突然降って湧いた解散劇からはじまった今回の総選挙。解散にあわせて希望の党が立ち上がり、そこに合流することを決めた民進党と連合が、希望の党執行部と方針を巡って対立。そして希望の党に合流しない民進党の議員が中心となって立憲民主党が誕生するという怒涛の政局になりました。
解散から公示に至るまでの期間、希望の党のスタンスや、小池代表や地方自治体の首長の出馬を巡ってさまざまな憶測が飛び交いました。しかし蓋を開けてみれば、小池代表らは出馬せず、単に民進と連合が解体された状態で突入する「野党の分裂選挙」という構図になりました。各メディアの情勢調査では、希望と立憲が争う選挙区が増えたことが影響し、自民党が単独過半数となる233を大きく上回る議席を確保する見込みとなっています。
マスメディアからネット、現実社会での反応を鑑みても、多くの国民はイデオロギーや支持政党と関係なく、今回の選挙戦のドタバタを冷ややかに見ているのではないでしょうか。あるいは、この状況下でどこに投票すればいいのかわからず戸惑っている人が多いようにも見えます。
当初は「大義」のある・なしが取り沙汰された今回の解散総選挙でしたが、そのような議論も選挙戦が近づいたことで、生き残りをかけた議員たちの人間ドラマに回収されていきました。マスメディアがこの期間、政局報道と議席予測しか報じなくなることも原因の一つでしょう。
ネットは、マスメディア以上にひどい印象操作やフェイクニュースが飛び交う「政治活動」の場所になっていますが、その一方で、メディアがつくる図式の問題点を冷静に指摘する記事も多く閲覧され、複眼的な視点を有権者に与えています。2013年のネット選挙解禁から4年が経ちましたが、ネットはようやく選挙の際、「有権者が候補者を判断するための情報提供ツール」として一般に定着したように思います。
スマートフォンやソーシャルメディアの発達により、われわれは気になる候補者の政見放送や街頭演説を、好きなタイミングに確認できるようになりました。大手メディアが全体の議席予測などのニュースに偏る中で、こうした政治家の生の声が伝わりやすくなったことは、有権者にとっても、政治家にとっても良い影響が期待できます。とりわけ組織力や発信力に劣る無所属の候補者や、新党にもたらす恩恵は大きいのではないでしょうか。
解散直後に読売新聞社が実施した全国世論調査では、無党派層の比例投票先で、46%が「決めてない」を選びました。10月7~8日の調査ではこの数字が52%まで上がっています。混迷する政局を前に、どの候補者や、どの党に、どのような理由で票を入れるべきか、多くの有権者が決めかねています。
今回の特集のテーマは「衆院選2017――それでも選ぶとしたら」にしました。
安倍首相の「国難突破解散」というキーワードはさまざまな議論を呼びました。少子高齢化にはじまり、高額化する医療費や介護問題、エネルギーから安全保障まで、日本に突きつけられた課題がどれも喫緊のものであることは事実です。その厳しい現実に対して日本国民が真正面から向き合わない限り、この国の未来が拓けることはないでしょう。本当の「国難」とは、有権者が政治に関心を持つことをやめたとき、はじめて訪れるものなのかもしれません。
政治家たちが目先のことしか気にしていないように見えるいまだからこそ、そうではない政治のあり方はどこにあるのか、有権者はどのように政治と向き合っていけばいいのか――今回の総選挙も「有権者にものさしを提供する」という観点で、さまざまな識者にご寄稿いただきます。選挙や政治と向き合う際、自分自身の原理原則を確認するために、少しでもみなさんの役に立てることを願って。