Photo by Jan Bommes(CC BY 2.0)
2年前に第二次安倍政権が発足して以来、驚かされる事ばかりだ。論点は沢山あるが、ここでは、特定秘密保護法の制定と集団的自衛権の解釈改憲に絞って、安倍政権の独裁的体質とそれを放任する私たちの愚民化を指摘しておきたい。
特定秘密保護法
まず、国家には高度な秘密があることは否定できない。例えばTPP交渉に臨むわが国の代表がどの線で妥協してもよいという内意を官邸から与えられているか……が交渉前に相手国に漏れていたのでは交渉にならない。だから、一般論として、国家が特定の秘密を指定しそれを厳罰によって守ろうとすることに正当性はある。
しかし同時に、例の沖縄密約のように、権力者が自分にとって不都合な真実を主権者国民大衆の目から隠そうとするのも自然の心情である。だからこそ、経験豊富なアメリカでは、行政府による不当な秘匿が疑われた場合には、司法の独立と守秘義務で守られた裁判所が第三者としてチェックする制度が確立している。この先例に倣って、わが国にも同様な制度を作ることが強く提案された。
しかし、安倍政権は、それを頑なに拒み、行政府内部での自己規制機関を作ってお茶を濁した。ここに、誰からも統制されずに高度の国家機密を指定・管理できる独裁権力が生まれたことになる。
集団的自衛権の解釈改憲
憲法9条は、1項で「戦争」を放棄し、2項で、わが国は「軍隊」と「交戦権」を持てないと明記している。
「軍隊」と「交戦権」を持っていないということは、わが国は海外で国際法上合法に「戦争」ができないことを意味し、仮に、自衛隊が海外で戦争に参加したら、それは「海賊」か「山賊」になってしまう。
これは、敗戦国日本にアメリカが課した制約ではあるが、日本国民がそれを歓迎して受け容れたことも事実である。だから、海外派兵の禁止はわが国の国是であった。
それを、安倍政権は、国会における審議を迂回して、単に内輪の与党内での議論だけで、海外派兵が不可避な集団的自衛権を改憲してしまった。
その結果の政策的な当否も問題であるが、それ以前に、憲法を無視する権力の出現は大問題である。
彼らは、本来的に不完全な人間が託された権力を乱用しないように枠を与える法領域として「憲法」を創案した
アメリカ独立戦争の結果、神の子孫であるから完全であると自称する国王に代って、普通の人間が権力を預かる国家・アメリカが生まれた。そこで、彼らは、本来的に不完全な人間が託された権力を乱用しないように枠を与える法領域として「憲法」を創案した。それが、以後の民主諸国に継承されている。
独裁政権を自ら生み出すのか?
正真正銘の「独裁政治」の出現である
最近の報道では、今回の総選挙の結果、自民党単独で衆議院の3分の2を超すことになりそうだということである。となると、「自称」ブレーキ役の公明党の助けを借りなくとも、仮に参議院で何か否決されたとしても、自民党単独で衆議院で再議決を行い、安倍首相のおともだち政治が罷り通ることになる。これは、紛れもなく正真正銘の「独裁政治」の出現である。
野党の不甲斐無さを嘆いてばかりいても何も始まらない。まずは、眠れる愚民にならぬよう、投票場へ足を運ぶことであろう。