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  • 論点

夫婦別姓を選択できないこと、それは初めての痛みだった

  • 石井リナ (BLAST Inc.CEO)
  • 2019年7月20日

恥ずかしながら今まで政治に疎く、苦手意識さえ持っていた。それでも今回の選挙には必ず行かなければいけないし、周りの若い人にも一人でも多く行ってほしいと願い、SNSでの情報発信を強めるようになった。

そう思ったきっかけは、夫婦別姓を選択できないことだった。

自分たちにとっての当たり前が許容されない

私自身、今年の秋頃にパートナーとの結婚を予定している。料理は彼が担当し、洗濯物は私が担当する。私は気が強く、意見をはっきり言う人間だし、彼は一歩リードするというタイプではなく、後ろからそっとサポートしてくれるような優しい人間だ。そして甘いものや可愛らしいキャラクターが好きだったりする。私たちは、いわゆる日本の「女性らしさ」や「男性らしさ」の範囲の中で生きてはいない。私も彼も、女性性や男性性に対し無頓着だ。

夫婦同姓が求められる中で、女性が我慢を強いられる日本の様子は男女差別に値すると感じていた。実際に世界でも、夫婦別姓を選択できる国がほとんどだ。日本では、男性の姓に統一する家庭が96%というように、女性の姓に統一することは、過去の習慣やジェンダーステレオタイプからみてもハードルの高いことだと感じる。

私たちの中でも結婚するにあたり、2人の中で名字をどうするのか、法律婚にするのかということが議題にあがった。「自身の名字にこだわっているわけではなく、日本の制度や現状に違和感がある。だからこそ法律婚で結婚してしまっていいのか悩んでいる」と伝えると、彼からは「夫婦別姓でもいいよ、そうしたら事実婚になるのかな?」と返ってきた。理解を示してくれたことが嬉しかったし、何よりほっとした。

私たちの求めるものが事実婚でもカバーされるのであれば事実婚にしようと思ったのも束の間、それでは子供の共同親権を持てないということを知る。

事実婚で夫婦別姓、子供ができた場合、私が親権を持ち、彼は認知し子供の名字は彼の姓にする、もしくは、事実婚で夫婦別姓、子供ができた場合、彼が親権を持ち、子供は私の名字とする。などなどいくつかのパターンを出し合ったが、これらの方法でお互いが納得できることはなかった。双方ともに子供の親権を持ちたかったからだ。


Photo by ajari (CC BY 2.0)

「そもそも家族ってなんだろうね?」
「もはや結婚しなくてもいい?」
「海外で結婚して生活する?」
「法律婚で婿入りする? でもそうしたら親に縁を切られちゃうかもな……」

夫婦別姓で共同親権を持つという、私にとっては当たり前の主張を日本は許してくれない

夫婦別姓で共同親権を持つという、私にとっては当たり前の主張をなぜ日本は許してくれないんだろうか、と初めて痛みを感じ、恨めしく思った。

彼は男性性や女性性にフラットな人間だが、ご両親もそうだとは限らない。そしてもちろん、彼らを批判するつもりは毛頭ない。時代が違えば、家族観における当たり前も違う。

私が折れれば、私と彼の関係性も、彼と家族の関係性もすべて丸く収まると思うと、折れた方がいいんだろうなと、どう考えても思えた

女性の姓に合わせ婿入りすることは許さない、縁を切ると以前から言われていたことを知ると、彼の家族の絆を壊してまでも、私が夫婦別姓にしたいと願うことは、わがままなのかもしれないと思った。私が折れれば、私と彼の関係性も、彼と家族の関係性もすべて丸く収まると思うと、折れた方がいいんだろうなと、どう考えても思えたのだ。今までこうやって何人もの女性たちが、アイデンティティを失っていくことや女性差別のシステムに組み込まれていくことに、悔しい思いをしてきたのだと実感すると涙が溢れた。

