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特集「誰がための復興」を開始します

  • 津田大介 (ポリタス編集長)
  • 2017年3月11日

東日本大震災から6年を迎えました。

昨年の「震災から5年」という節目を越え、今年は東日本大震災に関連する報道が目に見えて減っています。

しかしこの1年で、宮城県女川町の「地元市場ハマテラス」、宮城県南三陸町志津川地区の「南三陸さんさん商店街」など、新たな都市計画に基づいた「仮設」ではない商業交流施設が開業しました。


Photo by 岩本室佳

そして南三陸町歌津地区では、4月23日に「南三陸ハマーレ歌津」がオープンします。

一方、東北地方整備局が岩手県陸前高田市、宮城県石巻市と共同で整備する大規模な復興祈念公園計画がどちらも3月に着工しました。陸前高田は2020年度末石巻は2021年春の完成を予定しています。

ここまで、歩みは遅いながらも着々と復興の進む宮城、岩手。その一方で、福島第一原発の事故によって避難を余儀なくされた福島県双葉郡の市町村は、いまだ復興のスタートラインにすら立てていませんでした。

政府は2年前に、避難区域の避難指示を2017年3月までに解除する目標を定め、重点的に除染を進めてきました。住民のなかには早期帰還に反対する意見もありましたが、多くの自治体がこの政府の方針を受け入れ、今年3月31日に浪江町川俣町飯舘村が、4月1日に富岡町の避難指示が解除されることが決まりました。

これにより、福島第一原発を立地した大熊町、双葉町以外の市町村(帰還困難区域を除く)は、すべて帰還が決まったことになります。


Photo by 津田大介

しかし帰還が決まっても、生活インフラの復旧は十分でなく、他の地域と比べて相対的に放射線量が高いため、帰還は思うように進んでいません。今回帰還が決まった4町村に先んじて2015年9月に避難指示が解除された楢葉町では、解除から1年半経過しましたが、帰還者はまだ1割程度に留まっています。

厳しい状況であることは十分知りながら、それでも彼らは「復興のスタートライン」に立つことを選びました。当事者が選択した以上、復興を応援する側の人間は、彼らの「いま」を見守り、時には訪問することが最良の選択となるはずです。


Photo by 津田大介

今回の特集では、避難指示解除目前の福島4町村のレポートを中心に、東日本大震災の記憶を思い出すための記事を集めました。記事を読むことで、少しでも多くの方が東北の現在に目を向けるきっかけとなれば幸いです。

特集『誰がための復興』を始めます。

著者プロフィール

津田大介
つだ・だいすけ

ポリタス編集長

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。大阪経済大学情報社会学部客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門分野に執筆活動を行う。ソーシャルメディアを利用した新しいジャーナリズムをさまざまな形で実践。 世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書ラクレ)、『「ポスト真実」の時代』(祥伝社)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

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