みなさんこんにちは。津田大介です。
沖縄県知事選が公示され、選挙戦が始まっています。今回の沖縄県知事選は「保守分裂選挙」とも「普天間基地の辺野古移転の是非を決める選挙」とも言われており、沖縄県では大変注目を集め、日々熱い選挙戦が繰り広げられています。
僕も先日11月7日に沖縄に入り、辺野古や那覇など各地で行われる候補者の街頭演説、キーパーソンへのインタビューなどさまざまな取材をしています。
取材をしていて感じるのは、とにかく沖縄が抱える——正確に言えば本土の勝手な都合により「抱えさせられている」問題の複雑さです。数日滞在すれば、さまざまな問題の所在やその原因を簡単に理解することはできますが、いざそれを解決するとなると途端に「正解」が見えなくなってしまう。それが、余所者が軽々しく沖縄の問題に口を出すことに対する沖縄民からの本土民に対する忌避感につながっているのだとも思います。
そんななかメディアは一体何ができるのか……。自分がいまの沖縄に対して何か有効なことができるとは思いません。しかし、在京メディアに籍を置いているものとしてやらなければいけないと思ったのは、「沖縄の問題が複雑である」ということをできるだけ多くの本土の人間に知ってもらうということです。日々盛り上がりを見せる沖縄県知事選は、沖縄の抱える問題について知ってもらう最高のタイミングですしね。
今年の2月、このサイトで多くの有識者の方々に都知事選に関するコラムを寄稿していただきました。
それら識者のコラムは多くの方から「結果が決まっていた都知事選を面白く見るきっかけになった」という声を頂きました。
都知事選ポリタスの際は(もちろん例外もありましたが)「私は○○候補に入れる。理由は××だから」という原稿もありましたし、「私は○○候補だけは勘弁してほしい。理由は××だから」という原稿もありました。こうした原稿が選挙真っ最中である公示期間に読めるのは、一昨年の公職選挙法改正でネット選挙が解禁されたからです。改正以前はこうしたメディアを展開する場合、法律的にグレーゾーンに踏み込まざるを得ませんでした(それだけおかしな法律だったということですね)。
ポリタスを読んだ人たちからの感想の中には「公示期間になるとテレビや新聞といったマスメディアでは自分の立場を旗幟鮮明にして誰かに投票を呼びかけるような番組・記事に触れることがなかったので、それがまとめて読めたのが新鮮だった。自分が選挙に興味を持つきっかけになった」といったものもありました。こうした反応は自分がポリタスの都知事選特集を立ち上げた上でもっともうれしかった感想でしたし、自分自身政局中心のつまらないマスメディアの報道に対する突破口を作るという意味でたくさんの気づきもありました。
なぜ沖縄県知事選を特集するのか。それは僕自身の興味もありますが、東京にいると圧倒的に沖縄のリアルな状況がメディアを通じて入ってこない——このことに対する大いなる不満が特集を作る動機になっています。
沖縄のメディアと本土のメディアにあまりにも温度差がありますし、報道されない沖縄の問題がたくさん存在することで、本土の我々は沖縄に様々なリスクやコストを押しつけ、無関心を決め込むことが許されてきました。その意味で沖縄問題は、アジェンダ・セッティングが偏っているメディアの問題としても捉えることができます。基地問題、日米関係という「腫れ物」に触らないことで「加害者」としての当事者意識を薄めさせる。そうして我々は沖縄の問題に真剣に向き合うことを避けてきたのだと思います。
この問題を「知らない」人たちに様々な角度からわかりやすく、複雑な状況を「知ってもらう」ことで、このような状況に一石を投じたいと考えています。
沖縄県民の読者の方はぜひ投票の参考材料にしていただきたいですし、沖縄県民以外の人も「実はそういうことなんだ」と驚きを与えるような記事を、投票日まで毎日アップしていきたいと思っています。
辺野古の問題は単に名護市だけの問題ではなく、沖縄県全体の問題でもあり、ひいては日本全体の問題でもあります。本特集をお読みいただくことで本当に本当に切実な沖縄の問題を「自分ごと」として捉える人が増え、沖縄の人たちが抱えている大変な状況を少しでも日本全国に共有することができればこれ以上の幸いはありません。