同時に、同性婚を許されていないゲイやレズビアンの人たちの気持ちがわかるような気がした。痛みの大小に違いはあるが、自分たちにとっては当たり前の主張や権利をなぜ国は認めてくれないのか、自身の身体を通して痛みが伝わってきたようだった。

その後話し合いを重ね、最終的には法律婚を選ぶが、夫婦別姓を選択できるタイミングで別姓を選択しようと約束した。そうするにあたり、一度離婚が必要だったとしても、だ。

人権問題と向き合うきっかけに

男女平等かつ、ダイバーシティ&インクルージョンな日本を目指す中で、議員を多様性のあるメンバーで構成するというのは非常に重要な指標だろう。夫婦別姓に否定的な自民党の女性候補者の割合は、たった14.6%だった


Photo by bm.iphone (CC BY 2.0)

かたや、れいわ新選組からは障がいを持った、ふなごやすひこ氏と木村英子氏の2名が参院選に立候補した。山本太郎氏は「障がいのある政治家を国会に送ることが、障がいに関連する政策を進めるための効果的な一歩になる」と話した。

最近では、性暴力を受けた際や避妊に失敗した際など、妊娠確率を著しく下げるアフターピルをオンライン診療で処方する際の検討委員会のほとんどが、男性であったことが話題となった。くわえて委員会のメンバーからは、「若い女性は知識がない」「若い女性が悪用するかもしれない」など、避妊や性教育は男女ともに必要なことにもかかわらず、女性だけの問題のように矮小化した言葉を放った。委員会のメンバーが全員女性だったならば、こんな発言があっただろうか。

今回の選挙において、私が重要視したいことは選択的夫婦別姓と同性婚だ

今回の選挙において、私が重要視したいことは選択的夫婦別姓と同性婚だ。これらに積極的な党を支持しようと決めた。女性やセクシュアリティをはじめとした、あらゆる人々の権利を日本が認める第一歩になると思うからだ。

夫婦別姓を求める人に対し、「女性も仕事場などでは旧姓を日頃使用することの方が多いのだから、夫婦同姓でも問題はないよ」という意見や、同性愛者に対し「同性同士で結婚できずとしても、共に暮らしお互いが家族だと思えればいいのでは?」という意見を向ける人々がいる。ただ差別とは構造的なものだ。第三者が決めることではなく、当事者が法律や制度として守られていること、自分たちで選択できることが何より重要なのだ。それをもってして、平等なのだ。


Photo by OpenRoadPR

選択的夫婦別姓や同性婚が実現化したとき、外国人労働者などの労働環境や、性暴力についての厳罰化など、人権を守る国への期待は、他の人権問題にも伝播していくだろう。日本で暮らすからには、危険を脅かされず、人権を守られ尊厳高く扱われたい。そう考えるのも自然なことだ。選択的夫婦別姓と同性婚の実現化は私たちにとって始まりに過ぎない。これらを皮切りに、日本の未来にちゃんと期待をしてみたいし、愛国心を取り戻したい。

著者プロフィール

石井リナ
いしい・りな

BLAST Inc.CEO

新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。初のInstagramマーケティング書籍となる「できる100の新法則Instagramマーケティング」を共同執筆するなど、デジタルプロモーションを中心にセミナー講師としても活動を広げている。現在は起業し、女性向けエンパワーメント動画メディア「BLAST」の立ち上げ、運営を行う。学生時代より雑誌「ELLE girl」のラボプロジェクトにてリアルイベントの企画や運営に携わるなど、若年層マーケティングを得意とする。

執筆書籍:『できる100の新法則Instagramマーケティング』インプレス社  コラム:アドタイ『#石井リナのゆとりですがなにか』、Forbes『ミレニアルズとユースカルチャー』、朝日新聞デジタル & M『石井リナのミレニアルズトーク』、ケトル『眠れない夜にはインターネットの話でも』。

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