ポリタス

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最近の再稼働のお話と、覚めない「もんじゅの夢」のこと。

  • もんじゅ君 (高速増殖炉)
  • 2015年6月11日

最近の原発のあれこれ

こんにちは。ボクは福井県敦賀市に住んでいる、高速増殖炉のもんじゅ君。高速増殖炉なんてちょっとむずかしい名前をしているけど、原発のなかま(ただし落ちこぼれ)って考えてね。

この記事では、最近の原発再稼働に向かう道すじのあれこれと、それにからめて「あれっ、そもそも高速増殖炉もんじゅってなんだっけ?」「核燃料サイクルってなんのこと?」ってお話をしたいんだ。

さて、ことし(2015年)の3月11日を過ぎてまもなく、たてつづけに「ふるい原発が廃炉になる」というニュースが大きく報じられたんだ。

3月11日以降というタイミングからは、そのとき「東日本大震災の起こった日に原発問題が話題になるのは避けたかったのかな」「それでいて3月のうちにいろいろと決着をつけて、原子力行政として年度内に一定の進捗がいった、という結果にしたいのかな」と、ふたつ考えが頭をよぎったんだけども……。

「廃炉」はトカゲのしっぽ切り?

2015年5月20日の時点では、関西電力の美浜原発1号機と2号機日本原子力発電の敦賀原発1号機九州電力の玄海原発1号機中国電力の島根原発1号機と、全国であわせて5つの原発に廃炉が決まっているんだ。

2015年4月に廃止となった原発

高度経済成長のころに建てられてすでに老朽化した原発たちに、ちゃんと引退勧告が出される———このこと自体は、すなおにとらえれば、自民党が政権をとりもどすときにかかげていた「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」への大きな前進だといえるよね。

だけど一方で、これらのニュースが「再稼働」「あわよくば新増設」への布石のように感じられたのも事実。

人間って、やっぱりどうしてもさきに聞いたニュースのほうを強く記憶に刻み込んじゃうでしょ。春のはじめに「廃炉」を大きくぶちあげたのはトカゲの尻尾切りみたいなもので、「ほら、危険な炉はちゃんとゴミにしますから! 安心でしょ?」「……だから、ほかの(相対的には)安全なやつは動かしていいですよね」と、ことは着実に再稼働へと運ばれていくなぁって感じたんだ。

ソツのない再稼働へのステップ

廃炉のニュースが一段落したあとには、九州電力が鹿児島に持つ川内原発の再稼働、関西電力が福井に持っている高浜原発の運転延長申請、また東京電力がことしの10月から新潟の柏崎刈羽原発の再稼働をめざしたいと考えているといったニュースがつぎつぎと報じられているんだよ。

また、原発の再稼働だけじゃなくって、「あーらびっくり、再生可能エネルギーのせいで家庭の電気代がこんなに上がりますよ!」といったアナウンスもあったんだよね。


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そして決定的だったのは4月終わりに、経産省さんが「2030年の電源構成は、震災前に29%だった原発の比率を『20~22%』とするのが望ましい」という案を出したこと。これには電事連の八木会長さん(原発をたくさん抱える、関西電力の社長さんでもあるよ)も「いいね!」といっているの。「原子力(の使用割合)が一定規模、明示されたのは意義がある。今後も安全なプラントは有効活用したい」ってね。

だけど、原発の電源構成比がもともと震災前は3割弱だったからといったって、いまからそこに戻す必要性ってあるのかな。だって2011年に福島第一が大事故を起こして以来、原発はどんどん使われなくなって、2014年度にはついに使用実績が「0%」だったし、それで電力の予備率(念のためにとっておくぶん)も足りてたわけだよね。

いちど事故を起こすと4年経っても12万人が避難をつづけなくちゃいけなくなる、それくらい原発って影響が大きいものなんだってことはもうみんなが知っていること。こういう、すごく社会的なコストが高い(=使うために了解を得るハードルがとても高い)発電手段を選ぶ合理的な理由って、どこにあるんだろうね

再稼働に向けた、耳にやさしいお話

ただ、これらの一連の流れは、さーっと日々のニュースを聞いているぶんには「へー」って流せちゃうような、耳にやさしくできてるお話だなって思うよ。とってもスムーズなんだ。受け入れる側の人間の心理にそった物語が、きれいにつくられているんだよね。

