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  • Photo by Kyle Hasegawa (CC BY 2.0)

風頼みでも組織頼みでもない人を

  • 相川俊英 (地方自治ジャーナリスト)
  • 2017年6月30日

都議選は都議を選ぶもの

都議会議員にふさわしい人物を選ぶのが都議選で、本来、それ以上でも以下でもないはずだが、現実は異なる。4年に1度の都議選はいつも国政の問題が選挙戦の争点となり、激しい舌戦が国政政党間で展開される。選挙が通常国会後の7月に実施されるという巡り合わせもあるが、東京が人口1300万人の首都であり、国家機関や大企業、とりわけ全国メディアの本社が集中することなどが要因と考える。メディアは「首都決戦は国政の行方を占うもの」と位置付け、国政選挙かと見紛うほど報道に力を入れる。その際、必ず使われるのが、「都議選の結果が国政を左右する」という表現だ。国政政党は総力を挙げて選挙戦に臨み、候補者個人ではなく組織看板の戦いとなる。東京都という巨大で特殊な自治体の議会選挙に、日本中の関心が集まるのである。今回も同様の展開で、もはやこうした都議選の光景を当たり前のように思っている人も多い。では、そうした選挙戦を繰り返してきて都議会はどうなったか。

国政に左右される都議選の惨状

都議選は「国政を左右する」といわれているが、むしろ、「国政に左右されてきた」というべきだ。その時々の国政の状況が選挙結果を大きく左右してきたからだ。国政へのうっ憤や不信が投票行動につながり、候補者個人を見極めることが二の次にされがちだ。都議選によく吹く「風」というものの本質である。このため、選挙毎に当選者がコロコロ変わりやすく、その一方で、強固な組織団体をおさえている人だけは安泰となる。

こうして都議会は風向き次第でどこかへすぐに飛んで行ってしまう軽い議員と、特定の組織団体にがっちり付いて離れないしがらみ議員で構成される傾向になる(そうではない都議もいる)。いずれも都民や都政に顔は向いておらず、足もついていない。都議として求められる資質や能力、人柄で選び抜かれたわけではないからだ。


Photo by Zengame (CC BY 2.0)

それが都議会の惨状となってあらわれている。全国に地方議会は1788あるが、その中でもダントツでコストパフォーマンスの悪いのが、都議会だ。約1715万円(都議選対策で2月に2割削減を決定。2017年度まで)もの議員報酬と年間720万円(こちらも年600万円に減額)もの政務活動費をもらいながら、築地市場の移転や五輪の問題などでチェック機能を何ら果たさずにいた。ましてや議員提案による政策条例の実績などない。高額報酬に見合った活動などしておらず、とうてい都民や都政の役に立っていない。首都・東京の議会は、恥ずかしながら、全国でも指折りの劣化した地方議会なのだ。都政をなおざりにした選挙を続けてきたことの結果である。

都議会を都民に役立つものに

こうした都議会を変えることが、今回の都議選の最大の眼目である。特定組織や団体、地域、さらには自分のために都議になろうという人ではない人を、選び抜くことが肝要だ。学歴や経歴、政党のお墨付きや首長の推薦といったもので判断するのではなく、各候補の都政に対する意欲や本気度、そして人間性などをじっくり見極めて投票することが重要だ。候補者の後ろにある看板ではなく、人物の吟味である。また、これには異論があると思うが、地方議会が国政政党や首長政党の色に染まるのはどうかと考える。地方議会は自立した一人一人の議員の集まりであるべきだと考えるからだ。少なくとも、国会議員や首長の部下のような人物では地方議員の本来の役割は果たせないと考える。風頼みでもなく、組織頼みでもない候補者を探し出し、一票を投じたい。

▼併せてご覧ください
ポリタス「選んではいけないNG候補」の見分け方 5箇条

著者プロフィール

相川俊英
あいかわ・としひで

地方自治ジャーナリスト

1956年群馬県生まれ。早稲田大学法学部卒。地方自治をテーマに全国各地を取材して回る生活を四半世紀以上、続けている。3月に『地方議会を再生する』(集英社新書)を出版した。他に『奇跡の村 地方は人で再生する』(集英社新書)『反骨の市町村 国に頼るからバカを見る』(講談社)など多数。

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