つの、二段階の消費税の増税を決めたと。しかも5%の出発点から比べると10%までは倍になるわけですよ、これは。それだけのこの消費税の中身ですから、そういう法案ですから、その法案には今倉重さんがおっしゃいました、10%と書いてあるけれどもそれは景気条項というものをわざわざこれも法案のなかに、付則の18条ということで書いたんですよ。だから、これはやっぱり私たちもこの5%から8%、8%から10%上げるところで、当然やっぱり景気のことをよく勘案をしなければ、しかも前の消費税の上げる時と違って、やっぱりデフレの状況でしたから、これはね。デフレの状況のなかで消費税を上げるということは、それなりの難しさがあるわけですよ。そういうなかで経済状況も入れたわけで、景気条項を入れたわけですから、そこはその景気条項にのっとってしっかり判断をしようということで。ただそれは政権を私たちは失ってしまいましたから、そこは本当は安倍さんにもっとしっかりやってもらってね、しっかりやってもらって、ちゃんと上げられる環境をつくってもらいたかったんですよ、私たちからすれば。だからあともうひとつ、やっぱり上げられる環境のなかで国民の大きな声があるのは定数削減、これはなんでやらないんだ、という話。それから、消費税の使い道の話、この問題はどうなっているんだっていう声が非常にありましたから。

質問者:その点について、またあとでお伺いするつもりですけども、ただそれにしても、民主党はあれだけの犠牲を払ってまで消費税を上げなければいけないと、次の世代のためには、と言うならば、もっとこれ踏みこたえて欲しかったという人はずいぶんいると思いますよ。違いますか?

海江田:私がいろんなところをまわっておりまして、聞こえる声はそういう声はほとんどありません。これは。

質問者:ありませんか。

海江田:それからあともうひとつですね、今度は党内でもしっかり議論をしました。それはやっぱり本当にですね、犠牲をはらって、そして党が半分になって選挙をやるようなかたちになりましたから、その時の方たちともよく話をして、そしてみんながやっぱりこれは全く全員の一致でとにかくやはり、来年の10月は無理だと。ここは送るしかないという結論に達したわけです。ただ私たちは財政の健全化の路線というのはしっかり守らなければいけませんから、まさにこれからの予算がどういうかたちで組まれるのかね、消費税の先送りにした、景気が悪いからといって、また大型の補正予算を組んで、そしてその中身が従来型の公共事業であってはいけないということは同時に主張しています。

質問者:はい、ちょっとその財政再建の話に移りますけど、その前に一点、海江田さんにお伺いしたいのですが、先ほど安倍さんに金融政策の話を伺いましたけれども、民主党も公約のなかで金融政策の話に言及されていますけれども、あれを見ると、要は金融政策を5年でやめたほうがいいよと。円安になっちゃったし、副作用のほうが大きいので、金融緩和をやめてくれということなのか、そのへんがどうなのでしょうか。非常に書いてあることが曖昧なので、よくわかりにくいのですが。

海江田:私たちの表現は柔軟な金融政策ということを謳ってます。実は私たちの政権の時からも金融の緩和ということは主張してきたわけです。私も内閣府の大臣をやりました。前原さんなどもそれは日銀との対話ということで、金融緩和をやりました。しかし、それはですねモデラートなやっぱり金融緩和ということで、異次元な金融緩和をですね、4月に黒田総裁になって異次元な金融緩和ね、確かに異次元でした、これまでと比べると。しかしその時、黒田さんが何とおっしゃったかというと、これは必要にして十分な金融緩和だということをおっしゃった。しかも、戦力の逐次投入は行わないと、小出しにしませんよ、と言ったわけですね。そこから去年の4月からまた今年の10月30日まで、31日ですかね。10月の末までの間にまた同じことをやったわけですよ。だから、それは同じことをやるんなら前回がなんで効き目がなかったのかということを、やっぱりきちっと考えてもらわなきゃいけない。それは実は、先ほど安倍総理は私たちの時代に全部企業が逃げていったかのような感の話をしてますけれども、それは実は安倍総理の第一次の政権の時もそうだし、麻生総理の時もそうだし、全部そのなかの円高のなかで企業が海外逃げていってしまって、実は円安によって国内の生産が一気に回復をするという構造にもうなっていないですよ、これは。ですからそのことを考えなければいけないということです。

質問者:財政再建の話に入りたいんですが、皆さん各党たぶんだいたい一緒だと思うんですけども、公約を見さしていただくと、非常にありがたい話というんですかね、悪く言うと飴といいますかお金が掛かるという話がかなりたくさん約束されていると。一方で、こういうところはやっぱり我慢してほしい、と。こういうところについてはですね、もうちょっと先行きのことを考えると負担して欲しいとかですね、そういう部分が全くないような印象があります。一方で2020年にこのプライマリーバランスを黒字化するというのは、わりと多くの党が言っておられるのですけれども、実際じゃあ一体どうやって、そっちのほうに持っていくのか。歳出をこういうところは切っていくのか、あるいはやっぱり増税が必要なんだということなのか、そのへんが非常に曖昧だなという感じがするのですが、全ての皆さんにお伺いするわけにはいかないんで、まずそのへんについては安倍さんにお伺いしたいんですが、そのときに一点、先ほどの金融政策とも絡みますが逆にそのへんがはっきりしないとですね、どうもこれは国債発行がどんどん増えていくけれども、これは結局日銀が引き受けているんじゃないかというふうに思われる心配も出てくるんじゃないかと思うのですが、そこも含めてですね、実際に2020年プライマリーバランスを達成する、どういうかたちで、痛みも含めてですね、どういうかたちで求めていくのかそのへんの話をしていただければと思います。