「春になったね。古いやつは廃炉にします。断腸の思いだよ(涙)。えらいでしょ」
  ↓
「でも、廃炉にしないやつは運転延長とかするよね……」
  ↓
「再生可能エネルギーのせいで電気代が上がるんだってね。困るよね!」
  ↓
「2030年にはまた22%くらいは原発で発電してるのがいいんじゃないかなぁ」
  ↓
「そんなこんなで、やっぱり原発って要るよね〜」
  ↓
「手はじめに、この夏には再稼働を間にあうかなぁ、どうかなぁ! そろそろ暑くなってきたよね! クーラー、節電とか気にせず使いたいよねぇ」
  ↓
(いっぺん動かしちゃえば、そのあとは「原発ないとやっぱ困る」っていえるよね……)


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ホントに安全? ホントに必要? 5つのツッコミどころ

とはいえ、最近のこの再稼働路線にはもちろんツッコミどころが満載なんだ。ぱっと思い浮かぶ5つのポイントだけでもこんな感じだよ(こういうシンプルなツッコミでさえ、大人の事情でむずかしくなっているような気がする最近の新聞やテレビには、一抹の不安を感じちゃうよ)。

1. 再稼働しようとしている原発は、新規制基準をちゃんとクリアできているの? 地震や津波や火山噴火などの検討すべきリスクを小さく見積もっている部分があるんじゃないのかな。

2. そもそも論だけどさ、原子力規制委員会の「新規制基準」さえクリアできたら安全だっていえるの? 安全のための十分条件とはいえないんじゃない? 規制委員会の田中委員長も「規制基準の適合性審査であって、安全だとはいわない」っていってたよね。


出典:地震調査研究推進本部

3. 原発がなくても電力は足りてるのに、どうして日本特有の「超地震国」というハンデを背負ってまで動かさないといけないの? 日本とその付近で、世界の10%の地震が起きてるわけで、他の国にくらべて条件がめちゃめちゃ不利だよね。で、その条件にあわせて安全対策しようとしたら、どんどんコストがかかるでしょ。「原発は安い」っていうけど、けっきょく高くつくんじゃない?

4. 「再生可能エネルギーで電気代が上がる、上がる」とさかんにいうけど、ふくいち君の事故処理にかかる11兆円ともいわれるコストは、じっさい国民が負担するんだよね。そういう話は抜きにして、太陽光や地熱の負担分だけが重たいみたいな感じで計算してみせるのは、ちょっとズルくないかな。

5. 原発を動かせば、使用済み核燃料などの放射性のゴミが出るでしょ。その処分方法が決まっていないのは以前とまったく変わらないわけで、それでも再稼働するのの? 震災前のペースで動かせば、使用済み核燃料は年間1000トンずつ増えていくけど、もう保管場所はほとんどないみたいだよ

原発の最大のネック、「ゴミ問題」

このうち最後の5番目の「ゴミ問題」っていうのは、もしこれから絶対に事故が起こらないとしたって(絶対なんてだれにもいえないけど!)すべての原発についてまわるものなんだ。日本じゅうの原発にある使用済み核燃料の「仮置き場」がいっぱいになったら「そのあとほんとにどうしたらいいんだ!?」という問題は、電力会社の人たちだって重々わかっていることなんだよ。

わかってはいるけれど、「とりあえずいま現在の問題じゃないからね。国が処分場を探してくれるっていってるからね。ま、いっか……」ということで先送りされつづけているの。

そして、この「放射性のゴミをどうするか?」という問題に深くかかわってくるのが、このボク、高速増殖炉もんじゅなんだよね。

ボクもんじゅって「核燃料サイクル計画」の重要な登場人物のうちのひとりなの。で、この「核燃サイクル」っていうのがくせもので、「原発から出るゴミをぜーんぶ有効利用して、ふたたびエネルギーのもとにしよう。外国から燃料を輸入しなくたって、ずーっと国内で核エネルギーを回しつづけられるぞ! 夢のようだなぁ」というかなり調子のいい、80年代の遺物的なプランなんだ。

