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衆院選と同時に行われる最高裁判所裁判官国民審査とは

  • ポリタス編集部
  • 2017年10月16日

最高裁判所裁判官国民審査公報は⇒こちら
(各裁判官の略歴や最高裁判所において関与した主要な裁判でどのような意見を述べたのかが掲載されています)


2017年10月22日(日)は、第48回衆議院選挙の投票日です。同じ日に、「最高裁判所裁判官国民審査」の投票も行われます。2014年12月末の衆院選挙以降に任命された7名が、日本最高の司法機関である最高裁の裁判官にふさわしいかを、国民が判断する大事な審査です。

→7名の最高裁判官について早く知りたい方はこちら

どんな審査なの?

「憲法の番人」と呼ばれる最高裁判所裁判官の職務にふさわしい人物かどうか、国民が直接審査します。審査が行われるのは、最高裁判所裁判官に任命された後はじめて行われる衆議院議員選挙のとき、その後は10年経過するごとに衆議院選挙と合わせて行われます。ちなみに、1949年に国民審査がはじまって以降、過去23回行われていますが、罷免された裁判官は1人もいません

どうして重要なの?

最高裁判所の裁判官は、長官と判事合わせてたった15名しかいません。その15名のうち少なくとも10名は、10年以上の裁判官経験または20年以上の法律専門家経験が必要になります。日本の最高裁判所は、法律などが憲法に反していないかどうかの判断を下す権利があります。また、最高裁判所の判例は、その後の法律運用の基準となるきわめて重要なものです。過去、最高裁判所で誤った判決が下された例もあり、またそれらの裁判官がいまも現役であったりもします

たとえ今まで罷免された裁判官が1人もいなくても、国民審査は重要である理由の一つといえます。

どうやって投票するの?

国民審査のやり方は簡単で、辞めさせたいと思う裁判官に「×」印を書き、有効投票の過半数が「×」だった裁判官は辞めさせられます。何も記入しないと信任=辞めさせないという意思表示とみなされ、「×」以外の記入はすべて無効となります。そして、(ほかではあまり書かれていませんが)国民投票は「棄権」することができます。その場合は投票用紙を受け取らないもしくは返却し、何も投じません。


Image by Hisi21 (CC BY-SA 3.0)

今回の国民審査から、衆院選と同じ「11日前から」の期日前投票が可能になりました。

→期日前投票の記事はこちら

なにを基準に判断すればいいの?

審査する裁判官の情報は、各家庭に配られる『最高裁判所裁判官国民審査公報』または最高裁判所のサイトに掲載されています。お手元に届く公報にはその裁判官が過去に関わった事件と、その際どういう判決を下したかが書かれています。しかし、書かれている内容が専門的で難しいこと、一人あたり1000字以内という制限があることから、なかなかこれだけでは判断できない方が大半だと思われます。

以下、簡単に今回の審査の対象になる7名についてまとめました。信任するかどうかの判断材料にお使いください。

小池裕(こいけ・ひろし)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1951年7月3日(66歳)
任命された年月日:2015年4月2日

東京大学法学部卒業。裁判官出身。水戸地裁所長、東京高裁判事部総括、東京地裁所長、東京高等裁長官を歴任。

主に関わった裁判:

厚木基地の騒音をめぐる訴訟

神奈川県の厚木基地周辺住民が、米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」で、夜間早朝の自衛隊機の飛行を禁じた1、2審判決を破棄し、住民側の請求を棄却。小池裁判官は「騒音による被害の防止又は軽減のための相応の措置を講じつつ自衛隊機を運航する行為が、社会通念に照らして著しく妥当性を欠く」とは認められず、防衛大臣の「権限行使に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものと認めることはできない」との補足意見を付した。

2016年参院選の「1票の格差」をめぐる最高裁判決

「1票の格差」が最大3.08倍となった2016年参院選挙を「合憲」と判断した最高裁判決で、一部選挙区の合区など「これまでにない手法を導入し是正を図った」と評価し、1票の格差は「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった」とはいえず、「憲法に違反するに至っていたということはできない」との判断を示した(多数意見)。

夫婦同姓制度の合憲性をめぐる訴訟

夫婦別姓を認めない民法規定の違憲性が争われた裁判で、「家族は社会の基礎的な集団単位であり、その呼称を1つにするには合理性がある」、「通称を使用することで改姓による不利益は一定程度緩和される」として、夫婦同姓制度は「合憲」との判断を示した(多数意見)。15人の裁判官のうち、小池裕裁判官を含む10人が「合憲」と判断し、5人が「違憲」との意見を付した。

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令状なしのGPS捜査をめぐる最高裁判決
司法書士が代理できる債権額をめぐる訴訟
鳥取連続不審死事件

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戸倉三郎(とくら・さぶろう)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1954年8月11日(63歳)
任命された年月日:2017年3月14日

一橋大学法学部卒業。裁判官出身。さいたま地裁所長、最高裁事務総長、東京高裁長官を歴任。

主に関わった裁判:

2016年参院選の「1票の格差」をめぐる最高裁判決

「1票の格差」が最大3.08倍となった2016年参院選挙を「合憲」と判断した最高裁判決で、一部選挙区の合区など「これまでにない手法を導入し是正を図った」と評価し、1票の格差は「違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった」とはいえず、「憲法に違反するに至っていたということはできない」と判断した(多数意見)。

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山口厚(やまぐち・あつし)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1953年11月6日(63歳)
任命された年月日:2017年2月6日

