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「『沖縄県知事選2018』から考える」を開始します

  • 津田大介 (ポリタス編集長)
  • 2018年9月25日

2014年の沖縄県知事選2015年の辺野古移設問題に続く沖縄特集第3弾「『沖縄県知事選2018』から考える」を開始します。

4年前に当選の名乗りを上げた翁長雄志知事は、任期を全うすることなく8月8日に永眠されました。翁長知事の死去を受け、沖縄県知事選の投開票が今月9月30日に行われます。

今回の知事選の有力候補は、自民、公明、維新、希望が推薦する佐喜真淳前宜野湾市長と、共産党や社民党、労組など革新勢力を中心に構成され、翁長知事の支持母体だった「オール沖縄」の支援を受ける玉城デニー衆院議員(自由党幹事長)の2人。事実上彼らの一騎打ちになると見られています。

玉城候補は出馬にあたり「翁長知事の遺志を受け継ぎ、辺野古に新たな基地は造らせない。普天間飛行場の閉鎖・返還を一日も早く実現するよう政府に強く要求する」と述べており、選挙戦はいきおい翁長雄志知事の弔い合戦の様相を帯びています。

翁長知事の弔い合戦という性質が色濃くなっていきている上、基地問題に焦点が当たるのは当然の成り行きです。しかし、現実問題として佐喜真候補が勝とうが、玉城候補が勝とうが、普天間基地返還や辺野古移設(新基地建設)問題がすんなり解決する見込みは立っておらず、この複雑さが、本土でこの問題の理解が進まない原因の一つになっています。

戸室健作氏による2016年の「都道府県別の貧困率、ワーキングプア率、子どもの貧困率、捕捉率の検討」という調査によれば、沖縄県の貧困率は34.8%であり、全国平均18.3%の約2倍の数値となりました。とりわけ子どもの貧困は深刻で、沖縄県が2016年に調査を行ったところ、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%に達し、こちらも同時期の全国平均16.3%(2015年、内閣府)の2倍近い数値です。

このような状況を受け、過去の沖縄県知事選では毎回「基地問題」と「経済振興」の間で大きく振り子が振れてきました。

基地問題も、経済振興も、沖縄の未来を考える上で非常に重要な問題です。しかし、これら以外の論点にも目を向け、本土の人間が沖縄の問題を「自分事」として捉えるような論考を集めました。沖縄について本土の広く一般の人が考えるようになることで、日本全体の「ひた隠しにされている現実」に目を向ける――それがポリタスの役割であると考えています。

辺野古の問題は単に名護市だけの問題ではなく、沖縄県全体の問題でもあり、ひいては日本全体の問題でもあります。

この特集をきっかけとして、いま沖縄で起きている現実に目を向ける人が少しでも増えれば、これ以上の幸いはありません。

著者プロフィール

津田大介
つだ・だいすけ

ポリタス編集長

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

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