「夢」のままの核燃料サイクル

核燃料サイクル計画についてかんたんにご説明したいので、図を見てね。


図の上:全国各地にある原発
図の左:六ヶ所村の再処理工場
図の右:高速増殖炉

という3人の登場人物が、ここにはいるんだよね。

【STEP 1】
全国の原発から「ゴミ(使用済み核燃料)」が出る。これはいまもその通り。動かせば動かすほどゴミは出ちゃうよね。だけどもいまのところはゴミの処分方法が決まっていないから、基本的には各地の原発の敷地内でかんたんに保管しているの。だから「地震や津波で使用済み核燃料がさらわれたり壊れたりしたらどうするの?」っていう問題があるよ。

【STEP 2】
原発から出たゴミを運んで、再処理工場でプルトニウムだけをとりだす。残りは放射能の度合いによって高レベルとか低レベルっていうふうに分類して、それぞれの方法で処理(埋め立て保管など)する。

【STEP 3】
再処理工場でとりだしたプルトニウムからMOX燃料(ウランからつくるふつうの燃料とは種類がちがう)をつくって、それを高速増殖炉で使って発電する。

【STEP4】
使った核燃料をまた再処理工場で再処理して、燃料に加工し、またそれを高速増殖炉に持っていって発電する。わー、これなら永久に燃料がなくならないかも! ばんざいばんざい!

で、日本では1960年代に計画がたてられて1980年代から具体的に建設がはじまったんだけども、再処理工場も高速増殖炉も実用化のめどはいまだにたっていないんだ。STEP2〜4のすべてが実現されていないんだよ。

「サイクル」といいながらそのうちの2ピースともが、50年ちかく経っても完成しない

「サイクル」といいながらそのうちの2ピースともが、50年ちかく経っても完成しない。ぜんぜん回ってなくて、サイクルになってないのね。これは「筋が悪かった」ってことじゃないか、と考えそうなものだけど……。

ほかの先進国は「ワンススルー方式」を採用

まぁ、なにも核燃料サイクル計画というのは日本独自のアイディアじゃないんだよ。かつてはアメリカでもフランスでもドイツでもイギリスでも考えられていたんだ。だけどもあんまりお金がかかるし、実現可能性が低いし、万が一事故を起こすとふつうの原発よりもあぶない(配管が薄い、核暴走しやすい、冷却材として燃えやすいナトリウムを使う、燃料のプルトニウムは毒性が高い、など)ってことで、先進国はどこも撤退しちゃったんだよね。

じゃ、そのサイクルをあきらめて、どうやって原発から出るゴミを処分するのか? じつは、先進国でのトレンドは「ワンススルー方式」に傾きつつあるんだよね。


出典:原発きほん知識 核物質防護(PP, フィジカルプロテクション)(原子力資料情報室)

ワンススルーというのは一方通行、1回使った燃料はそれでおしまい、ってこと。外に放射性物質が漏れないようにとじこめて、地中深い場所などに厳重にしまいこんで管理する、というやり方なんだ。

最終処分場の事例もすでに出てきていているんだよ。

フィンランドのオルキルオト原発では、地中400メートルの深さにまでトンネルが掘られ、地下にオンカロ(現地語で「洞窟」という意味)とよばれる巨大な処分場がつくられているの。日本とちがってほとんど地震の起こらない安定した地盤のある地域だからこそできることで、本格稼働は2020年ごろをめざしているんだよ。

ムリなのに、ムリっていえないワケ

じゃあ、日本も核燃料サイクルなんてあきらめて早くワンススルー方式に切り替えちゃったほうがいいんじゃない? ってふつうは考えると思うんだ。ふつうはね。

だって、これまで40年以上粘着してもまだできる見込みが立ってないんだもん。最初は1980年代にできあがるはずだったのが、計画がのびのびになっちゃっていまじゃ2050年が完成目標だなんて、まったくたよりにならないでしょ。

だけど、政府も、高速増殖炉もんじゅを管轄している文部科学省も、

「核燃料サイクルはムリっぽいので、やめるね」

とはいわないんだ。

いわないっていうよりも、いえないのかもしれない。

なぜかっていうと、これまでずっと

「原発から出るゴミは再利用できますよ。だからゴミじゃないんです」

といってきたのを、「じつは実現不可能でした」って認めちゃうと、たぶんいろんな大人の事情がからみあってたちまち問題が噴出するんだ。

「なんだ、これまでにかけた40年間という歳月、1兆円という国費はいったいどうなるんだ」(費やしてきたサンクコストを気にして引くに引けない、という問題)

