2014年の沖縄県知事選、2015年の辺野古移設問題に続く沖縄特集第3弾「『沖縄県知事選2018』から考える」を開始します。
4年前に当選の名乗りを上げた翁長雄志知事は、任期を全うすることなく8月8日に永眠されました。翁長知事の死去を受け、沖縄県知事選の投開票が今月9月30日に行われます。
今回の知事選の有力候補は、自民、公明、維新、希望が推薦する佐喜真淳前宜野湾市長と、共産党や社民党、労組など革新勢力を中心に構成され、翁長知事の支持母体だった「オール沖縄」の支援を受ける玉城デニー衆院議員(自由党幹事長)の2人。事実上彼らの一騎打ちになると見られています。
玉城候補は出馬にあたり「翁長知事の遺志を受け継ぎ、辺野古に新たな基地は造らせない。普天間飛行場の閉鎖・返還を一日も早く実現するよう政府に強く要求する」と述べており、選挙戦はいきおい翁長雄志知事の弔い合戦の様相を帯びています。
翁長知事の弔い合戦という性質が色濃くなっていきている上、基地問題に焦点が当たるのは当然の成り行きです。しかし、現実問題として佐喜真候補が勝とうが、玉城候補が勝とうが、普天間基地返還や辺野古移設(新基地建設)問題がすんなり解決する見込みは立っておらず、この複雑さが、本土でこの問題の理解が進まない原因の一つになっています。
戸室健作氏による2016年の「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討」という調査によれば、沖縄県の貧困率は34.8%であり、全国平均18.3%の約2倍の数値となりました。とりわけ子どもの貧困は深刻で、沖縄県が2016年に調査を行ったところ、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%に達し、こちらも同時期の全国平均16.3%(2015年、内閣府)の2倍近い数値です。
このような状況を受け、過去の沖縄県知事選では毎回「基地問題」と「経済振興」の間で大きく振り子が振れてきました。
基地問題も、経済振興も、沖縄の未来を考える上で非常に重要な問題です。しかし、これら以外の論点にも目を向け、本土の人間が沖縄の問題を「自分事」として捉えるような論考を集めました。沖縄について本土の広く一般の人が考えるようになることで、日本全体の「ひた隠しにされている現実」に目を向ける――それがポリタスの役割であると考えています。
辺野古の問題は単に名護市だけの問題ではなく、沖縄県全体の問題でもあり、ひいては日本全体の問題でもあります。
この特集をきっかけとして、いま沖縄で起きている現実に目を向ける人が少しでも増えれば、これ以上の幸いはありません。