ポリタス特集「参院選・都知事選2016――何のために投票するのか」を開始します。
振り返ると、今回の参院選は年明けごろから衆参W選挙の可能性が最後まで取り沙汰されていました。その結果、メディアでも選挙の争点をどこに置くかということ以上に「W選挙を行うかどうか」ということが中心に報道されました。
結局、衆参W選挙は行われないことになりましたが、多くの国民は今回の参院選がそもそも何を問う選挙なのか見えにくい状況にあります。
また、先日舛添都知事が辞任し、7月31日に都知事選の投開票を行うことが決定しました。
今年上半期に起きた政治トピックを顧みると、実にいろいろなことが起きたことがわかります。甘利経済再生担当大臣金銭授受疑惑や舛添前都知事の不適切会計問題、東京五輪招致疑惑、山尾民進党政調会長の政治資金疑惑など、「政治とカネ」を巡る問題がクローズアップされた一方で、国会を揺るがす大騒動になった「保育園ブログ」問題も注目を集めました。ネットに匿名で書かれた悲痛な叫びが国会まで届き、現実の待機児童政策が動いたという意味では画期的な出来事でしたが、抜本的な対策とはならず、ネットで政治に声を届けることの課題も残しました。
これら一連の出来事を思い返しても、我々が「民意」による審判でメリットばかりを獲得するわけではないことは自明です。
ただ、本件がきっかけとなり、これまで選挙の争点になりづらかった社会保障や少子化対策、給付型奨学金などに注目が集まり、各党とも社会保障に力を入れた政策を打ち出し始めたことは今回の参院選の大きな変化と言えるのかもしれません。
こうした変化は4月に行われた衆院北海道5区補選の結果にも影響を与えました。3月初めごろは10ポイント差で与党圧勝と言われていた選挙予想が、最終的には約1万2000票差の接戦となり、与党側が薄氷の勝利を収めました。とはいえ、与党側の失点が目立ったこの補選で野党側が勝利できなかったのも事実です。現政権の経済政策に代わる国民の生活改善に直結するテーマを前面に掲げ、説得力のある対案を示せない限り、野党側が勝利するのは難しいでしょう。それだけ「政治」そのものに対する国民の絶望感は深いものになってきています。
野党共闘が進む一方で、現政権も確実にポイントを稼いでいます。特に伊勢志摩サミットに続く、オバマ大統領の広島訪問実現は大きな外交的成果となり、支持率も5ポイントほど上昇しました。国会会期終了直前に行われた安倍首相の消費増税延期表明は消費者の懐具合に直結する話ですから、当然有利に働きますし、熊本地震が起きたことも有権者の現状維持傾向を強めているという見方もあります。
そうした中行われる選挙戦ですが、今回はもう1つ大きなトピックがあります。「18歳選挙権」の実現です。これにより、日本の有権者数は2%増えることになりました。政治の世界では、これまで当落に直接かかわってくる有権者数が多く投票率の高い高齢者層に対して、優先的に社会保障や政策の充実をはかってきた経緯がありました。「シルバー民主主義」とも揶揄される世代間格差を今後どのように適正化していけばいいのか、これも大きな政治課題です。
18歳選挙と一口に言っても、日本の18歳が等しく同じ立場なわけではありません。どのような環境に生まれ育ち、今現在どのような問題に直面しているか、将来どのような可能性を選択し得るかは人それぞれです。もちろん「格差」は世代間だけではなく、正規非正規格差や男女格差など、格差の種は社会の至るところに存在します。しかし、今後の政治を考える上で18歳という可能性に満ちた年代にフォーカスして論じることは、どの世代に対しても通じる共通のテーマや切り口が見えてくるのではないかと思います。
子育てや若者の社会保障について真剣に取り組まなければいけない時期が既に訪れています。これまでこの国で先延ばしにされ続けてきた真の意味での「日本の未来をつくる」バランスの取れた政治を実現するにはどうすればいいのか――。
今回の特集では、自分たちのこれからの生活や将来に政治がどう関係するのかを知り、18歳だけではなくすべての参政権のある人が読んでためになる「ものさし」となるような論考が集まりました。いまの政治にウンザリしている方は多いでしょうが、そういう人にこそ今回の特集を読んでいただき、この状況下で投票することの意味を考えていただければ幸いです。