「なにー! これまでの計画はまちがってたんじゃないか! だれがこの責任をとるんだ」(過去の政策の誤りの責任をだれもとりたくない、という問題)

「というか、ゴミをサイクルさせられないなら、すでにある使用済み核燃料はどうなるんだ? 日本はプレートの境目にのっかった地震国だろ。埋め立てのできる安全な地盤なんてないんじゃないか」(現実的なゴミ処分の問題)

「もんじゅをやめる? そうすると核燃料サイクルができないだろう。ということは、これ以上ゴミは出せない。そしたら原発が動かせないじゃないか! よその国に原発を輸出する手前、そりゃあ立場的にまずいだろう」(原発輸出に影がさす、という問題)

「サイクルできるという建前があったからこそ、これまで出た使用済み核燃料は『いつか資源になる』ということで、俺たち電力会社は会計上『資産』としてあつかってきたんだぞ。だけどそれがゴミになりますっていった瞬間に『負債』になっちゃうわけだ。うちの会社のバランスシートが大変なことになるじゃないか!」(電力会社の経営を気にする問題)

「核燃料サイクル計画をあきらめたら、日本はプルトニウムをあつかう技術を手放すことになってしまうだろう。プルトニウムならば、いざとなれば武器にも転用できる。そういう貴重なものを失うというのは、国防上いかがなものか」(核技術の保有にこだわるという問題)

こういういろんな大人の事情が錯綜して、実現しそうにない核燃料サイクル計画が、ゾンビのように生きつづけているんだよね。

もんじゅの落ちこぼれ人生20年

ボク高速増殖炉もんじゅがすごいのはその経歴で、スーパーエースのはずが、とにかくダメダメの落ちこぼれなんだ。かんたんに年表形式でご紹介すると、

1968年 ボクもんじゅの予備設計がはじまる

1970年 いま住んでいる福井県敦賀市が候補地になる

1985年 本体を建てはじめる

1995年 8月、デビュー。計画から30年ちかく経って、ようやく運転開始

1995年 12月、動いて4ヵ月弱で、ナトリウム漏れ火災。情報隠しで大問題に

1996年 1月、火災事故を調査してくれていた次長さんが自殺されてしまう

  「ダメダメじゃないか」ということで、長い長い夏休みに入る……

2010年 5月、満を持して15年ぶりに動きだす

2010年 8月、再始動からわずか3カ月で炉内中継装置落下事故を起こす

  「やれやれ」といわれながら、またバカンスに入る……

  このあいだも予算として毎年200億円の国費がついやされる

2012年 11月、9679ヵ所もの点検漏れが判明して、みんなにあきれられる

2013年 2月、原子力規制委員会が立ち入り検査。さらなる点検漏れが発覚

2013年 5月、さすがにガマンならんと、規制委員会が運転停止命令を出す

2015年 2月、「運転再開させてください」と出した報告書に誤りが見つかって、点検漏れ機器の数がさらに増える。規制委員会、ポカーン

みんながボクにあきれてる

そんなわけで、ボクは今年でデビュー20周年を迎えるわけなんだけども、ぜんぜんいいところがないままなんだ。

ボクもんじゅのパパは日本原子力研究開発機構(JAEA)で、ここは文部科学省が管轄しているのね。それで、2014年10月にはさすがにあきれた下村文科大臣がわざわざ福井のボクのところまで会いにきてくれて、「もんじゅが運転できるかどうかのラストチャンスと受け止め、全力でとりくんでほしい」とハッパをかけてくれたんだけど、それでもご期待にはこたえられず、点検漏れが残っちゃってて……。

今月(2015年5月)には、原子力規制委員会の田中俊一委員長から「話をするのも嫌になるくらい毎回毎回問題が起こっている」「もんじゅは、軽水炉とは違った安全上の問題がいっぱいあることを分かっているのかと思ってしまう」「(もんじゅという)立派な看板に寄りかかってほんとうの技術者の魂を忘れている」、更田豊志委員からは「(運転禁止)命令がこれほど長期間解除されないのは通常ではない」といわれるくらい、あきれられているんだよ。

