1対1
谷川俊太郎
事前投票に行った
空いていて気持ちよかった
立ち会いの女性たちに優しくされた
会ったことのないたった一人の名前を書いた
書いた責任上自分の名前もサインすべきだと思ったが
無効になりそうだからやめた
投票は数で決まる
でも詩は数で決まらない質で決まる
作者と読者が1対1だ
投票も私と候補者が1対1だ
と勝手に考えて帰ってきた
詩:谷川俊太郎
写真:新津保建秀
1対1
谷川俊太郎
事前投票に行った
空いていて気持ちよかった
立ち会いの女性たちに優しくされた
会ったことのないたった一人の名前を書いた
書いた責任上自分の名前もサインすべきだと思ったが
無効になりそうだからやめた
投票は数で決まる
でも詩は数で決まらない質で決まる
作者と読者が1対1だ
投票も私と候補者が1対1だ
と勝手に考えて帰ってきた
詩:谷川俊太郎
写真:新津保建秀
著者プロフィール
詩人
1931年東京生まれ。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表し、近年では詩を釣るiPhoneアプリ「谷川」やメールマガジン(2014年12月末で終了予定)、郵便で詩を送る『ポエメール』など、詩の可能性を広げる新たな試みにも挑戦している。新作に、〈タマシヒ〉についての書下ろし詩27篇が収録された写真家・川島小鳥との共著『おやすみ神たち』(ナナロク社)がある。【photo:深堀瑞穂】