東京大学法学部卒業。法学者出身。日本刑法学会理事長、東京大学大学院法学政治学研究科長・法学部長、法制審議会委員を歴任。東京大学名誉教授。2016年に弁護士名簿登録。

主に関わった裁判:

鳥取連続不審死事件

2009年に鳥取県で男性2人が変死した連続不審死事件をめぐる裁判で、目撃証言や殺害に使用された睡眠薬の成分、被害者への債務などの状況証拠から被告の犯行と認定し、「経緯や動機に酌むべき事情がなく、強固な殺意に基づく計画的で冷酷な犯行」として上告を棄却(全員一致)。1、2審の死刑判決が確定した。

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菅野博之(かんの・ひろゆき)

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生年月日:1952年7月3日(65歳)
任命された年月日:2016年9月5日

東北大学法学部卒業。裁判官出身。水戸地裁所長、東京高裁判事部総括、大阪高裁長官を歴任。

主に関わった裁判:

辺野古埋め立て承認取り消しをめぐる訴訟

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移転計画をめぐり、沖縄県と国が争っていた訴訟で、県の上告を棄却した(全員一致)。「前知事の埋め立て承認の判断に違法性はなく、現知事が埋め立て承認取り消しを取り消さないことは違法である」と判断した。

汚職事件における賠償請求額をめぐる訴訟

教員採用汚職事件をめぐり、関与した元教育委員会幹部への賠償請求額から返納した退職金額を差し引けるかが争われた訴訟で、「悪質な不正であり、賠償請求額から返納分を差し引くことはできない」として、2審判決を破棄(全員一致)し、審理を高裁に差し戻した。

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大谷直人(おおたに・なおと)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1952年6月23日(65歳)
任命された年月日:2015年2月17日

東京大学法学部卒業。裁判官出身。最高裁人事局長、静岡地裁所長、最高裁事務総長、大阪高裁長官を歴任。

主に関わった裁判:

夫婦同姓制度の合憲性をめぐる訴訟

夫婦別姓を認めない民法規定の違憲性が争われた裁判で、「家族は社会の基礎的な集団単位であり、その呼称を1つにするには合理性がある」、「通称を使用することで改姓による不利益は一定程度緩和される」として、夫婦同姓制度は「合憲」との判断を示した(多数意見)。15人の裁判官のうち、大谷裁判官を含む10人が「合憲」と判断し、5人が「違憲」との意見を付した。

再婚禁止期間の違憲性をめぐる訴訟

女性だけに離婚後6ヶ月間の再婚禁止期間を定めた民法規定の違憲性が争われた訴訟で、再婚禁止期間は「父子関係の紛争を未然に防ぐ」ことが目的であり、「100日を超えて再婚を合理的な理由なく禁じているのは過剰な制約で違憲」との判断を示した(全員一致)。大谷直人裁判官は、100日の期間内であっても、父子関係の紛争が生じ得ないと考えられる場合には「適用除外の可能性がある」との補足意見を付している。

司法書士が代理できる債権額をめぐる訴訟

過払い金などの債務整理を司法書士がどこまで扱えるかが争われた裁判で、依頼者が得る利益が140万円未満であれば扱えるとする司法書士側の主張を退け、「債権(借金)額が140万円を超える場合には、司法書士は代理できない」との判断を示した(全員一致)。

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木澤克之(きざわ・かつゆき)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1951年8月27日(66歳)
任命された年月日:2016年7月19日

立教大学法学部卒業。弁護士出身。司法研修所教官、立教大法科大学院教授、東京弁護士会人事委員会委員長、学校法人加計学園監事を歴任。

主に関わった裁判:

令状なしのGPS捜査をめぐる最高裁判決

裁判所の令状をとらずに行われたGPS捜査の違法性について争われた裁判で、裁判官15人の全員一致で「違法」とする判決を下した。GPS捜査は「公道だけでなく、プライバシーが保護される場所や空間も含め、個人の行動を継続的、網羅的に把握」できるため、プライバイシーの侵害にあたり、「肉眼やカメラで確認する手法とは異なる」として、令状が必要な強制捜査であるとの判断を示した。

厚木基地の騒音をめぐる訴訟

神奈川県の厚木基地周辺住民が、米軍機と自衛隊機の飛行差し止めと損害賠償を国に求めた「第4次厚木基地騒音訴訟」で、「自衛隊機の運行には高度の公共性、公益性が認められ、騒音軽減のための相応の措置が講じられている」として、夜間早朝の自衛隊機の飛行を禁じた1、2審判決を破棄し、住民側の請求を棄却した(全員一致)。

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林景一(はやし・けいいち)

最高裁判所のサイトでプロフィールを見る

生年月日:1951年2月8日(66歳)
任命された年月日:2017年4月10日

京都大学法学部卒業。行政官出身。外務大臣官房長、内閣官房副長官補、英国駐箚特命全権大使を歴任。

主に関わった裁判:

2016年参院選の「1票の格差」をめぐる最高裁判決

「1票の格差」が最大3.08倍となった2016年参院選挙を「合憲」と判断した最高裁判決で、格差縮小の努力は評価するものの、違憲状態を脱したとの「多数意見に完全には与することができない」とした上で、「一般的には、一人二票というべき事態となることは原則として許容できないといえる」との意見を付している。

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裁判所裁判官国民審査公報は⇒こちら
(各裁判官の略歴や最高裁判所において関与した主要な裁判でどのような意見を述べたのかが掲載されています)


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著者プロフィール

ポリタス編集部
ぽりたすへんしゅうぶ

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