安倍:まず一点、訂正させていただきたいのですが、海江田さんが第一次安倍政権で円高で企業が逃げた、第一次安倍政権の時は円は120円でありますから、円高ではないということは訂正させていただきたいと思いますし、民主党政権時代に、海外への投資は2割増えていますから、これは事実としてある。海外への投資が増えたのですから、つまり日本から出て行ったのが倍になった、2割ではなくて倍になったということは申し上げておきたいと思います。その上で、お答えをさせていただきたいと思いますが、まず金融政策についてありますが、これは決して財政ファイナンスではなくて、日本銀行は明確な目標を立てています。それは2%の物価安定目標を実現をするという中において、しっかりと、いわば金融政策を行っていると。金融政策の中身については、私は黒田総裁、日本銀行にお任せをし、任せるべきであるのは当然のことであります。ただ、2%の目標はしっかりと達成してくださいね、ということでございます。そこで、大切なことはプライマリーバランス、2020年でありますが、これからしっかりとデフレから脱却をする、デフレから脱却をしなければ税収が増えませんから、デフレから脱却する。今、幸いにデフレではないという状況を作りました。今年、そして昨年、一昨年よりも、去年今年と税収は順調に増えてきていますし、プライマリーバランスについてもですね、これは昨年がマイナス6.2だったものが、今年は5.1に改善をしているわけでございます。さらには歳出もしっかり見直しをしながら、平成29年の4月から消費税を上げるということを私たちは決めていますから、それを前提に20年、プライマリー、PBの黒字化に目指して、来年度夏までに策定をしていくという考えであります。まあそこで、例えば民主党の場合は、いつ消費税を引き上げるということを決めておりませんから、一体ではPBの黒字はどうなんだろうと、こんなにも疑問に思っています。

質問者:本当は各党に伺いたいんですけど、この財政再建の問題、江田さんにお伺いしたいと思います。もちろん、行革の話をされて、かなりこれで5兆円と大きな単位出るという話なのですけども、果たしてそれで十分なのか、実際はもうちょっと、この例えば社会保障の改革とかですね、かなりある意味では痛みも伴うようなことも必要とお考えなのか。その場合、こういうことをするのだ、ということがあればお願いします。

江田:財政再建はですね、われわれも重視していますね。ただそれが達成されるのは、経済成長と、増税と、歳出削減、これ三位一体なんですよ、ベストミックスなんですよね。では増税はどうか、われわれも社会保障の財源等々で将来の増税は否定しません。しかしどうですか、この橋本政権で3(%)から5(%)に上げましたよね。当時57、58兆あった税収はね、もう2000年代後半には42兆円まで落ち込んだわけです。ですからデフレを脱却してね、景気をしっかりとね、増税に耐える体力にしないと逆に増税して景気が悪化して税収が落ちるわけですから、そこはしっかり増税のタイミングを国家経営の一環としてみなきゃいけないということですね。それから歳出削減もわれわれ徹底的にやりますよ、さっき言ったように。例えば公共事業第二の矢ですね、10兆円になっているんですよ。平年度5兆円だったやつがですね、2兆、3兆、4兆余らしているわけですから、5兆円、明日からすぐ出ますよ。国家公務員と地方公務員の人件費25兆円だってね、国民のみなさんがこれだけ苦しんでいるのですから、元々公務員の給料は高いし、共済年金は厚生年金の1.5倍だし、この際20%ぐらいカットしましょうよ。そうすると5兆円出てくる、明日から10兆円出てくるですけど。問題はですね、やはり経済成長は財政再建のエンジンだということですね。私は金の卵を産むガチョウと言っているんですけど、あの小泉政権を見てください。2004年から7年にですね、プライマリーバランスは28兆から6兆に減ったんですよ。増税してませんよ。あれは名目1.1%成長だったんですね。ですから、われわれが言っているのは、増税の前にですね、とにかく経済成長を巡航速度というか、景気回復を本格的に軌道に乗せていく、これが大事なんですね。しかしですね、安倍政権はですね、何をやったかと言うとですね、アベノミクスというですね、アクセルを踏んでいるときに、わざわざ増税というブレーキを踏んじゃったんです。暖房をかけているときに冷房をかけちゃった。だから支離滅裂なので、4月以降もどんどん消費が落ちているんですね。だからそういうまずは景気回復最優先で経済成長のエンジンをふかしましょうというのがわれわれの考え方です。

(「党首討論会」書き起こし その4に続く)

著者プロフィール

ポリタス編集部
ぽりたすへんしゅうぶ

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