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もうこれで悩まない! アルゴリズムで投票先を決められる統一地方選

  • 佐藤哲也 (株式会社デザインルール 代表)
  • 2015年4月11日

ものさしをつくる

今回、寄稿に際し指定されたテーマは、「投票行動に『ものさし』を提供する」でした。今ひとつ盛り上がりが感じられない選挙戦ですが、「決め手に欠ける」と感じる無党派の有権者が多そうです。沖縄や被災地といった差し迫った争点がある地域を別にすれば、選挙への関心は低調かもしれません。何とかしたいですね。

基本的に、投票行動の「ものさし」をつくるというのは容易ではありません。というより無茶に近いお題でしょう。煎じ詰めれば人が人を評価するという人類永遠の課題に対して、一定の明瞭さを備えた基準を作ることができるとは思えません。

しかし、ネット選挙解禁後の初めての統一地方選挙で、「この記事を読む方」に向けてということであれば、何らかの提案はできそうな気がします。ある程度ネットに親しんでいるはずの本サイト、この記事の(想定)読者であれば、政治家のネット親和性の観点から候補者を評価することが許されそうだからです。

政策より政局

衰退局面での経済の疲弊に苦しむほとんどの地域にとって、批判や対立よりも素早い行動を優先させるというのも重要な考え方だ

ところで、マニフェストや訴える政策を重視すべきという昨今のムードの中で、「政策より政局」あるいは「『何』をやるかより『誰』とやるか」ということを明言している知人の某候補がいます。本人は半分冗談かもしれませんが、個人的にとてもユニークで興味深い考え方だと思います。なぜなら、政治家の役割には、有権者の望む政策を実現するだけにとどまらず、市民を代表するリーダーという側面も含まれるからです。また標準的な地方政治の現場では、議論を二分する争点はあまり多くないという現実もあります。政策論争が重要でないわけではありませんが、衰退局面での経済の疲弊に苦しむほとんどの地域にとって、批判や対立よりも素早い行動を優先させるというのも重要な考え方といえます。そこで政治家に求められる能力は、関係者の多少の立場の違いは乗り越えつつ、行政内外の様々な人とのネットワークを作り、カタチにしていく力でしょう。

Photo by iStock.com

一般に政局というと無駄な政治闘争を思わせる否定的なニュアンスも強いですが、やるべき政策・望まれる政策がある程度明らかな環境では、立ちはだかる反対勢力や既得権益と戦う政治的なプロセスこそが大事だという考え方もあります。

コネクターとしての政治家

また、「『何』をやるより『誰』」とやるか」というという言い方は少し誤解を招くかも知れません。個人的には特定の人物と癒着するという考え方というよりは、政治で実現したい価値観=大義を共有できる仲間を持った政治家であると捉えています。特に、今日の地域の公共的課題は、既存の政治や行政の枠内で決して解決できるものではありません。適切な地域の人材との協力関係に基づく、適材適所が実現できる行動能力がある政治家が必要です。最近ではそのような地域課題の解決に向けて、適切な人材を見つけてくる、コネクターやカタリストと呼ばれる職能が重視されてきています。地方の課題に直面する政治家こそ、そのような有効な「つながり」をつくる能力が強く求められています。

ウェブの好きな政治家

その候補者が地域で必要な「つながり」をつくるつもりなのかどうか、どうしたらわかるでしょうか。もともと政治家というのは「つながり」をとても大切にします。その政治家のリアルな関係性はなかなか目に見えないので、評価することは容易ではありません。しかし、ネットを通じて有権者や地域とつながろうとしているかどうかということは、割と簡単に評価できます。名前を検索して、公式ページやブログなどを見てみれば、ネット上の活動はだいたいわかるからです。特に、ネットに親しんでいる、ポリタスの読者からすれば、ネットで「どんな政治家なのか」ということをわかりやすくまとめておいてほしいと思うのは当然で、市民への情報発信はいまの政治家として当然のタスクです。また現職の議員であれば、定期的にFacebookやツイッターなどのSNSを使って活動報告や政治的見解をシェアすることもぜひお願いしたいものです。これらのネット活動との親和性は、これからの政治家に求められる「コネクター」として必須の特徴とも言えるでしょう。

Photo by Jason HowieCC BY 2.0

国会議員オーディションとしての地方選挙

地域を代表する政治家を育てるには時間がかかることを考慮すれば、若い政治家を選ぶのは理にかなった考え方である

次に、ポリタス読者で無党派の人が重視するべき属性として、「若さ」を挙げます。地方の政治家の中には、いずれ国政に打って出ようという野心を持っている若い政治家が少なからず存在しています。本来的には、地方議員はあくまで地方自治体の議員であり、決して国会議員の腰掛け的な職業ではありません。しかし、古くから国会議員のキャリアとして、地方議員(首長)の経験者というケースが多いのが現実です。この考え方がいささか邪道であるとは自認しているのですが――しかしなお、その上で現実を認めるなら――「将来の国会議員を選ぶためのオーディションとしての地方選挙」という考え方も無視できません。将来この候補者に国政を任せられそうか? そのような観点から若い政治家を育てるつもりで投票するのも一案かもしれません。もちろん、高齢の政治家だからダメということではないのですが、地域を代表する政治家を育てるには時間がかかることを考慮すれば、若い政治家を選ぶのはある程度理にかなった考え方であると言えるでしょう。

おすすめのものさし

さて、これまでのつらつらと書いてきましたが、評価の基準としてまとめると、下記の2点を挙げられます。

・ネットを通じて有権者とつながる姿勢のある人を選ぼう。

・若い政治家を育てよう。

この2点の評価軸に基づいた、投票すべき候補者を選ぶ具体的方法(アルゴリズム)を考えてみました。現時点で投票したいという候補者が特にいないという方は、下記のとおりの手順でデジタルに投票先を選んでみてはいかがでしょうか。

0)新聞社の候補者一覧ページなどで、投票する予定の選挙の候補者リストを見つけます。

1)自分の選挙区の候補者リストの中から最も若い人を選びます。

2)その候補者の氏名と自治体名で検索します(※同姓同名を避けるため自治体名と一緒に検索することをおすすめします)。

3)出てきたサイトが同姓同名の他人のサイトではなく、政治家本人であることを確認します。

4)そのサイトを見て、第一印象で信頼できそうな政治家かどうか判断します。Facebookやツイッターを使って言える現職の場合は、過去のネットの活動状況を確認してみるのもよいでしょう。

5)もし、関連するサイトやブログがない場合は、その次に若い人の名前で、2)から同じ作業を決まるまで繰り返します。

6)「信頼できそうだ」と思ったら、その人に投票することにしましょう。

7)「信頼できなさそうだ」と思ったら、その次に若い人の名前で、2)から同じ作業を決まるまで繰り返します。

これでもう投票先で悩むことはありません。参考になれば幸いです。

著者プロフィール

佐藤哲也
さとう・てつや

株式会社デザインルール 代表

72年生まれ。東京工業大学大学院修了。元静岡大学情報学部准教授。現在は大学発ベンチャーで起業中。専門は社会情報学、ネット選挙、予測市場や政治における意思決定支援システムの研究。

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