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  • Illustration by 筒井早良

「沖縄・辺野古――わたしたちと米軍基地問題」を開始します

  • 津田大介 (ポリタス編集長)
  • 2015年6月28日

沖縄特集第2弾となる「沖縄・辺野古――わたしたちと米軍基地問題」を開始します。

昨年11月に公開したポリタス特集企画「『沖縄県知事選2014』から考える」から半年が経過しました。沖縄県知事選の結果は皆さんご存じの通り、宜野湾市にある普天間飛行場の名護市辺野古移設問題で「移設阻止」を主張した前那覇市長の翁長雄志氏が当選を果たしました。その後、翁長知事はことあるごとに辺野古移設への反対と、“粛々”と移設を進めようとする現政権への不信感を表明しています。今年の6月23日に開催された沖縄の戦没者を追悼する「慰霊の日」追悼式の「平和宣言」でも、出席した安倍首相の目の前で政府に対する強い不満を述べたうえで、あらためて辺野古移設の中断を求めました。

戦後、私たちは、この思いを忘れることなく、復興と発展の道を力強く歩んできました。

しかしながら、国土面積の0.6%にすぎない本県に、日米安全保障体制を担う米軍専用施設の73.8%が集中し、依然として過重な基地負担が県民生活や本県の振興開発にさまざまな影響を与え続けています。米軍再編に基づく普天間飛行場の辺野古への移設をはじめ、嘉手納飛行場より南の米軍基地の整理縮小がなされても、専用施設面積の全国に占める割合はわずか0.7%しか縮小されず、返還時期も含め、基地負担の軽減とはほど遠いものです。

沖縄の米軍基地問題は、我が国の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべき重要な課題です。

特に、普天間飛行場の辺野古移設については、昨年の選挙で反対の民意が示されており、辺野古に新基地を建設することは困難です。

そもそも、私たち県民の思いとは全く別に、強制接収された世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化は許されず、「危険性除去のため辺野古に移設する」「嫌なら沖縄が代替案を出しなさい」との考えは、到底県民には許容できるものではありません。

国民の自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されずして、平和の礎(いしずえ)を築くことはできないのです。

政府においては、固定観念に縛られず、普天間飛行場を辺野古へ移設する作業の中止を決断し、沖縄の基地負担を軽減する政策を再度見直されることを強く求めます。


Photo by 柴田大輔

翁長知事は不満を表明するだけでなく、具体的な行動にも移しています。米国の政府関係者に直接働きかける目的で今年4月27日にワシントン市内に県事務所を設置。5月下旬には自らも訪米し、辺野古移設断念と普天間飛行場の返還を求めて複数の米政府関係者と会談しています。ただ、米政府関係者の反応は芳しくなく、「既に日米政府間で決まっていることで、辺野古への移設は揺るがない」と、にべもない回答ばかりでした

6月に入ってからは、翁長知事を支持する沖縄県議会与党会派が埋め立て工事に伴う県外からの土砂搬入を制限する条例案を議会に提出しました。表向きは外来生物が土砂に付着して持ち込まれることで生態系が崩れることを防ぐ環境対策条例ですが、実質的には県外土砂の搬入を抑え、新基地建設を遅らせるための条例と報道されています。

しかし、これまでの沖縄経済は海を埋め立てることで発展してきた一面があります。現在でも那覇空港の第2滑走路那覇軍港の移設泡瀬地区の埋め立てなど、さまざまな埋め立て工事が予定されています。辺野古の基地建設を遅らせるためにこの条例を制定した場合、それら辺野古以外の大型埋め立て工事への悪影響が予想され、「沖縄の経済発展を阻害する」と県の経済界から反発の声が出ることが予想されています


Photo by 初沢亜利

いったん県と国、そして米国が合意した工事を覆すのは非常に困難です。しかし、翁長知事はとり得る選択肢が少ないなかでさまざまな施策を矢継ぎ早に打ち出しています。一方、現政権はいまだこの問題について一切態度を軟化させていません。両者の対立は日々深まるばかりです。

果たして泥沼化した辺野古移設問題で県と国の双方が納得する落としどころはあるのでしょうか。本特集ではこの問題について具体的な今後の見通しや解決案、それを踏まえたうえで今後沖縄が目指すべき道はどこにあるのか、さまざまな論者の方に執筆していただきました。

翁長知事と現政権との対立構図が浮き彫りになったことで、本土のメディアでも連日この問題が大きく取り上げられるようになりました。そんないまだからこそ、沖縄が持つ「複雑さ」を多くの人が知り、辺野古移設問題を一歩前へ進めるための具体的なプランが語られるべきではないかと考えます。

本特集が辺野古問題を考えるうえで押さえておきたい知識や視点をより多くの人に共有できるものになれば幸いです。


Photo by 柴田大輔

著者プロフィール

津田大介
つだ・だいすけ

ポリタス編集長

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

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