ハード面でもソフト面でも実現は困難

それでもボクのパパであるJAEAの児玉敏雄理事長は、福井県知事さん、敦賀市長さんに対して「一日も早い(運転停止)命令解除に全力をあげてとりくむ」「もんじゅはエネルギー基本計画で役割が明確にされ、国際的にも期待されているので、肝に銘じてやっていきたい」といっているんだ。

理事長さんとしては立場上、前向きに「再稼働を」というほかないのかもしれないよね。だけど、予備設計から考えて50年ちかく、運転開始から20年が経っても、まだ数カ月しか運転できていないボク。

事故は起こす、情報公開は遅い、改善ができない、点検もちゃんとできない

これじゃ、高速増殖炉っていう発想そのものが、技術的にムリがあるんじゃないかって判断されてもしょうがないよね。事故は起こす、情報公開は遅い、改善ができない、点検もちゃんとできないってなると、組織運営や安全管理さえできてないって思われてもしょうがないよね。

ボクもんじゅはまだ「原型炉」といって実験段階の代物でしかないんだけど、ハード面でもソフト面でも、実用化までたどりつくのはむずかしいんじゃないのかな。

損切りするなら、少しでも早いほうがいい

JAEAの児玉理事長は、お役所ではなく三菱重工(ボクを建ててくれた会社のひとつだよ)出身の人なのね。だからこそ「民間では投資ばかりしてリターンがゼロというのは、ありえない状況。手順をふんで再稼働して研究成果を出すことを早急にやるべきだ」ともいっているんだ。

高速増殖炉もんじゅのリターンがこれまでゼロ

つまり、児玉理事長さんは「高速増殖炉もんじゅのリターンがこれまでゼロだ」ってことは認めちゃってるわけ。これはボクといっしょに働くはずの、六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場もおんなじなんだ。ボクはいちおう1995年に「完成」はしてるけど、再処理工場にいたっては「完工延期」をまさかの22回もくりかえしているんだよ。

オフィシャルな数字で見ても、ボクもんじゅで約1兆円、再処理工場で約3兆円もの建設費用がかかっているのね。2014年度の国家当初予算が96兆円だったことを考えると、これがいかにビッグな(そしてうまくいっていない)国家プロジェクトかってわかるんじゃないかな。これだけのコストをかけながら、いつまでも完成しない。核燃料サイクル計画のためのこの2つの建造物は、まさに現代のバベルの塔みたいな存在なんだ。

たしかに「もんじゅ、もうムリです」「六ヶ所もできませんでした!」って正直にいっちゃうと、原子力行政がかかえる問題がいっきに表面化して、一時的に困るのかもしれない。「これまでの政策の責任はだれがとる?」とか「核のゴミはどう処分しよう」とか「ゴミを出せないなら原発動かせないじゃん」とか「資産だと思ってた使用済み核燃料が、一夜にしてゴミと化したー!」とかね。

六ヶ所村の覚めない夢を見つづけるのは、問題の先送りでしかない

だけど、それをごまかすためにもんじゅや六ヶ所村の覚めない夢を見つづけるのは、問題の先送りでしかないんだよね。そして、先送りをしているあいだにもどんどんと国費が使われてく。ツケを払うのは未来の子どもたちなわけでしょ。

これはどこかのタイミングでだれかが「やめる」っていう決断をしなくちゃ終わらせられない悪夢なんじゃないか、って気がするよ。そしてやめるのであればできるだけ早く、いますぐにストップさせるのが、いちばん損害が少なくて済むんだよね。

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著者プロフィール

もんじゅ君
もんじゅくん

高速増殖炉

原発事故にショックを受け、2011年5月よりツイッターをつづける高速増殖炉もんじゅの非公式キャラクター。エネルギー問題に関するやさしい語り口と鋭い批評眼で、またたく間に人気アカウントに。2014年1月現在、フォロワー数は10万超。著書に『おしえて! もんじゅ君』『さようなら、もんじゅ君』など。エッセイやイラスト、インタビューでも活躍。

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